「トルコは教団の手に・・」暴露本著者の元警察署長ハナフィー・アヴジュ逮捕
2010年09月28日付 Radikal 紙
ハナフィー・アヴジュ元エスキシェヒル警察署長は、28日朝アンカラで拘束され、イスタンブルに移送された。アヴジュ元署長は検察への供述を拒否し、身柄を移された裁判所で逮捕された。アヴジュ元署長は9月25日に行った会見で、「私が知る事柄や真実など、全てを9月30日の記者会見で説明する」と述べていた。
アヴジュ元署長は著書『金角湾に巣食うシモンたち』の中で暴露を行った後、エスキシェヒル警察署長の職を辞して自身の望みで一線を退いたが、イスタンブルで行われているテロ組織「革命主義者グループ」の裁判の過程でアヴジュ元署長の逮捕が決定された。ハナフィー・アヴジュ元署長は、イスタンブル対テロ闘争担当局のメンバーによってアンカラで身柄を拘束された。一方でハナフィー・アヴジュ元署長のエスキシェヒルにある自宅も捜索を受けた。ベシクタシュにあるイスタンブル裁判所へは、裁判官や検事らが出入りするドアから私服警官によって身柄を移された。そこでアヴジュ元署長は検察のフロアーへ連れて行かれた。その際カーディル・アルトゥンウシュク共和国検事に供述することを拒否した。このためアヴジュ元署長は逮捕要請を受けて裁判所に移された。裁判所は「組織支援及び犯人隠匿」罪でアヴジュ元署長を逮捕する決定を下した。アヴジュ元署長は決定が下された後に会見を行い、「我々が正しいことが納得できた(訳註:フェトフッラー・ギュレン教団が司法に影響力を及ぼしているという自分の主張が正しいということ。その結果それを非難する自分が逮捕されたとしている)。逮捕命令が出た」と述べた。アヴジュ元署長はそれ以前に、9月30日に記者会見を開き、自らの主張に関する声明を発表するつもりだと述べていた。アヴジュ元署長はイスタンブル共和国検事から先週、証言のため出頭命令を受けていたが、休暇中との理由で検察に出頭しなかった。
■本を執筆した後に、取調べが始まった
エスキシェヒル警察署長を勤めていたアヴジュ氏は先月(8月)、『金角湾に巣くうシモンたち―昨日は国家、今日は教団』という著作を発表し、議論を巻き起こしていた。この本で、フェトフッラー・ギュレン教団がとりわけ警察や司法組織内でオルグ活動を行い、メンバーとなった公務員が一人ずつ「イマーム(指導者)」によってコントロールされていると指摘した。さらに国家組織内にいる教団の手下が、犯罪組織的特徴を持っていると主張していた。アヴジュ元署長は著書の中で、違法な盗聴によって敵対者に圧力がかけられており、一方で自身もNという友人との会話を盗聴されたと訴えた。こうした主張を受け、アヴジュ元署長には8つのそれぞれ異なる行政上の取調べが行われた。さらにアヴジュ元署長はエスキシェヒル警察署長の職を辞し、一線を退いた。
■電話を盗聴
一方で、9月21日には「革命主義者グループ」への強制捜査が行われた。これに伴って社会主義者民主党(SDP)の幹部を含む17人が拘束され、このうち13人が逮捕された。逮捕者の1人ネジデト・クルチ氏は、SDPメルスィン支部メンバーの一人であった。その後アヴジュ元署長とクルチ氏との関係が問題となり、著書の中で名前が出てきたNであることがわかった。アヴジュ元署長もクルチ氏が友人であると述べた。組織を追跡捜査して盗聴を行っていた警察は、クルチ氏名義の電話をケズバン・Kという女性が使用し、この女性がこの電話を使って通話した唯一の人物がアヴジュ元署長だということを特定したという。さらにアヴジュ元署長とケズバン・Kは恋愛関係にあったとされている。
