日曜(3日)午後に、シリアのラタキアからアンカラに向け出発したトルコ航空のボーイング機(サフランボル号)は満席だった。トルコ政府の約半分の閣僚である12人の大臣が同機に搭乗していた。第一印象はといえば、「満面の笑顔で、上機嫌」である。
こうした上機嫌の理由について、外務大臣アフメト・ダウトオールは機内で次のように話した。
「私はシリアにはキルギスから向かい、昨夜(3日)22時30分にラタキアで飛行機を降りました。市街への入り口は大変混雑していて、その暗闇の中で人々は起きて待っていてくれていました。『トルコ、トルコ』という歓迎の声とともに私は町に到着し、私たちは市民たちと抱き合って到着を喜びました。」
市民のこの好意的な態度は、明らかにラタキアで開催された、シリア・トルコ双方12人ずつの閣僚が参加した共同閣僚会議のおかげである。ダウトオール外務大臣は、そこでの様子を興奮気味に語った。
「同じ国の大臣でさえ、時には互い、『君はそれをそういう風にはしなかった、これをこういう風にはしなかった』と言うことがある。(しかしここでは)全大臣が互いを褒めあいながら、この1年間どんなことをしたのかを説明した。この1年間で積み上げてきたものは、多分10年分以上に匹敵する」
-実際にはどんなことを行ったのですか?
「あらゆる分野での協力だ」、とダウトオール外務大臣は語った。
アレッポ・ガジアンテプ間の特急列車運行プロジェクトに始まり、アスィ川(オロンテス川)に作る友好ダムまで。
シリア人学生のトルコ国内の大学への受け入れに始まり、シリア人警察官のトルコでの訓練まで。
そして、エネルギー協定に始まり、共同税関の設置にいたるまで、思いつく限りのあらゆる分野で共同の取り組みが、議論されている。
また、こうした協力関係からは、「トキ(鳥)」さえもその恩恵にあずかるという状況だ。
「シリアではトキが絶滅した。そのためシリア側の要望で、トルコ側から環境大臣が送った。シリアに対し、飼育し繁殖できるように6羽のトキを贈った」。外務大臣がこのように説明するや、私は笑わざるをえなかった。
いったい、トルコとシリアの関係はどこに向かっているのだろうか。
■中東連合へ
さて、この協力関係はどこへ向かっているのか?
トルコの目標は、まずシリア、ヨルダン、イラク、レバノンとの間に共通の「経済領域」を設立することである。これに関する最初の首脳会議が1月中にトルコで開催される予定である。
「5カ国経済区域を形成する」と述べて、ダウトオール外務大臣はこれを一言で次のように表現した。
「メソポタミアと東地中海全域がひとつになる。古来の広大な肥沃な土地がひとつになる」
だが、「経済領域」と言って始まったプロセスの向かう先は、明らかだ。
お分かりのように、ヨーロッパ連合(EU)のドアが開くのを待つトルコは、将来的にヨーロッパに対して「一つの国」としてではなく、「一つの連合体のメンバー」として向き合うことができるのだ。
この展望は、ダウトオール外務大臣が言及した特急列車運行プロジェクトからも見てとれる。
「交通分野で積極的な取り組みを考えている。鉄道路線をヒジャーズからイスタンブルへ、そしてイスタンブルからロンドンまで伸ばす計画がある」
言うは易し、行うは難し。
ヒジャーズからロンドンまでとは。
■ダウトオール外務大臣が答えられなかった質問
ただし、この「富と安定性を共有する中東」というヴィジョンには、一つの「落とし穴」がある。イスラエルである。
イスラエルとシリアの2国は、現在でも公式には「戦争状態」にある。また、他のアラブ諸国がイスラエルをよく思っていないのも事実である。トルコとイスラエルの関係も、マーヴィ・マルマラ号拿捕事件の後、ご存じのとおりである。
インタビューの際に、計2回ダウトオール外務大臣に尋ねた質問がある。
「シリア側は、イスラエルとの交渉においてトルコが再び仲介役を買ってくれるよう望んでいる。どうするか?仲介することは可能か?」
2回の私の質問に対して、大臣は答えなかった。イスラエルの名前も出さないようにしていた。
唯一彼が答えたのは次のとおりである。
「いまにこの地域では2つのヴィジョンが衝突するだろう。1つめは、トルコがシリアとの間で始めた、ヨルダン、レバノンなども参加する経済的富の共有と安定化というヴィジョンである。2つめは、緊張、衝突、テロといった要因によって進行している事柄である。私たちが第一のヴィジョンを実現すればするほど、第二のヴィジョンの領域はそれだけ狭くなる」
-「第二のヴィジョンを演じているのは」誰なのですか?
ダウトオール外務大臣は、「この2つめのヴィジョンの中には、あなたたちが推測する一群の人たちがいるでしょう」と答えるにとどまった。
大臣は直接言及しなかったが、シリア訪問の間、記者会見でシリア人記者によるイスラエル関連の質問に答えず、機内でのインタビューでも私のイスラエルに関する質問には答えなかったことには意味がある。
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( 翻訳者:萩原絵理香 )
( 記事ID:20314 )