リビアの動乱はチュニジアやエジプトのように民衆運動の勝利といった形で決着がつくといった望みが、短期間で、つまり数日間で現実のものとなるとは思えない。カダフィー政権も遅かれ早かれ崩壊する。しかし、これがいつどのように実現するのか、現時点で推測することは不可能である。
この不透明性には3つの理由がある。
―第一の理由:カダフィーのパーソナリティー。
カダフィー、つまり、世界における「独裁者の一人者」(42年間にわたる独裁は一つの記録となっている)は、自身を民衆の味方、また革命の指導者として示してきた。しかし、彼は実際「異常者」である。長年にわたる彼の異常さ、奇怪さ、そして残忍さは世界中に知れ渡っている。現在も民衆運動に対し、彼は貪欲に、自己中心的に、そして怒りに満ちて、自らの国民に対し自身の私兵やアフリカ人傭兵を、そして戦闘機までも送りこんだ。チュニジアとエジプトの指導者たちも独裁者であった。しかし彼らは道に放り出された人に対し、このような残忍な行為を行うことはなかった。また、過度に抵抗することなく身を引いた。リビアでは、地位を保持するため内戦までも引き起こそうとするカダフィーのような狂人の手によるならば、想像だにしないあらゆることが起こりうる。歴史には、狂気的な指導者による「人類の悲劇」の例が満載である。
―第二の理由:リビアのダイナミクス(力学)。
チュニジアとエジプトでは民衆運動は、わずかな衝突により終息した。この一番重要な理由は、この2カ国では軍が事件に介入せず、国民を攻撃の対象にしないようにしたことである。リビアには国軍の他、カダフィーの命令により特別に設けられた私兵と、傭兵により構成される外国人部隊が存在する。
実際民衆運動はベンガジ等、国の東側地域を制圧している模様だ。しかし、カダフィーに忠実なトリポリを拠点とする勢力は、支配力を失わないため残虐な戦いを繰り広げている。さらにリビアの部族構造や地域間分裂、加えてこうした特徴が軍での分裂を引き起こすこと、これらが長期間の内戦の危険性を高めている。
―リビアの不透明性の第三の理由:外的要因。
エジプトのような大国では、デモが始まった後、すぐにアメリカを始めとして国際組織がホスニー・ムバラクの辞任を望み、圧力を強めた(エルドアン首相がホスニー・ムバラクの辞任に関して出した声明を忘れないでおこう)。
リビア問題で、世界が取った行動は異なっていた。アメリカのオバマ大統領は先日夜に会見を行った。彼はただ暴力の行使を非難し、全世界が共に考え行動するよう呼びかけた。国連安保理からもまた、非難と呼びかけの混じった弱々しい決定がなされた。この理由は、全世界が(トルコもであるが、)まずリビアにいる自国民を無事に救出しようとしているからである。また、リビアと経済的繋がりの強い国々は、リビアの不透明性に直面し、カダフィーを敵に回したがらないでいる。この行為は「ダブル・スタンダード」と説明されうる。しかし現実とはこうしたもので、人々は利益のためにこのように行動するものである。
ここに取り上げた3つの理由により、カダフィーが(ベン・アリやムバラクのように)短期間で辞任に追い込まれるかどうかは疑わしい。とにかくリビアでも采は投げられた。民衆運動はともかく継続し、拡大するであろう。カダフィーが、自らの国民に対し挑んだ戦いに勝つことは不可能である。
今からカダフィーが国民に対してなしうる最大の貢献は、この現実を見定め、退任することである。辞任が早ければ早いほど、それだけ良い。
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( 翻訳者:畔上曜子 )
( 記事ID:21625 )