トルコ実業界はカダフィー政権継続に賭けている
2011年02月26日付 Milliyet 紙

適切な人に、適切な時に、適切な質問を投げかけて、「間違った」結果になるとは。
2月17日に同紙に掲載されたコラムは、まさにこれを経験した。
リビアで総額20億ドル以上の請け負い事業を展開し、7箇所で建設工事を行っているルネサンス建築代表取締役のエルマン・ウルジャク氏は、コラムの中で、「リビアはエジプトやチュニジアとは違います。危機は感じません」と話していたが、読者がその翌日、テレビをつけてみると、そこではリビアで拡大した蜂起が報道されていた。リビアの状況に、ウルジャク氏だけでなく世界も驚いた。つまり、誰も同国で突如デモが起きることなど想像していなかったのだ。
リビアは世界の石油製造量の2%を担っており、その量はアフリカで第三位である。リビアの石油埋蔵量は460億バレルにもなるが、同国の戦略的な重要性は石油や天然ガスの豊富さだけではない。その地理的な位置も大きな意味を持っている。

■ウルジャク氏「カダフィー大佐の息子は知らない」

次のような比較をすれば、状況はより明確になる。すなわち、リビアと北イラクの石油埋蔵量はほぼ同量である。しかし、イラクはヨーロッパと離れている。一方リビアは、イタリアをはじめ、ヨーロッパの目と鼻の先に位置している。
リビアは、石油輸出の32%をイタリアへ、13.4%をドイツへ、10%をフランスへ行っている。
そもそも、リビアでの蜂起がまず影響したのは、予想通り石油の価格であった。1バレルあたり111ドルを超えた。
ウルジャク氏はまさにこの点において、「ヨーロッパから見れば、リビア掌握など簡単なことなのです」と言う。
カダフィー大佐の子息であるセイフュルイスラム・カダフィー氏は、先日CNNチュルクにてジュネイト・オズデミル氏の質問に答えるなかで、石油パイプラインが爆破されるといった発言を否定し、「石油はリビア国民のものです。爆破するなど決してしません」と述べた。
オズデミル氏のリビア首都・トリポリ訪問に際して便宜を図ったのも、エルマン・ウルジャク氏であることを、強調しておかなければならない。
ウルジャク氏に、「セイフュルイスラム氏をご存知ですか?」と聞くと、「いいえ、カダフィー大佐のご子息のことは知りません。リビアは身内同士で一緒に事業を行うような国ではありません」と主張していた。

■10万人が関わる

以下の発言は、リビアに関するウルジャク氏の「慎重な」見解を示している。
「トルコでは、リビアとの貿易により年間60~70億ドルの経済が生まれています。10万人がリビア経済に直接関わっています。リビアに住む2万5千人のトルコ人のなかには、帰国したくないと言う人たちもいます。おそらく、帰国を決めたのは1万人ほどでしょう。場所によっては蜂起は鎮圧されましたし、銀行も営業しています。」
メフメト・シムシェキ財務大臣は、リビアで継続している請け負い事業の総取引額は153億ドルにもなると言っていた。
リビアでの損害がどのように賠償されるかという問題は、解決されないままである。トルコとリビアは1972年来貿易を行っているが、二国間協定において、「損害賠償」批准はなされていない。
シムシェキ財務大臣は、「やむを得ない理由を明確に示せば、各社が被った略奪事件による損害は、補償されます」と言った。
トルコ政府が各社のリビア撤退後、商業界を安心させるような何らかの決定を下すのは明らかだ。
ザフェル・チャーラヤン国務大臣のリビア会議出席前に、トルコ・建築業連盟のエルダル・エレン会長とお会いしたが、「まず命、次に愛」というような趣旨の彼の発言は、トルコのリビアに対する強い期待の証拠である・・・。

■改革計画開始

ウルジャク氏に改めて「カダフィー大佐の子息」の件を聞いてみる。
ウルジャク氏は、「セイフュルイスラム氏は、リビアにおける事業開発・改革のトップです。彼の下で十分に教育を受けた約150人の若者が、リビアを構築しています。リビアを管理しているのは『国民委員会』です。なので、ひとつの党や野党について引き合いに出すだけでは足りません」と答えた。
カダフィー大佐の8人の子息のうち、7人は男で、女はアイシェ氏ひとりだ。アイシェ・カダフィー氏は、アメリカ合衆国ブッシュ大統領に靴を投げたことでイラクを騒がせたアル=ザイディの弁護士団のひとりであった。
カダフィー大佐の子息ひとりひとりについて、ヨーロッパやトルコのメディアで伝えられたニュースを引き合いに出して触れる必要はないだろう。カダフィー大佐が「死んでも離れない」と言っていた、そのリビアにおいて、セイフュルイスラム氏は今日までに240人が亡くなったと述べた。しかし、各メディアの伝える情報によれば、死者の数はこの4倍にはなるだろう。
ウルジャク氏にこう聞いてみる。「民主主義への要望が高まっているこの危機状態の中で、カダフィーは武力を行使してもなお革命指導者として生き残ることができるのですか?」
ウルジャク氏は次のように答えた。「カダフィー政権はなくなりません。政治は民主主義化します。アメリカのイラク侵略計画は、リビアでは通用しないでしょう。」
リビアに関する推測は間違ったものが多いと言っておいたほうがいいだろう。
「命」ということについて言えば、トルコの建築会社の多くは自身の社員をトルコに帰国させた。ルネサンス建築は、リビアにいるトルコ人労働者1250人を、エジプトでレンタルした飛行機によりトルコに送った。
外国人労働者は、エジプトやチュニジアに避難させている。
トルコの建築業分野は、1970年以来関係が続いているリビア市場において、新たな経験を積んだ。
すなわち、世界的政治危機だ!
今、本当のことを言うとすれば、トルコはカダフィー政権継続に賭けている。建築業者は機械一式をリビア人に預け、仕事の「休憩中」のようなものだ。

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:津久井優 )
( 記事ID:21642 )