「就労スカーフ着用女性の抱える問題」―TESEV、議論呼ぶ調査結果発表
2010年11月06日付 Milliyet 紙
トルコ社会経済調査協会は、スカーフ着用女性の労働実態について調査を行った。この調査は、保守的な雇用者が営む会社でのスカーフの扱いやその着用者の雇用に関する問題にも及んでいる。
トルコ社会経済調査協会(TESEV)は、高等教育を受け就労しているスカーフ着用女性の労働実態を調査した。彼女たちは、職場における一番の不正義は、「緑の資本家Yesil Semaye」とも呼ばれる保守的な事業家達たちから受けていると語る。その一方で、イスラムでは家計を支える責務は男性にあり、女性が働いたとしても、夫は女性の収入には手をつけてはいけないと考えている点が注目される。
「スカーフ着用禁止と差別―専門職で働くスカーフ着用女性たち」と題されたトルコ社会経済調査協会の報告書は、火曜日(9日)にその詳細が発表される。この調査のフィールドワークは、ビルケント大学政治学科教授でコロンビア大学客員教授のデレック・ジンドール博士によって行われた。フィールドワークは2009年12月から2010年7月にかけて、アンカラ、イスタンブル、コンヤで高等教育学校や大学を卒業し就労しているスカーフ着用女性に対して行われた。合計79名の女性と25名の男性にインタビューを行い、報告書では、女性のインタビューは本名の代わりにニックネームを用いられた。
報告書は、公官庁でのスカーフ禁止が民間企業にも影響を及ぼしているとし、またこの影響のためスカーフ着用女性が人目にふれないようにされている実態を明らかにした。報告書に記された主な分析は以下のとおりである。
●公務員への就職、現在の仕事の継続、(スカーフ着用者の増加を心配する)民間企業での就職、またはそこでの昇進に関し、スカーフ着用はマイナスとなっている。
●民間企業はスカーフ着用女性の給与を操作でき、彼女たちの社会的な権利を無視している。スカーフ着用女性のほとんどは中小企業やまたは自営業の事業体で働いているため、彼らを労働市場で保護するはずの社会的権利が彼女らには及んでいないことが多い。
●(スカーフ着用の)女性たちは、働くことに宗教上の障害はないとし、また女性が収入を得ることは罪ではないという。しかし収入は夫たちのものではないとする。女性たちは、家計を支える責任は男性にあり、女性が働くのは義務ではないとし、「女は働いてもいいのです。でも家計を支えるのは男たちです。『妻の同意なしに彼女たちの収入には指一本触れてはならない。』そう、それが、アッラーが私たちにおっしゃったことなのです」という。
●スカーフを着用しながら働いている女性たちは、たとえ管理職になっても「お姉さん、おばちゃん」のように見られることに不満をもっている。
●この調査は女性がスカーフを着用しながら働ける分野が限られていることを示している。また髪の毛を出さないで(公共の場で)働くことはとても難しいため、彼女たちにとって民間企業で働く以外の選択肢がないことを強調している。しかし民間企業の給与システムも公正ではないと、彼女らは主張する。
●宗教的で保守的な雇用者の会社におけるスカーフの扱いとその着用者の雇用の問題にも焦点が当てられた。彼らは、この労働環境では、スカーフ着用の女性らが、より低い賃金で長い時間働き、昇進の機会も少ないことを認めざるを得ない、と述べる。女性たちは、「宗教的で保守的」とされる雇用者らが自分を雇ったのは、宗教的な信仰心からではなく、スカーフ着用女性たちの賃金が安いことを利用しているためだと述べている。
●さらに彼女たちは、宗教的で保守的な雇用者らが、スカーフ着用女性たちの活躍に対し、十分な尊重と敬意を払わないと述べ、「『緑の資本家たち』は、言葉とは裏腹に、あなたたちを利用している」と述べた。また彼らがスカーフ着用女性を雇うことは、「社会的責任」だと考えているだけ(で、女性の本来の能力を認めていない)と主張する女性もいた。
(本記事は
Asahi中東マガジンでも紹介されています。)
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( 翻訳者:垣内亮輔 )
( 記事ID:20662 )