欠席・・―大統領の招待へ、軍人らの対応
2010年10月30日付 Milliyet 紙


アブドゥッラー・ギュル大統領が10月29日の共和国記念日に行ったレセプションに軍関係者は参加しなかった。代わりのレセプションを中央軍人会館(Ordu Evi)で行うという伝統を続けたトルコ国軍(TSK)指揮官階級に対し、ギュル大統領とエルドアン首相は反発を示した。

ギュル大統領は自身が主催したレセプションについて「トルコのあらゆる真実はここにある。これがトルコの今の顔である」と述べた。レセプションの招待状に19時30分と明記されていた開始時刻は20分遅れ、「軍関係者を待っていたため開始を遅らせた」とみられている。このレセプションには共和人民党(CHP)のケマル・クルチダルオール党首も参加せず、レジェプ・タイイプ・エルドアン首相の妻エミネ・エルドアン夫人が来なかったことも注目された。

■レセプションにスカーフ論争の影

アブドゥッラー・ギュル大統領は大統領に選出されて以来、10月29日の共和国記念日には、政府要人に対し、日中には夫人を伴わないレセプションを、晩には夫人を伴うレセプションを行ってきた。しかし、今年は、夫人同伴のレセプションを一度だけ行うと決定していた。夫妻が招待したチャンカヤの大統領公邸でのレセプションは、スカーフ論争が影を落とすなかで実現した。

■最高司令官の招待に、司令官は来ず

軍関係者がレセプションに参加するか否かは、昨夜のレセプション開会まではっきりしなかった。ウシュク・コシャネル参謀総長と軍司令官たち、軍警察総司令官、アンカラで働く将校たちは、昨夜行われたレセプションに参加しなかった。司令官たちは大統領公邸でのレセプションのかわりに、コシャネル参謀総長が中央軍人会館で行ったレセプションに参加することを選んだ。司令官たちのこの態度は、憲法により「軍の最高司令官」の地位を持つギュル大統領の招待に対し、「スカーフ着用に関する遺憾の意を示したもの」と見られている。

■クルチダルオールCHP党首も不参加

ケマル・クルチダルオールCHP党首と同党幹部はレセプションに参加せず、CHPからは民主左派党(DSP)出身のアフメト・タン議員とハルン・オズチュルク議員のみが参加した。デヴレト・バフチェリ民族主義者行動党(MHP)党首とマスム・チュルケルDSP党首は、他の党首脳らとともにレセプションに参加した。セラハッティン・デミルタシュ平和民主党(BDP)党首と同党のスッル・サクク議員、ウフク・ウラス議員、ハシプ・カプラン議員は党を代表してレセプションに参加した。

■司法も不参加

ハシム・クルチ憲法裁判所長官は同レセプションに夫人を伴わずに参加したが、ハサン・ゲルチェケル最高裁判所長官とムスタファ・ビルデン行政裁判所長官は参加しなかった。

■首相から反発:司令官たちは参加すべきだった

エルドアン首相は新聞記者たちと談話し、記者らの「ご存知のように2つのレセプションが行われています。軍は別のレセプションを行っており、軍人たちはここにいません。どうお考えですか?」という問いに対し、「今夜のレセプションは、ここで行われているものが全てである。他のレセプションを開くことは、正しいとは思えない。国民の長は、ここに招待したのだ。国民もここに招かれている。トルコ国軍の代表者たちも従来はここに来ていた。(司令官たちは)来るべきであった。ご覧の通り素晴らしい雰囲気で、皆このレセプションを楽しみにしていた。だれもこのレセプションを不快に思うべきではない」と話した。

■政治には、原則がある

エルドアン首相は、「クルチダルオールCHP党首も来ませんでした。彼もイスタンブルで別のレセプションに参加していますが?」との問いに、「彼は新たに党首となったばかりだ。今後、政治にも慣れていくだろう。これらは見苦しいことだ。(共和人民党は)国会で大統領が入場した際にも起立しなかった。今回は起立したが、前党首とその周辺の仲間たちは起立しなかった。政治には、守るべき原則がある。それがなければ風の前の木の葉のように吹き飛ばされてしまうだろう」と述べた。

