■イラク政府はスウェーデン政府と「合意」した…イラク人難民問題

2011年06月07日『アル=ハヤート』

【ストックホルム：リーナー・スィヤーウィシュ】

スウェーデンへの難民申請を拒否された数千人のイラク人らが終局的に辿り着いた運命を巡り、いよいよ議論が過熱している。この背景には、スウェーデン警察がイラク人らをバグダードへ強制的に送還しようとする継続的試みがある。

スウェーデン政府高官らは、追放措置が2008年2月18日にイラク・スウェーデン間で調印された了解合意に基づいてとられた措置であると繰り返し述べている。この了解合意によれば、スウェーデンは滞在許可を取得できなかった難民らを退去させる権利を有する。双方が合意したスウェーデン側の権限について、イラクの高官の発言はスウェーデン側の見解と対立している。ちなみに、スウェーデン側は合意にはイラク政府が難民申請を拒否されたイラク国民を受け入れることが含まれると指摘している。

イラク政府幹部の中には、イラク政府がイラク人難民の強制送還に関するいかなる合意にも調印していないと明言する者もいる。一方、当該合意が「強制的な」送還ではなく「自主的な」退去に限定されると述べる者もいる。しかしスウェーデンのトビアス・ビルストローム移民相は、合意内容を「難民申請が拒否された者の自発的ないし強制的帰還」と判断している。

イラクのホシュヤール・ズィーバーリー外相は複数の声明で、スウェーデン国内法が適用される者に関するイラク政府の法的義務の実行について、イラク政府が調印したことを否定しなかった。

これらの立場や声明を巡る対立により、スウェーデンのイラク人難民は孤立無援状態に陥っている。特にスウェーデン警察による半ば組織的な送還が継続する中、大多数の難民は自らが合意の犠牲になったと考えている。

▪数千人が強制送還

スウェーデン移民局のワリード・アル=ミクダーディー局長は本紙に対し「イラク人で難民申請を拒否されたケースは5000件に上り、彼らは送還を待つ身となっている。全体では数千の案件がある。一方、強制送還された者の数は1600人に上る。」と語った。

アル=ミクダーディー局長は「法こそが物事を決定するものである」とし、「イラクの政情の変化はイラク人を含む難民法令の変化に大きな影響を与えた。イラクの前政権時代及び政権崩壊後数年間、居住許可証は容易かつ集団的に付与されていた。当時のイラクは内外の両面で紛争の最中にあったからだ。しかし法律は2007年9月以降変化してきた。スウェーデン移民局はイラク情勢について、“国内で武力紛争が起きているとは言えない”ので、ジュネーブ条約の諸条件は満たされなくなったとの見解をとった。」と述べた。

スウェーデンは今もなおイラク人に対し滞在許可を付与しているが、その比率は以前と比べて格段に縮減されている。滞在許可が与えられるかは、個人毎の問題と、その個人が自らの生命を標的とする危険が存在するという事実を関係者に納得させる能力にかかっている。

アル=ミクダーディー局長は難民申請が拒否された者の特権の存在にも言及した。自主的帰還を決定した場合、独身者で3万スウェーデン・クローナ(4800ドル)、1家族につき7万5000クローナが支給される。

また同局長は、最終的に申請が拒否された者については自主的帰還のため2週間の猶予期間が設けられるが、期限を過ぎると当該案件は警察に送致され、本人は経済的特権を失うことになると述べた。

▪スウェーデンにおけるイラク人の存在

いくつかの統計によれば、スウェーデン国内のイラク人の数は最近15万人を超えた。その多くは1990年代に移住した者で、大多数は永住許可証を取得しており、さらにそのうち数万人がスウェーデン国籍を持っている。

現在、強制送還の問題である。この問題は、特に2007年以降に滞在許可を取得できなかった集団の件を含んでいる。

スウェーデンのトビアス・ビルストローム移民相は、これまで同省の政策対する批判に幾度も応え、「セーデルテリエ市(ストックホルム南部の郊外)にはイラク人難民が拡散した形で充満しており、その数はアメリカやカナダにおけるイラク人難民数よりも多い。この事実をもって、スウェーデンはもはや難民申請者に寛大ではないと認識する者への反論とする。」と強調している。

スウェーデンには150万人の難民が居住しており、住民数は950万人に近づいている。中東諸国の危機を受け、この数字は増加する見込みだ。

(後略)

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（ 翻訳者:川上誠一 ）
（ 記事ID:22797 )