リビアの化学兵器庫をめぐる疑惑
2011年03月03日付 al-Quds al-Arabi 紙
■カッザーフィの化学兵器庫をめぐる疑惑
2010年3月3日『クドゥス・アラビー』
【ワシントン】
アメリカの諜報機関の報告によれば、リビアのムアンマル・アル=カッザーフィー(カダフィ)指導者に忠実な部隊が、化学兵器に利用するために国内で貯蔵されている主要な化学物質に対する警備を強化したという。しかし、同機関の幹部らは、同機関がリビア国内の化学兵器庫の場所を全て把握しているわけではないとしている。
国際的な専門家らは、「軍が軍事作戦の際に化学物質の拡散に使用する兵器システムが全く存在しないということは、リビアが数年前に化学物質貯蔵庫の殆どを破壊したということだ」と指摘する。このことは、一部の化学物質が盗まれたとしても、盗んだ者らがそれを使用することは難しいということを意味している。
アメリカ政府の報告書に詳しい高官によれば、同政府は〔リビアで〕化学物質の主要な隠し場所周辺の警戒レベルが引き上げられたことを示す情報を手にしているという。しかし高官らは、アメリカが警備態勢の強化が行われたことをどのように知ったかについては発言を差し控えた。
先月、国際的な監視機関は、リビアが致死性のマスタード・ガスを9.5トン保持していたものの散布装置は持っていないと明らかにした。
米高官らは、残りの化学物質の保管場所の特定や、警備態勢の中身についてアメリカが得た情報に関する言及を差し控えているが、高官の一人は、「アメリカの諜報機関は、警備態勢の強化がアル=カッザーフィの部隊によって行われたものであり、反政府側によるものではないと考えている」と語った。
国際的な観測筋によれば、化学物質はリビアの首都トリポリからは非常に遠い場所に保管されているという。また、アメリカ国防省の高官は、2006年に米連邦議会に対し、化学物質の貯蔵庫がトリポリから約600キロメートル離れた辺鄙な砂漠の中にあると報告した。しかし、別の米高官によれば、リビア政府が残っている全ての在庫を完全に管理しているかはっきりしないという。
オランダに本部を置く国際監視機関である化学兵器禁止機関[OPCW]のスポークスマン、マイケル・ローヒン氏は、同機関がリビアで残りの化学物質に対する警備態勢の強化が最近なされたかどうかを確認することはできないと語った。
同スポークスマンはロイター通信に対して、「警備態勢の変化を示すものは何も目にしなかった」としながら、「同機関の任務は査察と確認作業であり、当事国政府の責任である警備態勢[の確認]ではない」と語った。
また、同機関が先月明らかにしたところによると、リビアは2004年に化学物質の拡散に利用可能な航空爆弾の在庫を廃棄したという。また、アル=カッザーフィー政権は昨年、保有していたマスタード・ガスの約54パーセントを廃棄しており、今年5月までに残りを廃棄することに同意していたという。
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( 翻訳者:松尾愛 )
( 記事ID:21695 )