革命主義者グループの捜査を進めているカーディル・アルトゥンウシュク検事は、強制捜査に伴って身柄を拘束されたクルチ氏に、アヴジュ元署長との関係を尋ねた。供述で「ハナフィー・アヴジュとは知り合いだ。彼は私を拷問をした(訳注:かつてクルチ氏はTHKP-Cメンバーの容疑で拘束され、その取り調べの中でアヴジュ氏に拷問されたと主張)」と述べたとされているクルチ氏は、(拷問を受けた後逮捕され投獄されていたが)出所後アヴジュ元所長が謝罪を申しで、クルチ氏はその謝罪を受け入れたと述べたことがわかった。「ハナフィー・アヴジュ元署長がクルチ氏のSIMカード(携帯電話の番号を特定するためのIDカード)を使用している」といわれている点に関し、検事による取調べの際にクルチ氏に問いただされた。クルチ氏は、「この電話番号はあなたのものか」との問いに「わたしの電話番号を他人のものであるかのようにして、彼らは盗聴したのだ。この盗聴は違法なものだ」と答えたとされている。クルチ氏は証言で、警察は電話盗聴で情報を得ており、このことをアヴジュ元署長に伝えたと語ったことが明らかとなった。アヴジュ元署長もクルチ氏に対し司法当局に訴えるよう求めた。
■アヴジュ元署長の妻「誰も夫を黙らせることはできない」
アルトゥンウシュク検事は、この証言やこれまでの情報を受けて、アヴジュ元署長に先週日曜日(9月19日)に証言を行うよう呼び出した。しかしアヴジュ元署長は呼びだしに応えず、月曜日(27日)に軍検察局に出頭し、軍の内部に教団がはびこっていることについて情報を提供した。アヴジュ元署長は、9月30日に「すべてを明らかにする」と述べていた記者会見の準備をしていたが、アンカラにある法務省・研究立案調整局(APK)で拘束された。エスキシェヒルにある官舎やかつてのオフィスも捜索を受けた。妻のシェナイ・アヴジュさんは「私の夫は再び本を執筆する予定で、誰も彼を黙らせることはできないはずだし、現に誰も黙らせることはできない。家族として何が何でも夫を支えます」と語った。アヴジュ署長によると、無理やり車に乗せられてエセンボア空港に移送されたという。彼に対する「逮捕状」はなかったとされている。アヴジュ元署長は飛行機でイスタンブルに移動し、ベシクタシュにあるイスタンブル裁判所のアルトゥンウシュク検事の元に移送された。
■教団に屈するつもりはない
一方でハナフィー・アヴジュ元署長が拘束された後、以前に書きとめてあった声明文が発表された。アヴジュ元署長は書面で、カーディル・アルトゥンウシュク検事について、および彼がやった事柄について、法務省、裁判官・検察官高等委員会(HSYK)やイスタンブル検察に対して告発したと明かしており、またアヴジュ元署長自身に関する(今回の逮捕につながる)証拠はなく、自分が書いた本のためにそして本当の容疑者を隠蔽するために、テロ組織「革命主義者グループ」の裁判と関わりがあるように仕向けられたのだと書き記していた。アヴジュ元署長は、証言するようにとの最初の通知を日曜日に受け取ったが、イズミルに滞在していたために「月曜日に戻る」と述べ、一昨日(26日)軍検察局で証言したと説明した。その上で次のように続けた。「教団が、ウェブサイト、メディア、警察や検事、つまりかれらの影響力のおよぶ組織を使って、私に手を伸ばしたということはわかっている。それを知りながら彼らに屈するつもりはない。私はトルコの法律に従うが、教団が望むままのやり方に屈するつもりはない。このような手続きを合法的な手続きであるとか司法的手続きであるとする嘘にも騙されない。教団の計画やプログラムにそって行動するいかなる人や権威の前にも屈しない。この国家の法律に従って行動しているとは信じがたい司法機関の、どんな問いかけにも応じるつもりはない。誰にも私の名誉を汚させない」
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( 翻訳者:三上真人 )
( 記事ID:20268 )