裁判長が「クルド語と思われる、不明な言語」と言うと、被告人は反発を露わにした。
ディヤルバクルで行われている、クルド人労働者党(PKK)の秘密都市組織、クルディスタン社会連合トルコ議会(KCK/TM)の本裁判において、クルド語をめぐる混乱が生じた。解党された民主市民党(DTP)元副党首のバイラム・アルトゥン被告がクルド語で被告人弁論を行うと、ユルマズ裁判長は、「クルド語と思われる不明な言語を使い、弁論を続けているように見受けられる」と述べ、マイクロフォンを取り上げるように命じた。これに対し拘束中のラマザン・モルコチ被告はまずクルド語で、その後にトルコ語で「不明な言語とは言えない。一つの国民の言語に対する侮辱発言である」と叫んだ。そのためユルマズ裁判長は被告人の退廷を命じた。
KCK/TM本裁判において、平和民主党(BDP)党員の市長をはじめ、拘束中の104名を含む153名の被告人に対する裁判審理が、ディヤルバクル裁判所内に設けられた特別法廷で続けられた。連日被告人は厳重な警備体制下で裁判所まで移送された。裁判を傍聴する弁護士、記者、被告人の関係者はボディチェックの後、裁判所内に入ることを許された。警察は今日も厳重な警備を続けた。第六重罪裁判所で行われた第十一回審理で、拘束中の102名の被告人が法廷に立った。被告人たちは出廷確認の際にもクルド語で「はい、ここです」と返答をした。平和民主党(BDP)のセラヘッティン・ハリス議員、ネゼィル・カラバシュ議員と被告人の親族もこの裁判を傍聴した。起訴状の内容に関して被告に尋問したメンデレス・ユルマズ裁判長は、バイラム・アルトゥン被告がクルド語で無理やり被告人弁論を行おうとしたため、法廷におけるクルド語使用に関する過去の決定を再度読み上げることを余儀なくされた。ユルマズ裁判長は「過去の決定を再度述べます。欧州人権裁判所(AİHM)による 6-E条項に従い、被告人が裁判で使用される言語を理解できない場合、或いは話すことができない場合は通訳をつけることが可能です。しかし、刑事訴訟法(CMK )第202条第1項に照らし合わせても、被告人は今日まで被告人弁論をトルコ語で行い、また学歴・社会的ステータスもトルコ語能力があることを示しており、その規定は適用されません。このためクルド語による弁論の要求は全会一致により却下されました」と述べた。
■被告人弁論の妨害を意図するものではない
ユルマズ裁判長は被告と弁護士のクルド語による弁論の要求は世論に誤解を招く要因になると話し、この誤解を招かないためにも説明する必要があるとし、次のように述べた。
「被告人弁論の権利は神聖なものであり、これを妨害することなどありえない。しかしクルド語で弁論を行うことは裁判長期化の原因となる。被告人がトルコ語を理解し、話せることは明らかである。裁判所は審理で話される言語を理解する人に通訳はつけない。また、被告人が通訳を望まなくても、弁論がクルド語で行われれば、起訴状のクルド語への翻訳が必要となる。900ページに及ぶ起訴状の要旨を読み上げるのに7日間かけたことを考慮すれば、その翻訳されたものが読み上げられるのにどれほどの時間を要するのか、見当もつかない。被告人弁論がトルコ語で行われれば法廷は早く進んでいくし、審理する側もその主張をより良く理解するだろう。クルド語による弁論に、被告人の法的利益はない。クルド語に関するこのような主張は、裁判とは別のところで意図的に誤解を招いている。そこではクルド人とクルド語が裁判にかけられていると主張されている。いくつかの裁判所でクルド語の弁論が認められたことを考えれば、このような主張が正しくないことはいずれはっきりするだろう。クルド語による被告人弁論を妨害しているわけではない。最近では、クルド語放送を行うテレビ局や出版機関がある。国民はみな法で認められた権利の枠内で行動するべきである。クルド人であることを理由に被告人が裁かれることなどありえないし、全ての国民は法的秩序に従わなくてはいけない。裁判所が理解できない言語を用いて審理を行うことは不可能である。これに法的な利益はない。」
■「不明な言語」
ユルマズ裁判長の説明の後バイラム・アルトゥン被告は再び被告人弁論を行うと述べ、マイクロフォンを要求した。アルトゥン被告が再びクルド語で話し始めたことに対しユルマズ裁判長は「クルド語と思われる、不明な言語で弁論を続けているように見受けられる」と言って、被告人からマイクロフォンを取り上げることを命じた。
■被告人が裁判長に怒鳴る:「侮辱している!」
解党された民主市民党(DTP)の元党執行部役員、ラマザン・モルコチ被告は被告人席で立ち上がり、まずクルド語で、その後トルコ語で「不明な言語とは言えない。一つの国民の言語に対しての侮辱発言だ」と叫んだ。ユルマズ裁判長はこれに対し被告人の退廷を命じた。他の被告人たちも立ち上がり、裁判長の退廷命令に反発を示して法廷から退出しようとした。
モルコチ被告が軍警察によって被告人席から退出する時に、もみ合いが起こった。そのためユルマズ裁判長は、すべての被告人の退廷を命じた。この時、傍聴していた人々も立ち上がり、拍手で被告人を支持した。
■弁護士も反発:「政治に深刻な影響を及ぼすだろう」
被告人の弁護士たちは、この状況に反発を示し、退廷命令の撤回を要求した。タヒル・エルチ弁護士は「これは政治的な要求ではなく、法的な要求である。被告人を退廷させることは緊張状態への引き金となる。私たちの目的は緊張状態を生みだすことではない。裁判官が被告人の弁論の権利を尊重することを望みます。審理が開始されてから、一体どの被告人がその秩序を乱すような振舞いをしたというのですか。裁判官は被告人の弁論の権利を侵害しています。クルド語で話したことを理由に法廷から出されるのは理不尽です。ラマザン・モルコチ氏の反発は「不明な言語」という表現に対して示されたものです。あなた方の態度は身勝手だ。ラマザン・モルコチ氏の再入廷を要求します。そうしなければ、この退廷命令は裁判に深刻な影響をもたらします。社会における緊張状態の要因ともなります。「不明な言語」と言う権利はあなた方にはありません。このようなあなた方の態度はトルコの現状に相応しくありません。政治にも深刻な影響を及ぼすでしょう」と述べた。
この弁護士たちの要求を受け裁判官は被告人退廷をとりやめ、14時まで休憩とした。
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( 翻訳者:池田峻也 )
( 記事ID:20596 )