アラブ諸国における水不足の現状と適切な水利用の必要性
2010年11月06日付 al-Hayat 紙


■アラブ環境・開発フォーラム(AFED)の2010年度報告書:減少する水資源に持続的な管理を

2010年11月6日付『アル=ハヤート』紙(イギリス)HP環境面

 アラブ世界は、水資源枯渇に対処するための迅速かつ効果的なステップを採らなければ、水・食糧危機に直面するであろう。利用可能な淡水資源をすべて使っても、アラブ諸国は全体として水不足地域に分類されることになる。アラブ環境・開発フォーラム2010年度報告書は、2015年の初めには1人当たりの水の配分が500立方メートル未満に減少し、アラブ人は「「激しい水不足」に直面するだろうと警告する。500立方メートル未満というこの数字は、世界平均の6000立方メートル強の十分の一以下である。水不足は経済発展・食糧生産・保健・福祉にとって障害となる。1人当たり500立方メートル(500,000リットル)以下だと、激しい水不足とされるのはなぜか?

 いくつかの数値がこれを理解する助けになろう:カップ一杯のコーヒーに含まれるスプーン一杯の豆を生産するためには、150リットルの水が必要である。一方、1キログラムの小麦を生産するのには1300リットル、1キログラムの牛肉を生産するためには15000リットルの水が要る。ある地域における利用可能な水資源量と水に対する需要の差が広がるたびに、水・食糧の安全保障が弱体化する恐れが高まる。アラブ世界の水資源は、その3分の1が域外に由来するが、最大限に利用されてきた。

 しかし世界で最も水に乏しい19の国のうち13をアラブ諸国が占める。今日8つのアラブ国で1人が使える水の量は、年間200立方メートル未満、つまり激しい水不足とされる量の半分未満である。6つのアラブ国ではその量が100立方メートル未満になる。2015年に水不足ラインの上にとどまる、すなわち1人当たりの水供給量が1000立方メートル以上と予測されるアラブ国は、イラクとスーダンのみであるが、これはトルコやエチオピアからの供給が現在のレベルで維持されればの話である。従って、水への取り組み・政策が根本的に変わらなければ、状況は一層壊滅的になり、危険な社会的・政治的・経済的悪影響が生じるであろう。

 アラブ諸国は世界で最も乾燥した地域にあり、その土地の70パーセントが不毛で、雨は少なく域内に不均等に降る。アラブ諸国では21世紀の終わりに降水量が25パーセント減るとともに蒸発率が25パーセント増えると予想されており、この気候変動は状況をより複雑にするであろう。結果として、天水農業は危険区域内に入り、生産の減少率は20パーセントに至るだろう。

 アラブ地域で最も水が使われているのは農業分野である。世界平均が70パーセントを超えない一方、アラブ圏では淡水資源の約85パーセントを農業に利用している。また、ほとんどの国で潅漑能力が低く、世界平均が45パーセントであるのに対し30パーセント以下の割合でしか灌漑が行われていない。農産物は、いまだ利用水量に言及することなく、農地1ヘクタールあたりの生産トン数で計量されているが、利用水量を生産コストの一部として計算するため、水1立方メートルに対する農産物の量を計らなければならない。また、地表水の供給が人口増加や経済発展による莫大な需要に見合わなかったため、安全性の限界を超える形で地下水の利用が行われてきた。これが帯水層のレベルを大きく下げることにつながり、地下水源汚染の原因となった。健康面、特に子どもへの害が大きい農薬物質による汚染に加え、水域に流される家庭・産業排水が増加したため、水質汚染はアラブ地域の主要な脅威とみなされている。アラブ地域の排水の43パーセントが処理されないまま流されている上、そのうち20パーセント以上が再利用されていない。また、海岸地域での地下水の過剰な汲み上げは塩水の地下水源への流入を招いている。

(後略)

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:平川大地 )
( 記事ID:20674 )