親アルメニア派とされるアメリカ合衆国下院ナンシー・ペロシ下院議長が、議長の座を親トルコ派の共和党ジョン・ボーナー議員に交代するに先立ち「アルメニア人虐殺」法案を本会議の議題に上げるという情報がアンカラとワシントンを警戒させている。
2009年3月上旬にアメリカ合衆国下院外交委員会で1票差で承認された「アルメニア人虐殺」を承認する第252法案が、下院本会議で審議されることがわかった。
親アルメニア派として知られる米国下院の民主党ナンシー・ペロシ下院議長は、(外交委員会での)決議以後、今日までアルメニア人ディアスポラのキャンペーンで大きな圧力をうけてきた。このため、(閉会に先立ち)間もなく本会議の議題にあげるとみられている。
この情報は、アンカラとワシントンで反発を呼び、オバマ政権が、議会工作を始めたことも判明した。しかし、法案は昨日(12月17日)の下院議会では取り上げられなかった。次回の下院議会は火曜(21日)に開催される。1月以降、共和党が多数を占める新議会がスタートするに先立ち、長い間下院で待機状態にあった同法案をペロシ下院議長が下院の議題で取り上げる可能性があることが明らかになった。
現在の下院の任期はクリスマス休暇を含み残り数日で終了する予定。このためペロシ下院議長が、議長の椅子を親トルコ派のジョン・ボーナー氏に渡す前に法案を急いで下院の審議に持ち込もうとしたと見られている。
■米政府:断固反対
米国外務省広報担当のフィリップ・クローリー広報担当は、下院の議題に取り上げられる可能性が明らかになったアルメニア法案について「断固反対する」と話した。クローリー広報担当は、定例の記者会見で、記者の質問に対し、アルメニア法案が下院に上る可能性についての情報を得ていると明かした。同担当は「この法案に断固反対する」と述べ、トルコとアルメニアの共通の歴史を考える最善の道は、関係平常化の過程を経ることであると信じていると話した。
■トルコ人関係者は東奔西走
一方、決議が下院で取り上げられる可能性を受け、在米トルコ大使館がホワイトハウスや外務省、議会に対し、頻繁に折衝を行なっていることがわかっている。情報筋によれば、大使館は在米の諸トルコ系協会などとも相談しているという。
在ワシントンのトルコ大使ナームク・タン大使は、合衆国下院で審議される可能性のあるアルメニア決議について「全てのトルコ人、アメリカ人が、当然の反発を示すだろう」と語った。タン大使は、SNS(ソーシャルネットワークシステム)であるtwitterで発言。米国が1915年事件を「虐殺」として承認することを求める法案が、合衆国下院ナンシー・ペロシ下院議長によって議題に取り上げられようとしていることについて触れ、「アルメニア系諸組織が、1915年事件に関するアルメニア側の主張が含まれている法案を、下院で、本日(昨日)、または明日(本日)にも、採決しようとキャンペーンを行っている」と明らかにした。また、タン在米トルコ大使は、「全てのトルコ人、アメリカ人が、当然の反発を示すだろう」と述べた。
一方、在米トルコ協会などもアルメニア決議が米国下院で議論される可能性に対して行動を起こし、米国政府や議員らとの連携をはかっているとの情報も伝えられている。
トルコ・アメリカ諸協会評議会(ATAA)のギュナイ・エヴィンチ会長は、このアルメニア側の動きはアルメニア人による、一種の「最後のあがき」の試みだと話した。トルコ・アメリカ友好議員会議のスアト・クヌックルオール代表は、米国政府の圧力によりこの決議が回避されることを望んでいると述べた。ただし、法案は下院の昨日の会議では議題に上ることはなかった。
■注
決議は2010年3月に下院外交委員会によって、22票対23票で可決された。
■外相はクリントン国務長官へ電話「回避を」
トルコのアフメト・ダヴトオール外相は、米国下院で議題に取り上げられるとされるアルメニア決議問題に関し、米国ヒラリー・クリントン国務長官に電話で連絡をとり、法案可決の回避のため米国政府が積極的な態度で介入するよう求めた。
外交情報筋から得られた情報では、昨夜クリントン氏と電話で話したダヴトオール外相は問題の深刻さを説明した。それと同時に、ダヴトオール外相はこの決議を回避するために米国政府が積極的な態度で介入する必要性も強調。クリントン国務長官も、米土関係の重要性を改めて口にし、この問題について米国政府の態度は変わらないこと、更に、法案が議題へ取り上げられることを回避するためいかなる努力も辞さないとの考えを表明したと伝えられている。
■エルドアン首相に連絡
情報によれば、トルコ外務省アフメト・ダヴトオール外相は、コンヤで行われた(メヴレヴィー教団の)シェビ・アルスの祭典に出席中、会場から一時退場し、クリントン氏と電話会談を行った。その後ダヴトオール外相は、祭典の会場に戻り、レジェプ・タイイプ・エルドアン首相に手にしたメモを見せ、会談についての情報を伝えた。
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( 翻訳者:原田星来 )
( 記事ID:21003 )