同性愛者の兵役免除テーマの映画、公開へ―監督・出演者インタビュー
2011年11月30日付 Radikal 紙
同性愛者が兵役免除となるため取得が義務付けられている「ピンクの証明書」を題材とした映画が完成した。映画「兵役不適合者(Çürük)」の出演者と監督と対談した。
「兵役不適合者(Çürük)」(注)は今年初めて開催されたピンクライフ・クィル・フェスティバル(Pink Life Queer Festival)で最も話題となった映画の1つだ。同性愛者がトルコ国軍健康能力規定で「性障害」として承認され、兵役免除の理由として認められる という事実を題材としている。この映画は、証言をおこなった同性愛者らの個人的同意を得て、トルコで初めて公開された。同性愛者が「ピンクの証明書」として知られている「兵役免除該当証明書」取得にあたり経験した困難なプロセスを描いており、自身が証明書を取得する際の話を語った同性愛者(匿名)とドイツ人監督ウルリケ・ ボフニス氏と対談した…。
【出演者へのインタビュー】
-映画出演に至るまでのプロセスを説明していただけますか?
トルコで「オッケー、いいよ」と最初に言ったのは私です。初めは偏見を持っていました。ドイツから来た人が、同性愛を扱ったオリエンタリスト的な映画を撮るのだと思いました。しかし後に、彼女がやりたがっていたことの重要性を理解したのです。さらにトルコではこれを問題視しても、誰も映画を撮ることはできないため、外国人が撮影するほかなく、またこれは世論形成のため重要であると考えました。そしてお互いに信頼関係を築き、出演することを決めたのです。
-この問題について話すことが難しいというのは本当ですか?
当然です!何よりもまず法的に問題となりますし、罰せられるのですよ。しかし私が最も怖かったのは、この映像を誰かが持ち出し、同性愛者の気持ちを全く理解しない見知らぬ人の手に渡ること、その後問題が起こり収束がつかなくなることでした。しかしウリ(監督)は製作のすべての段階で相談をおこない、プロジェクトに対する信頼を確かなものとしました。
-証明書取得までのプロセスはどうでしたか?
容易ではありませんでしたが、家族が最大の支援者となってくれました。そのため、他の多くの(同性愛者の)人よりは困難は少なかったかもしれません。誰に何て言い訳しよう、家族は何と言うだろう、といった心配はありませんでした。
-証明書取得には証明写真が必要となりますよね?
はい、しかしそれも既に改正されました。記憶の限りでは、「兵役免除該当証明書」は国外で2005年に初めて問題となりました。この不合理な人権侵害が続いていたため、一連の決まりに対し改正が行われました。写真による証明義務が廃止されました。これは医師の判断に委ねられました。証明用に、アナルセックス中に撮影されたような写真ではなく、化粧をした写真の提出が求められています。
-写真を提出しましたか?
いいえ、提出していません。手続きが行われる病院で、今は写真提出の必要がないということを知っていました。すべては申告のみで認められており、証明する必要はありませんでした。唯一肛門診察の問題がありましたが、私が証明書取得の手続きをした時期を含め、病院はもう長いこと、この診察を不要だとしています。
-化粧をした写真の提出についてどうお考えですか?
滑稽で時代遅れであると考えています。2011年に、世界の中でもあらゆる分野で比較的発展した国で写真提出が未だ求められていることがとても滑稽に思えます。
-首相が良心的兵役拒否は議題になっておらず、これは兵役の重要性を傷付け、悪用されると述べたことについて、どうお考えですか?
AKPや首相が、トルコが「民主化した社会」である理解に基づいて政治を行っていると繰り返しいうのであれば、まず最初に国民の個人の権利に敬意を払うべきです。良心的兵役拒否は(当然の)人権です。武器を持つことや戦争を嫌がる人もいます。このことが軍の評判を傷付けたり、軍の怒りを買うことはありませ ん。この民主的権利を、まずは首相自身が保護するべきです。政府が無視しているが、避けることのできない数多くの問題があります。人々は民族の起源、ホモフォビア、トランスフォビア、女性であること、その他多くの存在的特徴が原因で、暴力の犠牲となっています。暴力が主役を演じるようなこの状況は一刻も早く終わるべきです。
【監督へのインタビュー】
-この映画を撮ることをどのように決めたのですか?
2008年~2009年の間、ビルギ大学でエラスムス(欧州の留学制度)を利用し留学していました。兵役免除該当証明書取得と同性愛者の証明過程で起こっていることを聞いて、驚きました。異性愛者も同性愛者もこのことについての情報を口にしないということに気付きました。トルコにおける男性中心主義の原因も気 になっています。道では常に嫌な目にあっていました。この事実を共有できないという恐怖もまた、このプロジェクトを実行するきっかけとなりました。
-困難はありましたか?
プロジェクトに参加してくれる人を見つけるのがとても難しかったです。刑法301条が原因で、「軍隊を公然と侮辱する」ことを恐れているため誰も話したがりませんでした。参加者のうちの1人は「同性愛者だからではなく、問題が兵役に関するものであるがために、顔を見せることができない」と言っていました。 出演者の1人はこの問題がオープンでなければならないと信じ、顔を見せようと言ってくれました。しかし彼の顔を公表することはしませんでした。彼の身に何 かが起こってほしくはなかったからです。
[訳者注] 本来の意味は、「腐った」という意。
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( 翻訳者:釘田遼香 )
( 記事ID:24707 )