社説:リビア、ソマリア化のはじまり
2011年03月06日付 al-Quds al-Arabi 紙
■社説:リビア、ソマリア化のはじまり
2011年03月06日『クドゥス・アラビー』
チュニジア、エジプト、バハレーン、イエメン、イラクのいずれにおいても、政権打倒を要請する国民革命が起きた時、その性質は明らかであり共通項があった。それは、完全武装の政権に対峙するこれらの革命が市民的かつ平和的であったことだ。
しかし、現在テレビ画面を通じて我々がフォローしているリビア革命においては様相が異なる。特に、抑圧的政権に対し、これまで得た成果を保持し、制圧した各都市を奪還されまいとして革命側が完全な武力闘争に突入して以来、その違いが我々の眼にもはっきり見えるようになってきた。
これは、分裂したリビア国軍の一部が革命勢力につき、元首の独裁政権に反旗を翻した結果であろう。国軍が中立を維持したチュニジアでもエジプトでも起きなかったことだ。その二国においては、彼らの中立が結果的に大統領辞任を求めることになった。それによって流血の大惨事は回避され、ダメージは軽減され、国土の一体性や社会的統一も維持された。
現在のリビアの分裂状況においては、双方が武力制圧に依拠していることが懸念される。不正と抑圧に対する正当な革命と部族的独裁政権では、もちろん大きな違いがあるのだが、大方の予測を裏切る長期の内戦へと国がなだれ込む恐れがある。広大な国土に少ない人口(700万)を有するリビアは、地理的にも社会的にも幾つかの部族が勢力を握る構造となっている。政権はこの特徴を用いて、最終的に自らが利するよう、彼らの間に溝を作ってきた。しかし国民革命はその目論見を覆し、政権の基盤を根底から揺るがした。
戦闘現場からのニュースは錯綜し、大部分が矛盾している。ある時は政権がアッザーウィヤ市奪還を祝い、またある時は反体制派がミスラータを取り戻したといい、政権がそれを打ち消す。しかし、両極化をあらわにしながら激化する戦闘に目を奪われ、大勢が見過ごしがちな真実は、国が分裂の一途をたどっているということである。おそらくそれは、イラクやアフガニスタン、そしてソマリアのような「失敗国家」と化すだろう。
ムアンマル・カッザーフィー(カダフィ)大佐は、もし革命が続き内外がそれを支持するようなら(外部の支持の兆候は現在のところ全くないが)、アル=カーイダがリビアに足場を得ると示唆しながら、リビアがソマリア化するという脅しをかけた。大佐は、このソマリア化計画の第1部を実現したようだ。第2部は今後の情勢次第ということになる。
リビアには今二つの政府がある。崩壊しつつある政府は、トリポリのアル=アズィーズィーヤ軍事基地に居を構え、中部(北は地中海を望むシルトから南のサブハーまで)を制している。一方、革命政府(国民議会)は東部に司令部を置いている。いたちごっこが続く現状では最終的な勝者を見極めるのは難しいが、長期的にみると、奇跡でも起きない限り、カッザーフィー政府が生き残る可能性はごく限られてくるといえる。カッザーフィー政権は去るべしというのがほぼ国際的合意となっており、国内の支持基盤が浸食されているからである。
(本記事は
Asahi中東マガジンでも紹介されています。)
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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:21750 )