今週表紙を飾ったエルドアン首相に対しタイム紙は、「トルコを影響力のある国に変えたエルドアン首相は、アラブの春の救世主となりうるか」と述べている。
タイム誌は、アメリカで発行されている世界的に有名な雑誌であり、今週その表紙をエルドアン首相が飾った。「エルドアン流」というタイトルのもとに、「トルコの親イスラム的指導者は、(世俗主義、民主主義、西欧主義)を志向するトルコを、この地域の影響力のある国へと変えた」と評したタイム紙であるが、「彼のやり方はアラブの春の救世主となりうるか」と疑問を投げかけた。タイム誌のボビー・グロシュ記者の記事で、注目されるべき論点は次の通り。
■まるでロックスター
赤いじゅうたんとは、儀仗隊による栄誉礼や礼砲が放たれる際に、政治家や君主らのために用いられるものである。エルドアン首相のために、エジプトは通常ロックスターのために行われる「歓迎(レセプション)」を用意した。トルコの首相は空港で「英雄」たるエルドアン首相のポスターを掲げる数千人もの群衆に、大歓声のもと出迎えられた。出迎えの際、魔法がかった言葉「エルドアン!エルドアン!本物のムスリム、臆病者なんかじゃない」と、人々は叫んでいた。さらには「トルコとエジプトは一つの拳のように結束している」・・・
全体主義体制は、しばしば貴顕らのために大げさで、偽りのーしかし自発的な「歓迎」をつくりだす。しかしカイロ政府はエルドアン首相のために大衆動員する必要はなかった。トルコのリーダーはアラブ諸国で本当に人気があるからだ。エルドアン首相は、2010年にメリーランド大学で行われたアンケートでは、アラブ諸国で最も賞賛されているリーダーとなった。エルドアン首相に対する人気はアラブの春でさらに高まった。若者がかつての「暴君」に対し立ち上がった国々では、多くはエルドアン首相が自国のリーダーになってくれればと強く望んでいる。有能な政治家は、その瞬間をどう利用するか心得ている。カイロ訪問は、エルドアン首相の北アフリカ訪問の第一歩であった。チュニジア、トリポリでも同じような歓迎があった。最後に、エルドアンがより大きなステージであいさつをする番がやってきた。一連の訪問は、エルドアン首相がアメリカ合衆国の中東政策を最近厳しく批判したことや、イスラエルと再燃した外交上の駆け引きなど意に介さないかのように、アメリカのオバマ大統領がエルドアン首相をこの地域の「偉大なるリーダー」と褒めたたえた国連総会でクライマックスを迎えた。アメリカ合衆国大統領とアラブの民衆が同じ考えを持っているわけではない。しかし、エジプト、チュニジア、リビアでエルドアン首相の名前を甲高く連呼する群衆のように、オバマ大統領もかつての独裁体制の燃えかすから生まれた新しい政府が、エルドアン首相が8年間で築いた(トルコの)体制のようになることを望んでいる。
■トルコの成功は、証拠となっている
エルドアン首相は、政敵をつぶし、敵を刑務所に送り、メディアを脅し、時折独裁者的な様子も見せてきた。しかし、彼の信奉者にとって、これらの欠点は実績によりカバーされている。ムスリムアラブ人にとってトルコの成功は、宗教的ルーツを断たずして、国を近代化させることができるという証拠である。西欧の観察者らにとっても、政治的イスラムが近代化の敵になる可能性はないという証拠となっている。しかし「エルドアン流」は、エジプト、チュニジア、リビアに、現在のトルコのような、政治的安定や経済力をもたらしうるだろうか? しかしアラブの春の多くの政治家らはトルコの指導者のようになろうとしている。エジプトのムスリム同胞団のリーダーであるエッサム・エリアン氏は私に、「エルドアン首相はスーツを着ているが、モスクで祈りを捧げている。これが、我々が親近感を持つ理由である」と語った。
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( 翻訳者:有田 潤 )
( 記事ID:24578 )