イスラエル報道:ネタニヤフは我々をどこに導くか?
2011年07月13日付 al-Quds al-Arabi 紙


■イスラエル報道:ネタニヤフは我々をどこに導くか?

2011年07月13日『クドゥス・アラビー』

【同日付イディオット紙より訳出】

ベンジャミン・ネタニヤフ首相は近頃、一連の政治的偉業を成し遂げた。たとえば同氏の最近の訪米を考えてみよう。同首相の発言の重要性は限定的だった。ネタニヤフ首相が成功したことは、力の誇示だった。オバマ米大統領をを貶めることは付随的な結果ではなく、ネタニヤフ首相の主要な目的だった。

ネタニヤフ首相の訪米は、「政治的措置をイスラエルに課そうとするあらゆる試みはおそらく超えることのできない困難にぶつかるだろう。」という同首相の発言の内容とは関連がないことがはっきりした。もし今の米国大統領よりも強い大統領がいたとしたら、自宅の庭でのこのような厚かましさにきっぱり反論するだろう。しかし、オバマ大統領は強い大統領ではない。オバマ大統領が強くないのは、彼の性格が政治的反対派や広範な人民の動きに影響されたことだけが原因ではない。

事態は、オバマ大統領がイデオロギー的保守派からの反撃に対抗する上で弱体だ、ということ以上のものである。(オバマ大統領はこの保守性を享受ているだけでなく、彼自身がイデオローグの一人でもある。)オバマ大統領は揺らぐ大統領である。同氏の演説能力は驚くべき力である。しかし、その演説を実際の行動に移すことに関しては、めちゃくちゃである。

オバマ大統領の揺らぎには、医療保険法案、米国経済に仇なす貴族たちへの対策から、グアンタナモやその類の問題のようなブッシュ前大統領の政策への対応、リビアへの干渉を経て、中東に対する政治的イニシアチブ(実際にはイニシアチブを欠いているのだが)にいたるまで長きにわたる。この長きにわたる揺らぎが、オバマ大統領を自国の政治体制により恐れられることのない大統領にしてしまった。ネタニヤフ首相は自分の利益のために、同大統領の弱さへのつけ込み方をわかっていた。

同様に、ネタニヤフ首相の手法はトルコとイスラエルとの危機への対処でも示された。その対処では、ギリシャにある重要な船舶の関係でオバマ大統領の仲介を利用した。それどころか、9月のパレスチナによる一方的独立措置についても、同首相は機会を利用する能力がある。

実際的な政治の面では、中東の「諸国民の春」に対する高すぎて、狭量な希望が失望だったと認識されており、パートナーとともに仕事を再開する傾向にある。ネタニヤフ首相は欧米の指導者たちにとっては好みではないかもしれないが、少なくとも政治・経済的に安定した国家を代表する人物だ。少なくとも入植に関係しないことについて相互理解することのでき得る人物でもある。ネタニヤフ首相の国際場裏での成功と対置するものとして、イスラエルの社会的、政治的契約の弱体化が進行している。分離法は民主的な国家の性質を弱める一連の措置の最後の一歩にすぎない。彼らは、民主主義に敵対する勢力に甚大な政治的代償を支払っている。民主主主義に敵対する勢力は、愛国感情を憲政を打ち砕く斧として使用する。憲政は、前最高裁長官のアハローン・バーラーク教授が監督している(我々が承認すべき根拠なしで)。

これら全ての成功の問題は、事実をつぎはぎするという思考のありかたを示している点である。それは将来我々に非常高くつくかもしれない。アメリカ大統領を従わせるということは、同首相にとって革命的な実りのようなもので、政治的コストは非常に高い。おそらく、アメリカの野党勢力は同大統領の不幸を喜んでいただろう。しかし、米国の共和党の中ですら、(ネタニヤフ首相がやったように)米国で自分の家にいるかのように振舞う同盟者(もしくは保護国家)を好む大統領はいない。

ネタニヤフ首相がそれをつなぎ合わせて一般的な像を仕立て上げることに成功したかけらは、同首相にイニシアチブや驚きを打ち出す能力がないことを意味する。ネタニヤフ首相がつなぎ合わせる断片は、イスラエルが存在する地理的・政治的状況についての包括的な見通しの代替物にはなれない。(ガザ地区へ向かう)船団阻止についてギリシャがどのような支援をしようとも、イスラエルが西側世界に残る最後の占領体制だという事実は変わらない。それより悪いことに、イスラエルは人口的に併呑しようのない地域を併呑しようと試みる占領者なのである。

ネタニヤフ首相は(ガザに向かう船団への)妨害行為によって我々をどこに導こうとしているのだろうか?解決策は首相にしかない。方針をかえることは転落する方向で馬のたづなをひくよりよいのではないか?首相の考えの中にはないのだろうか?

ネタニヤフ首相の偉業には国内の面でも疑わしい色合いがある。民主主義を侵犯することは、アラブの中の異境に(影響が)及ばないだけでなく、この社会の重要な別の一部に(影響が)及ぶ(最近の重要な諸般の法律の刃の重要な部分は、ネタニヤフ首相に向けられている)。あなた自身が別の側の虚偽とつぎはぎすることに忙しくしていると、政治的、社会的調和を著しく弱体化させるという結果になる。破滅をもたらす勝利があるのだ。

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:松尾愛 )
( 記事ID:23269 )