■コラム:中国モデルの崩壊か?
2011年03月10日『アル=ハヤート』
【ハッサーン・ハイダル】
中国は、リビアの主権を尊重する必要があるという理由で、同国における飛行禁止区域設定にむけた欧米の努力に反対している。しかし、この留保の背景にはおそらく自己防衛の試みがある。アラブ諸国は、成功をおさめた蜂起を体験し未だ変革を目の当たりにしている。中国当局は、それらのアラブ諸国が中国モデルを採用していたと考えている。つまり、それらの国々は開放経済の制度と治安や社会には制約の厳しい制度をとる混淆スタイルを[中国同様に]とってきた。中国は、国民の生活水準の大きな不均衡のために、そのうねりが自国にまで伝播することを恐れている。
実際、現在間接的に中東変革の軌跡を導いているアメリカの目には、中国も同様に映っている。というのも、彼らは中国を[アメリカと]旧ソ連との二極化時代の遺産とみなしているからである。(中国が北朝鮮体制を保護したり、中国のアフリカにおける同盟やイランを支持する立場がそれを示している。)またアメリカにとって中国は、経済や金融において成功をおさめている競争相手であり、世界で唯一の超大国たる合衆国の主導権を脅かす軍事バランスを絶えず求めている危険な国である。特に2010年、中国はGDPが日本を抜いてアメリカに次ぐ世界第二位となった。専門家は来たる10年で一位となると予測している。
アメリカ当局は、中国モデルを採用していた「小さな手駒」の没落が中国を孤立させその影響力を削ぎ、同国の石油備蓄と成長する市場の拡大路線に歯止めをかけるとみている。チュニジアやエジプトのかつての体制は、中国体制の「完全なるレプリカ」と見做されてきた。両体制は共に不完全な開放経済政策を採用し、また抑圧的な治安制度を構築していた。それは、あらゆる会計監査に従わない新たな富裕層や不当に恩恵をうける人々の集団を保護するための効果的な政策であった。つまり、それら二国の体制は、公正な体制が必要とするはずの政治的自由が存在しないという事態の陰で栄えてきた腐敗に染まっていたということだ。
中国当局が自国の公式メディアに対し、通信各社やその他のソースが伝えるエジプト革命の展開を報道することを禁じ、当局が配布するニュースや映像でよしとするよう指示をだしたのは、おそらくこれが理由であろう。また、インターネット上での集会やデモの呼びかけに応じることについては、「混乱をもたらす」として北京市民に警告する理由も同じである。同時に大量の治安要員を配備する当局は、「彼ら[治安要員]は、中国内外のグループが我々の発展における諸問題を利用し混乱を引き起こすことを許さず、調和と安定を守っている」と中国の人々に主張している。
中国当局は、首相やそのほかの政府高官らが「国民が不満を抱いている」と発言することは認めるものの、その不満はインフレや物価上昇に起因するとしている。そして、インフレと物価上昇は急成長を遂げるために必要であるとして、それらに対する永続的な解決策をみつけると約束している。これらの不満が実は、政治的自由ならびに、人口の大多数が貧しい境遇で農村部に暮らす一方で主要都市の富裕層を生み出した不公平な成長と関連していることを彼らは全く無視している。
散発的な抗議活動や抗議運動は中国の体制を脅かすには遥か及ばなかった。しかし、西欧諸国、特にアメリカと競合する大国へと変わるための必要条件を中国当局が無視しつづけるということは、イデオロギー上の敵の手中に価値ある自由や人権というカードを握らせてしまった旧ソ連の経験を活かしていないということである。
(本記事は
Asahi中東マガジンでも紹介されています。)
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( 翻訳者:松尾愛 )
( 記事ID:21775 )