エジプトでイスラーム復古主義の伸張に高まる懸念
2011年04月07日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ワクフ省、軍にサラフィー主義者の阻止を要求、大物教宣師たちは暴力行使を否定
■エジプトのサラフィー主義者、「聖廟破壊」から「ファラオ像の顔に覆い」にいたるまで、数々の嫌疑でショックを与える

2011年04月07日付『クドゥス・アラビー』紙

【ロンドン:本紙ハーリド・アル=シャーミー】記者

サラフィー主義者[=イスラーム復古主義者]が墓廟の破壊キャンペーンを始めたとか、ヒジャーブ[=髪を覆い隠すベール]をしていない女性たちを脅している、あるいは一部の県でハッド刑[=窃盗犯に対する指・腕の切断といったコーランに明記された刑罰]を適用しようとしているなどといった疑いが持ち上がっていることを受けて、エジプトでは現在、宗教に基づく暴力行為が増加することへの懸念が膨らんでいる。

サラフィー主義の教宣師[ダーイー]たちはこうした嫌疑を否定し、ホスニー・ムバーラク政権失墜後に存在感を見せるようになったサラフィー主義潮流の影響力の大きさを悟ったリベラル陣営が、彼らを政治的に追いやろうとして始めたメディア・キャンペーンの、自分たちは犠牲者だと語る。

一言で「サラフィー主義」といっても、不正な統治者にも絶対服従するという派から、不信仰者の烙印を押すという派まで、多様で、互いに相容れないような諸潮流までもが含まれている。研究者たちはサラフィー主義を、「教宣派」「ジハード派」「衛星派」などと分類する。「衛星派」というのは、サラフィー主義を説く教宣師たちが、衛星テレビ上で広く活動しているためだ。

ムバーラク政権時代、サラフィー主義者は宗教や道徳問題に重点を置き、政治活動からは距離を置いていた。そのため、政権によって活動の自由を与えられ、勢力を伸ばすことが出来た。だが彼らは政権打倒後に立場を変更し、先月行われた国民投票では、憲法改正への支持を訴えるキャンペーンに加わった。

最近では軍が、カイロ南方のアトフィーフで起きた教会放火事件の後、宗教間紛争の兆しを鎮静化するために、サラフィー主義の著名な教宣師であるムハンマド・ハッサーン師に助力を求めたことが、宗教勢力への肩入れだとしてリベラル陣営から批判を受けた。

また一部のサラフィー主義者は最近、売春宿を経営していたとしてあるキリスト教徒市民の耳を切り落とすといった、多くのエジプト人にショックを与える事件を起こしたと疑われている。あるいはまた、アレキサンドリアの有名なサラフィー主義の教宣師であるアブドゥルムヌイム・アル=シャッハートがファラオ像について、「崇拝対象にならないよう、ロウの箱で覆わなければならない偶像である」と発言したとも伝えられている。シャッハート師は、サラフィー主義者は自身に課している厳しい規律を守っているとして、サラフィー主義者による暴力行為への関与を否定している。また、一部のサラフィー主義者は政党結成の決意を表明しているが、先日発布された新しい政党法は、宗教政党の禁止を強調している。

ムスリム同胞団の内部でサラフィー主義派が力を持っていることから、事情通は次の議会でサラフィー主義派が多くの議席を得ると予想する。とりわけ同胞団の指導層が、議席の半数に及ぶ候補者を擁立する可能性に言及したことが、そうした予想につながっている。

エジプトのワクフ省は昨日水曜、統治にあたっている軍最高評議会に対し、サラフィー主義の集団によるものと疑われる一連の聖廟・聖所破壊を止めるために介入するよう要請した。ワクフ省は軍と警察に、「墓所の聖域を侵し、聖廟を破壊する、憎しみと誤った考えに凝り固まった者たちの手を、断固として叩く」よう、呼びかけたのだ。

ワクフ省は「あらゆる時代のイスラーム学者たちが、義なる人々[=聖者]の聖廟に害を成したり破壊したりすることは、イスラーム法の精神に反するとして、これを禁じることで合意してきた」と述べ、聖廟の破壊は「腐敗」であり、「社会に混乱と内乱を広め、治安と安定を揺るがす」試みであると評した。

報道によれば、数十か所の聖廟が攻撃に晒されており、組織的な仕業と見られる。そのことが、アズハル総長や共和国ムフティーほか、多くの大物シャイフやウラマー、イスラーム思想家たちの反発を呼んでいる。

ムハンマド・アル=アッサール防衛大臣補佐官は、こうした行為に対する軍最高評議会の懸念を表明したが、軍が「ワッハーブ派であれ、サラフィー主義者であれ、ムスリム同胞団、あるいはキリスト教徒であれ、エジプト社会を織りなす一要素を遠ざけたり、根絶したりする」つもりはない、と語った。

エジプトの「預言者一族連盟」は、聖者の墓を襲わせるためにサラフィー主義者をエジプトに送りこんだ責任はサウジアラビアの機関にあるとして、軍最高評議会に対し、「サラフィー主義者の攻撃をやめさせる」よう要請し、「沈黙がイスラーム教徒の間に内乱を生むようになる」と警告した。

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( 翻訳者:山本薫 )
( 記事ID:22058 )