■夫人と参加

このレセプションに、夫人がスカーフを着用していないザフェル・チャーラヤン、メフメト・アイドゥン両国務大臣、メフメト・シムシェキ財務大臣、ヴェジディ・ギョニュル国防大臣らが夫人とともに参加した。夫人が最近出産したアリ・ババジャン副首相、ハヤティ・ヤズジュ国務大臣、ヴェイセル・エルオール環境森林大臣は、スカーフを着用した夫人とともにレセプションに参加した。フェリドゥン・スィニルリオール外務次官とハーカン・フィダン国家諜報機構(MİT)次官は夫人を伴わず参加した。ドゥルムシュ・ユルマズ中央銀行頭取はスカーフを着用した夫人と参加した。リファト・ヒサルジュクルオール・トルコ商工会議所連合(TOBB) 会長も同レセプションに参加した。

■ギュル大統領:すべての現実はここに

ギュル大統領は、新聞記者の、「2つのレセプションが行われています。軍人たちはもう1つのレセプションを行い、ここには来ませんでしたが」という問いに、「トルコのあらゆる真実はここにある。あらゆる違い、色合い、現実はここにある。トルコはここにある。ここがトルコの今の顔である」と答えた。ギュル大統領は、同様の問いが繰り返されると、「言いたいことは言った」と遮った。ギュル大統領は大統領公邸の修復について問われると、「ここはトルコのショーウインドウである。外国人の客人はここにやってくる」と答えた。

■我々は我慢強く、慣れている

ハイリュンニサ・ギュル大統領夫人は、「難しく緊張を強いられる過程を経てこのレセプションにたどり着きました。どうお考えですか?」との問いに、「その通りですが私たちは大人で我慢強く、全てに慣れています」と答えた。

■メモ

*ギュル大統領とハイリュンニサ・ギュル夫人は、夏に改装された白の色調でまとめられたサロンで客を迎えた。

*レセプションには1000人を超える招待客が参加し、ギュル大統領と夫人は1時間10分にわたって客と握手をした。

*公正発展党(AKP)所属の議員と一部の官僚に多く見られことだが、スカーフを着用した妻とともに参加した人が、レセプションで(異性と)握手をしなったシーンが見られた。レジェプ・アクダー保健大臣とAKPディヤルバクル選出のイフサン・アルスラン議員は、ハイリュンニサ・ギュル夫人と握手をしなかった。イフサン・アルスラン議員の妻と一部のスカーフを着用した女性たちもアブドゥッラー・ギュル大統領と握手をしないでサロンに向かったことが注意を引いた。

*レセプションには芸能界からメティン・シェンチュルクやムアッゼズ・エルソイの他、エメル・サユン、デメト・アクバー、ケナン・ウシュク、スィベル・トゥルナギョル、メルジャン・デデ、ネシェト・エルタシュ、アジュン・ウルジャル、ザラ、ギョクセル、ジェザが参加した。国民的アスリートのエレヴァン・アベイレゲッセ選手と国際大会で賞をとった幾人かのスポーツ選手も参加した。

*MHP、BDP、DSP、大統一党(BBP)からは党首級の人々が参加した。

*イスラエル代表参加―ガビ・レヴィ在アンカラ・イスラエル大使はマーヴィ・マルマラ号事件(ガザ支援船にイスラエル軍が攻撃した事件)以降トルコ・イスラエル関係において起こった緊張を理由として、AKPの断食明けの食事に招待されなかった。しかし、今回、レヴィ大使はレセプションに招待され、これに参加した。

*新装となったチャンカヤ―チャンカヤ大統領公邸で今年行われた10月29日のレセプションは、招待客にとって初めてのものとなった。レセプションに参加した招待客たちは20年ぶりに改修が完了し、セルジューク朝宮殿風の新たなサロンでもてなされた。公邸内のサロンは、セルジューク朝の建築を模倣したモチーフで装飾されている。薄茶色とクリーム色を基調としたサロンは、宮殿風の雰囲気だった。

*このほか、天井には油絵で描かれた花、ろうそくを模したシャンデリア、第3サロンへの出入口となる階段の先に置かれた画家レムズィ・タシュクン作のアタテュルクの油絵肖像画などが目をひいた。

*公邸のサロンは、2007年に施行された耐震法令にのっとって補強が行われた。

*AKPのキュルシャド・チュズメン議員が握手の際、足をすべらせた。ギュル大統領があわてて手を差し伸べたが、チュズメン議員はあと少しで倒れるところだった。

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:永山明子 )
( 記事ID:20547 )