髪を引っ張り、歯を調べ、歩き方をチェック:ヨルダン伝統の花嫁審査
2011年05月26日付 al-Quds al-Arabi 紙

■髪を引っ張り、歯を調べ、歩き方をチェック:花嫁が希望通りか審査するヨルダンの習慣

2011年05月26日『クドゥス・アラビー』

【アンマン:本紙:マナール・アッ=シャムラ】

伝統的な訪問…微に入り細に穿つように検査とチェックを受ける娘…一人が花嫁の髪を引っ張り、天然かどうかを尋ね、もう一人が胡桃の実を渡して歯で割らせる…2人は自分たちの目で詳細に調査し、体つきを調べ、歩き方や目の形を検査する。これらはヨルダンの首都アンマンで、ハッターバ[=結婚の仲立ちをする女性]たちがとる様々な方法の一端である。彼女たちは婚約した男性の母親になりかわって、希望通りの花嫁かどうか見定めようとしているのだ。

ヨルダンの娘たちはたいてい、尊厳を貶めるこうした検査から逃げたいと思っている。この「屈辱的な行為」を避けようと、毎週のように母親と闘っているというアーマール・ヒルミーさんは、花婿の母やおば、あるいは一部の家族が頼りにしているハッターバが行う、女性の体と通常の生物学的能力についてのこの侮辱的な検査について、本紙に語ってくれた。

アーマールさんがもっとも侮辱的だと思うのは、花婿自身がこうした検査を承諾し、他の人達を自分の代理にして、検査させることだという。

この検査は女性だけに行われているのではない。ある地元の日刊紙が報じた社会調査によると、青年もまた女性たちのような立場に直面している。アフマドさんはそういった青年の一人だ。[結婚相手の女性宅への]初めての訪問は、あらゆる点で、彼にとってこの上なく難しく、居心地の悪い状態だったという。一方では、「花嫁」となる娘の家族からあからさまに注目を浴びせられ、体つきや動作や振舞いをこまかくチェックされて、まるで顕微鏡でのぞかれて検査を受けているかのようであり、また一方では、男性の側にだって結婚相手の女性に望むものを自分で調べる権利があると思う、というのである。

ルーヒーヤ・ハットゥさんは、花婿の家族の側が花嫁候補の女性達を検査するやり方に反対だ。こうした検査はしばしば、布地の品定めのようであり、すべての原因は古びた慣習と、近頃の青年とその家族の虚勢にある、と考えている。

首都アンマンの西に位置するサルト市にある、アル=バルカー応用大学の社会学教授、フサイン・アル=フザーイー博士によれば、婚約のための訪問の交換は、相手の女性が結婚相手としてふさわしいかどうかを検査するためにあるのではなく、両家が親交を深め、結婚に関わる要点を書き出しておくために、婚約の手順を整理することにある。特に初めての訪問はデリケートで、心理的な影響も大きいが、アル=フザーイー博士は、慣習的ではあるけれども重要だと断言する。肝心なのは、こうした訪問の後に、承諾するにせよ、断るにせよ、ふさわしく礼儀正しい返事をするやり方を心得ることにある。返事をしない事は、娘とその家族の権利をないがしろにする行為とみなされるからだ。ようするに、問題は中身ではなくやり方なのであって、婚約期間や互いに知り合う期間が長引くほど、家族の問題が起こりがちになる。

こうした訪問には時として「演劇的」な側面がありがちであるが、そのかわりに、崇高な目的を秘めている。この観点から、家族問題のアドヴァイスを専門とするナジュワー・アーリフ博士は、こうした訪問は重要で不可欠であり、青年が結婚したいと思う娘に出会った場合、もしくは両家がすでに知り合いだった場合、こうした親交を育てるべきだと明言する。

また、最初の訪問につきものの雰囲気について、アーリフ博士は次のように語った。「率直に言って、それは誰をも困惑させる状況です。半ばは演技ですし、娘の側は自分を評価するための訪問だと確信しているわけですから、それに備えて万全の準備をするでしょう。私の考えでは、一度の訪問では結婚を決めるのに十分ではありません。青年自身も同席して、当事者の意向を最優先させつつ、何回かの訪問を繰り返すべきです。また、この状況は娘だけでなく青年にとっても初めてで、困惑するものであるということを、娘の家族は考慮すべきです。娘の側に彼を受けいれる気がないのであれば、初めからお断りする必要があるのです」。

そしてアーリフ博士は全ての娘たちに、決定を急がず、「運命の人がどこにいるのか誰にもわからないのだから」、最初から扉を閉ざさないようにとアドヴァイスを贈った。

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( 翻訳者:岸本聖美 )
( 記事ID:22721 )