コラム:チョムスキーとの公開討論に際し
2010年10月13日付 al-Sabah al-Jadid 紙
■ 二人のアラブの若者へ
2010年10月13日付『サバーフ・ジャディード』紙(イラク)HP社説面
【フセイン・サルマック・ハサン】
かの有名なアメリカの思想家、ノーム・チョムスキーを知らない者はいないだろう。端的に言うと、彼は「生成文法」という理論の発案者であり言語の世界ではよく知られている。アラブの読者が最初に彼を知ったのは彼のこの分野における諸理論からであろうと思われる。しかしチョムスキーは哲学者でもあり、ユダヤ系アメリカ人の政治思想家でもある。アメリカの犬がいかなるアラブ人よりも良いとされるこの不公平な世の中に彼がいるのは、驚くべきことである。サウジアラビア国王がガザ虐殺映画の上映をブッシュ大統領に主張すると、大統領は「それより楽しく食事でもしましょう」などと言うので、それならワシントンを去ると国王が言ってようやく意が通る。それでもなお、シオニスト政体への極めて強力な支持というむなしい結果に終わるような、この不公平な世の中で。
重要なのは、このユダヤ系アメリカ人は反米・反イスラエルの立場をとっているという点である。私は彼と彼の思想、彼の正義を崇拝している。ところが、アルジャジーラによる先週金曜放映[再放送]のチョムスキー氏との対話で、2人のパレスチナ人がなしたことをあなたがたは信じられるだろうか。チョムスキーはパレスチナの土地における二国家解決の重要性について説明していたのだが、一人目の若者は彼にこう言った。
「あなたは現実と真実の違いが分かっていない。現実ばかりを追い、真実を見落としている。ドイツにはトルコ人、フランスにはアルジェリア人がいるが、彼らが望み、力を持てば彼らに国家を与えるのか。ユダヤ人を放逐したのはあなた方の罪であるのに、私たちがその対価を払っているのだ。」
また、二人目の若者は彼にこう言った。
「60年間の抵抗は一分間の二国家解決よりも貴いものだ。なぜなら二国家解決は歴史を捏造することであり、殺人という罪を合法化することになるからである。」
この偉大な思想家に何が起こったか、想像できるだろうか。
チョムスキー氏は困惑しながらも続けて多くの質問に答えたが、彼の全ての返答は、二人の若者の発言に動揺させられていた。若者たちは極めて落ち着き、文明的なやり方で深遠な表現を用いて自分たちの考えを投げかけたのだが。注目すべきは、質問に答えながらも彼の視線がその二人に向けられていたということである。彼ら二人を通じ、アラブ人たちは、チャンスを逃すなと助言されたのだ。神よ、我々には畏れ多いほどの可能性があるではないか。アラブの若者に讃えあれ。すばらしいイラクの若者に讃えあれ。
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( 翻訳者:秋山俊介 )
( 記事ID:20456 )