■ソマリアの海賊が近隣諸国の経済危機を招く

2011年07月22日『クドゥス・アラビー』

【ベルベラ（ソマリア）、ナイロビ：DPA、ロイター】

アフリカの角[とよばれているアフリカ東部]の海域に入ると船の乗組員は非常に緊張した状態になる。

それは現在約600人がその地域で活動する海賊に誘拐されている状況を鑑みれば、驚くことではない。拿捕されなかった幸運の持ち主ですら、次は自分の番だと脅えている状況なのだから。

インド船籍の「サーフィーバー・アル=イブラーヒーミー」の乗組員が講じている措置は荒れるソマリア沖を航行する船の典型的な措置である。

ウスマーン・ダーウード船長は苦悩の色を見せながら「我々がソマリア沖にいるときは誰ひとり眠れない。海賊をずっと監視しているのだ。」と述べた。
サーフィーナー・アル=イブラーヒーミー号は国際的に承認されていないソマリランド共和国のベルベラ港に停泊している。船の乗組員は20人で、ソマリア人の港湾作業員が荷下ろししている間傘の下で座っている。

同船長は「船に海賊がよじ登ってきたか数え切れないほどだが、間違いなく20回はそういう目にあった。」とぼやいた。

しかし、今のところ同船長らは幸運であった。海賊たちは毎度、携帯電話や貴重品を奪うだけで満足した。海賊たちは、同船長らの船を後にして、別の場所で値打ちのあるものをまた探すのだ。

サーフィーナー・アル=イブラーヒーミー号の甲板に無秩序に積んである中古の家電・車両・トラック用のタイヤや、コメやその他の商品は、海賊にとって奪取する価値がない。

石油タンカーかコンテナ船かもしくは欧米の乗組員が乗船した船のほうが海賊にとっては身代金が得られるのでより魅力的なのだ。

しかし、ダーウード船長や乗組員たちは怯えたままでいる。船長はソマリア沖の航行の警備を引き受けている軍艦と無線連絡を続けている。軍艦は、疑わしい動きをする船の活動を監視している。航路のどこかで海賊による攻撃情報を聞くと、ダーウード船長は毎回自分たちの進路を変更する。

ベルベラ港のオマル･アブークー・ジャーマー副責任者は、海賊の活動が陸上にも影響を与えているとして指摘した。

同氏は、ベルベラ港には月に約30隻の[大型]船と50艘の小型船がに停泊するが、二年前は月間40から60船、60から80艘の小型船が停泊していたと推測した。

港の停泊料収入の減少は、この小国に残念な影響を与えた。この小国（＝ソマリランド共和国）は、依然として国際的承認を得ようと努めている。

ジャーマー氏は、「この国の収入の80％はベルベラ港からのものである。」と述べた。

ラクダやヤギ、羊がここからアラブ湾岸諸国に出荷される。ソマリランドはソマリア南部での内戦による暴力的な災厄からは逃れたかもしれない。しかし、未だに貧しいままで、失業率は約70％にまで達している。

ジャーマー氏は、「輸入品全ての価格が上昇した。同時に、港の船の数は減少した。このことは、高官たちのポケットに入るお金が減ることを意味する。」と指摘した。

荷下ろしなどの港湾労働者の多くは教育をうけた証明書を持っている。しかし、彼らは広範な失業状況のせいで他の仕事を見つけることができない。

ジャーマー氏は「我々は海賊を制圧しなければならない。」と語った。

ケニアもまた全ての輸入品にかかる輸送コストが高いせいで物価高に悩まされている。アメリカの「持続可能な経済に関する国立研究所」の行った調査によると、積み荷にかける保険料はわずか数年で平均40倍に上昇した。

石油価格の高騰は、多くの船舶にとってアフリカの角周辺で危険の少ない航路を余儀なくされる、という行為を経済的に割の合わないことにしている。

また、船がアフリカ東部からどれほど離れたかということに関係なく、船員の安全を保障するものがない。ソマリアの海賊が襲撃・略奪をした事例の多くの場合、被害にあった船舶はアフリカ沖よりもインドに近い地点で被害にあった。

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（ 翻訳者:松尾愛 ）
（ 記事ID:23395 )