トルコでは、全国のハウス栽培及び露地栽培によるトマト生産を巻き込んだトマト蛾(Tuta Absoluta)被害、及びヨーロッパでのトマトの需要拡大により、トマト不足が生じている。市場でのトマト不足と価格高騰により、特にアナトリア地方ではトマトが闇市場に流出する状況となっている。
トルコ青果卸売協会(TÜMESKOM)会長ブルハン・エル氏は、イスタンブルは青果の集積卸売市場になったと説明し、「アナトリア地方の各県で栽培されるすべてのトマトはイスタンブルへ出荷されています。アナトリア地方のトマト生産が優良な県においてさえ、生産したトマトをイスタンブルに出荷しているために、県自体のトマト需要を満たすことが難しくなっています」と話した。
アイドゥン県では県内需要にさえもトマトが不足していると話すエル氏は、「私の農作業労働者たち、妻や親友たちのトマトさえ、アイドゥン県及び近郊の県では入手出来ずに、イスタンブルから運ばせました。アイドゥン県のようなトマトの産地であるエーゲ海及び地中海地方で現在トマトが不足しています。現在生産されたトマトは闇市場へと流れている状況です」と述べた。
■トルコは農業国だが、農業政策は皆無
同時に世界青果市場連盟の委員でもあるブルハン・エル氏は、トルコには農業政策が皆無だと言及した上で、「トルコは農業国でありながら、農業政策がとられていません。農業においては、計画的生産、市場戦略、及び然るべき奨励制度によって農家を支援していく必要があります。とりわけ一部の農産物に関しては、農家は一体何をどの時期に植えるべきかが分からないのです」と話した。
■アイスランドの火山噴火も影響
2010年初頭にアイスランドで起きた火山噴火によりヨーロッパ農業が甚大な被害を受けたと話すブルハン・エル氏は、「農業国であるヨーロッパの国々では、農産物への被害が大きいと見るや、地理的に最も近いトルコへ目を向けました。特に、ヨーロッパからトルコへの農産物の需要が大きな割合で増加するであろうことは、6月初めには既に明らかでした。参加した国際博覧会では、各国の青果市場からそうした要請を受けました。この要請がくると、あとは自由市場の法則に則り、品質の良いトマトすべてがヨーロッパに送られてしまいました。輸出を停止せよとは言いませんが、輸出されることによって現在の国内市場のトマト需要に応じることが出来ていません」と述べた。
■価格は半落しうる
ハウス栽培で1カ月遅い種まきとなった状況も(トマト不足に)影響したと説明するエル氏は、「ハウス栽培トマトが11月初頭には市場に出荷される予定です。しかし、ハウス栽培トマトがヨーロッパに出荷されるなら、価格で大きな変化はないでしょう。もしハウス栽培トマトがトルコ国内市場に出荷されるならば、価格も半値に下がるのではと期待しています」と話した。
■「トマトの黄金時代は闇市場にて」
アンタリヤ市の卸市場にてトマトの価格は(1キロ当たり)3.5~4TL(トルコリラ)の間で、スーパーや市場では6TLまで高騰した。アンタリヤでは、ハウス栽培での種まきが1カ月遅れたことにより、近々市場への出荷予定のハウス栽培トマトは、11月10日まで待つことになる。トルコは1カ月間、トマト不足に見舞われるだろう。(トマト蛾の)被害を受けたことから、特に露地栽培もので最も深刻な年間収穫が減少したと強調するアンタリヤ商工会議所青果委員会会長のムスタファ・キュチュクオール氏は、「記録的な収穫量の減少により、需要への対応が不可能となったため、トマト価格は高騰しました。あと1カ月は残念ながら望むような高品質のトマトを見つけることは出来ないでしょう。さらに価格高騰は続くでしょう。トマトは闇市場でまさに黄金時代を迎えています」と話した。
農業技術者のセルチュク・ウスタ氏は、種まきが1カ月遅れたのに加え、多数の生産者が(トマト蛾の)被害を受けたことで、ナス、ピーマンのような他の農産物を生産することを選択したと説明した。トマト蛾被害以前の時期には8トンだったトマト生産量は、現在なんとか2トン生産している状況だというトマト輸出業者のレジェプ・オズクル氏は、「一箱のトマトからサラダに使用できる2個のトマトさえ見つけられませんでした」と話した。
■最近の価格高騰チャンピオンはトマト
9月に価格高騰チャンピオンの称号は、生産者価格においても、消費者価格においてもトマトに与えられることになった。消費者物価指数における物品とサービスの項目で9月の最高値は57.16%増のトマトで、生産者物価指数においても価格が最も高騰した生産物は36.87%増のトマトとなった。
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る
( 翻訳者:石川志穂 )
( 記事ID:20318 )