CHPデルスィム論争は、内部対立の表面化―対立理解への暗号は?
2011年11月19日付 Milliyet 紙
共和人民党(CHP)で勃発した「デルスィム論争」は、党内でしばらく前から密かにはじまっていた闘争を、表面化させた。「CHPで何がおきているのか」という問いに応えるには、6月の総選挙直後に立ち戻って考える必要がある。
CHPのトゥンジェリ選出の国会議員ヒュセイン・アイギュン氏が、デルスィム虐殺はCHPがやったことであり、アタテュルクも知っていたと発言したのをうけ、CHPで始まった論争は、党内で6月12日の選挙以後、密かに始まっていた闘争を、表面化させた。ある意味で、デルスィムは口実に過ぎない。
選挙後、組織担当の副党首の座から追われたギュルセル・テキン氏と近い関係にあるとされる「真のアジェンダ」という名のインターネットサイトには、ケマル・クルチダルオールCHP党首へ敵対する記事が掲載され、党内の闘争の根深さを示していた。「CHPで何がおこっているのか」という問いへの答を探すには、まず、選挙直後にはじまった論争を知る必要がある。それ構図は、次のように要約できる。
■アレヴィー論争
総選挙で傷ついたクルチダルオール党首がCHPの主要ポストについて行った二度目の刷新ののち、党内で最初におきた議論は、「アレヴィー派による支配」という点で発生した。党首が、党の鍵となるポストのひとつにニハト・マクタプ氏を、別のひとつにはエルドアン・トプラク氏をつけたことは批判の的となった。
■「党の中央に、CHP党員がいない」
クルチダルオール党首が党中央執行委員会に加えた人々がCHP党員でないという批判も、次におこった。シュヘイル・バツゥーム、ビンナズ・トプラク、エルドアン・トプラク、エムレハン・ハルジュのような人々が党の前面にたったことは、クルチダルオール党首に対する「党の中央に、CHP党員がいない」という批判を増加させた。
■クルド政策をめぐる亀裂
クルチダルオールが副党首に、セズギン・タンルクルをつけたことは、党内での最大の批判の的となった。クルチダルオール党首はタンルクルにクルド問題レポートを作成させたが、この報告書がタンルクル以外の執行部のだれからも指示されなかったことは、この問題の表れだった。
では、現状はどうなっているのだろうか。党内で起きている第二のデルスィム対立が表面化させた構図とその裏側は、次のように要約できる。
■バイカル元党首の影
トゥンジェリ選出のアイギュン議員によるデルスィム問題の提起に反発したハールク・コチを代表とする12人の国会議員は記者会見をひらき、声明を発表した。これは、次の党大会での党首選挙に向け、反クルチダルオール闘争に開始ボタンがおされたものとみられている。この声明にサインをした人の名前をみると、うち4人がアンタリヤ選出議員であることが目につく。ギュルクト・アジャル、ユルドゥライ・サパン、オスマン・カプタン、アリフ・ブルトゥである。かれらが、「バイカル枠」としてCHPの候補となったとの見方が話題になった。この声明の前に、アンカラで、バイカルやサヴに近いことで知られるシャーヒン・マング、ハック・シュハー・オカイ、ハールク・コチ、メルスィン選出議員のイーサー・ギョク、ムハッレム・インジェ副党首が行った会議に注目する必要があるだろう。
■ハールク・コチが党首候補?
かつてバイカルに対抗して党首候補となったことのあるハールク・コチが、次の党大会で、同じことをクルチダルオールに対して行うとの観測が流れてる。コチが反クルチダルオールの声を強める党内の反主流派のリーダーになろうとしている姿は、この情報を補強する。
■オンデル・サヴという要員
オンデル・サヴは、党事務局長の座から、ひと悶着の末はずされたのち、表舞台からは消えているが、クルチダルオールに反対する党内野党の行動は続けている。サヴは諸グループとコンタクトをとっており、クルチダルオールに対し強力な対抗馬を探しているとみられている。
■「まずは、党首候補を」
サヴとバイカルの間で、人を介した形での交渉がしばらく続いていたとみられるが、サヴはバイカルに、「まずは、自身が立候補はしないことを発表し、次に一緒に候補さがしをしよう」というメッセージを送ったといわれている。バイカルの方は、これにははっきりとは答えず、「推移を見守ろう」と答えるにとどまったとされる。サヴが、アンカラ弁護士会のメティン・フェヴズィオール会長を党首候補にしようとしたとのうわさも流れている。
■ギュルセル・テキンは何をしているのか。
CHP内の沸騰の中心にいる人物の筆頭には、もちろんギュルセル・テキンが来る。組織を操る手綱を、ある意味で、その手から奪われ、クルチダルオールとの権力闘争の第二幕をイスタンブル党支部長選出で演じたテキンが、イスタンブルを中心とした1勢力を作ろうとしているとの観測が流れている。テキンが、一部のイスタンブル選出議員やイスタンブル党員を動かし、シシュリ区長のムフタファ・サルギュルに近づいたとの情報が流れている。
■テキンに辞任の意思なし
CHPの党員議会の元メンバーであるエンヴェル・アイセヴェルがいいだした、「テキンとタマユルギルが、来週に行われる党中央執行委員会で辞表をだす」という説も議論を呼んでいる。この説は、イスタンブルの3つの区の党代表が交代させられた件で、テキンがクルチダルオールに示した抵抗からきている。しかし、テキンやその周辺は、この観測を否定している。
■党大会への計算
クルチダルオールは、2012年5月に開催しなくてはならないCHPの党大会を2012年秋に延期し、各郡の地方大会で党大会へ送られる代表メンバーを大幅に刷新しようと目論んでいる。党大会への闘争は、まず、郡や県の大会で試される。クルチダルオール陣営は、形骸化した代表団選出制度を根底から変えようとしている。バイカルとサヴはといえば、党内の反主流で名前の出ている人々を前面に出す、という構図となっている。
■12人と、1人1人面談
組織担当副党首のニハト・マルカプは、コチや、その他のデルスィム声明に署名した11人の議員と、1人1人面会するという話が伝わっている。「党の中央の許可なく声明をださないこと、非公開で行われた会議の内容をメディアに流さないこと」との警告が、この面談の主要な議題であったことは確実だ。
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( 翻訳者:松永拓人 )
( 記事ID:24592 )