社説:カッザーフィーと時間稼ぎゲーム
2011年03月09日付 al-Quds al-Arabi 紙
■社説:カッザーフィーと時間稼ぎゲーム
2011年03月09日『クドゥス・アラビー』
必死で政権の座にしがみつこうとするリビア元首ムアンマル・カッザーフィー(カダフィ)は、リビアの崩壊が地中海沿岸地域、特に欧州諸国にとって危険であると主張している。そしてこのメッセージを広めるため、国際メディアを武器に使おうとしている。
カッザーフィー大佐の最新のテレビ会見はアンカラ与党よりのトルコ・テレビ局「TRT」であったが、その中でこの問題を真っ向から取り上げている。
「リビアが不安定化すれば、アフリカの黒人移民が数百万規模でイタリア、フランスへ移動する。その辺りはすぐ彼らでいっぱいになるだろう。」
そのように述べた大佐は、「アル=カーイダ」がリビア人を動員しており、それは欧州と地域全体の安定を脅かす事態だと改めて強調した。
大佐のこの恫喝は、不法移民問題について幾分かの真実を含んでいる。リビアが有する地中海沿岸1800キロメートルは、そのところどころが全く無人で監視体制下にはない。しかし大佐は、このようなカードをちらつかせれば逆の結果になるという事を理解していない。恐らくこれは、外国が大佐の政権を倒すために軍事介入する口実に使われるだろう。
現在、英仏独などのNATO加盟国は、リビアに急いで飛行禁止区域を課すべく尽力している。大佐側につく勢力が、独裁政権打倒を求める革命家たちを爆撃するのを防ぎ、革命側の支配下にある都市の住民たちを守るためとして。
装備で勝るカッザーフィー側の軍勢は、ヘリを用いた作戦により、確かに幾つかの戦果をあげ、都市や町を奪還し、革命家たちをそこから追い出した。しかし同時に、これらの成果は、欧米諸国政府に介入を急がせる動機ともなっている。介入は、飛行禁止区域の設定あるいは革命側への軍事援助の形となる。実際、何が必要な軍備かを知るため、幾つかの政府が革命側とのコンタクトを開始している。
リビア政権はぐらついており、生き延びるチャンスは日に日に少なくなっている。しかし、やはり外国軍事介入は、革命側に多大なダメージをもららす。欧米、特に合衆国がリビアとその石油資源を制圧することを手助けしたというイメージをもたれるからである。
既にカッザーフィー大佐は、反体制派を代表する国民議会とそのメンバーに対し、中東における新植民地主義計画に加担した大逆罪を犯したとして糾弾する激しい歪曲キャンペーンを始めている。
リビア危機は日ごとに複雑さを増し、時間という要因は、無念なことに大佐に味方している。引き続いての打撃や国際的孤立にもかかわらず、リビア政権は自負を示し、古い友好関係を回復させるべく外部世界と連絡をとりだした。中国、ロシアなどの巨大勢力を石油カードで誘惑しようとしている。この二カ国、中国、ロシアを動かすのに経済的利益は大きな役割を果たす。つまり両国が、リビアにおける飛行禁止区域設定決議案に対し安保理で拒否権を発動する可能性を、欧米諸国は懸念している。
40年間リビアを制し国民を従属させてきたリビア政権は、腐敗した抑圧的独裁政権である。そこからの脱却は、エジプト、チュニジア同様、リビア国民の責任においてなされるべきである。この使命を果たそうとするリビア国民を支援する手立てはいくつもあるが、それは決して飛行禁止区域設定ではない。
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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:21782 )