社説:シリアの抗議デモで再び流血の事態、当局の強硬姿勢の危険性
2011年06月10日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ クドゥスの意見:「諸部族の金曜日」にまたもや流血

2011年6月10日付『クドゥス・アラビー』

シリアで金曜日にまたもや流血の事態が起きた。本稿執筆の時点で犠牲者の数は22人、そのうち11人はイドリブ県で亡くなっている。同県では目撃者によると、軍のヘリコプターがデモ参加者たちを銃撃したという。

軍の戦車やヘリコプターに支援されたシリアの治安機関が今なお、市民に対してあくまで実弾を使用するつもりなのは明らかだ。一方、改革による政治的解決策は全く不在である。

シリア当局は民衆の革命を力ずくで終結させ、国全体を再び制圧し、シリアを再びかつてのような状態に戻すという可能性に賭けている。しかしその賭けは失敗だ。何故ならば、抗議行動は激しくなる一方だし、シリア国民が疲弊していることを示す証拠は全くないからだ。自由、透明性、人権の尊重、包括的な民主化を求める公正な要求を取り下げる気配は全くないのだ。

友人たちの忠告にあくまで耳を塞ぎ、殺人作戦を重ねてゆくことに一層固執すれば、国内は内戦の劫火に引きずり込まれることになるだろう。そしておそらくは、何らかのかたちで外国の介入を招くことになるだろう。シリアの国内外には明らかに、自己防衛の名の下にそのような方向性を推し進めようとする集団が存在している。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相はイスラーム諸国の中で最もシリア体制とバッシャール・アル=アサド大統領に近い指導者であり、わずか数年の間に首尾よくトルコとシリアの関係を強化させてきた。そのことは自由貿易地区の設置、両国民の自由な出入国を図るための国境の開放、経済プロジェクトや通商協力などに反映されている。

それゆえに、親しい友人であり同盟者であるエルドアン氏が堪忍袋の緒を切らし、「シリア体制は恐るべき行為を犯しており、抗議デモに参加する自国民に対して人道的に振る舞っていない」と非難し、「数日前にアル=アサド大統領に電話したところ、彼もその他の政府高官らも状況の重要性を軽視していることが分かった」と言明したことは、シリアにおける状況がさらに悪い方向へなだれを打っていることを示す重大な兆候なのである。

トルコの国営アナトリア通信が伝えたインタビューの中でエルドアン首相は、シリア大統領の弟で第4師団司令官であるマーヒル・アサド氏が抗議デモへの残虐な対応に果たしている役割を示唆した。エルドアン氏がここまで率直かつ明確に名指しで批判を行うのは初めてである。シリアとの間に800㎞を超える国境を有するトルコの首相であるエルドアン氏は、シリア国内の実力者をめぐる事情について、他の人々が知らないことを知っているのだ。

私たちは、国内の情勢を制御するシリア指導部が早くエルドアン氏の忠告に耳を傾け、彼が主張した真剣な政治改革に努めてくれればよいのだが、と願っていた。決起して抗議デモに参加した大衆の、公正と民主主義と汚職対策を求める声に応える改革である。しかし指導部は強気の姿勢を露わにして、忠告に従うことを拒んだ。何故ならば、弱い姿を見せ、決起した怒れる民衆の圧力の下で譲歩することを望まなかったからだ。

昨日の「諸部族の金曜日」では20人もの人々が犠牲になった。今日は彼らの葬儀で何人の犠牲者が出るのか、神のみぞ知るところである。毎週金曜日ごとに流血の悪循環が広がり、国全体を奈落の瀬戸際へと引きずって行きつつある。それが奈落そのものではなかったとしての話だが。

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( 翻訳者:森晋太郎 )
( 記事ID:22850 )