シリアに流言飛語の戦争あり
2011年12月5日 『アル=ハヤート』
【ニコシア:AFP】
シリアでは、3月半ば以来本当の武器を使用する戦争が行われている。これこそ最悪で、数千人の死者を出している。しかしながら、言葉の戦争もこれと同様繰り広げられており、体制側も、反体制側も支持者の士気を高揚させ、敵方を貶めるため言葉の戦争を利用している。
デマの中には、目撃者やビデオ映像をめぐる競合がある。これらは、ゲームや歌の表現を改変して使われている。独立の報道が禁じられ、外国人記者がっめったにいないか移動に苦労しているかしている国でも、伝達手段はたくさんあるようだ。
2日前(3日)マーヒル・アル=アサドが暗殺されたとのデマが広まった。同人は、シリアの大統領の弟であり、第4師団の司令官である。問題のデマは、「マーヒルはアル=メッザの軍事空港で部下に殺された」というものである。
また、アル=ラーザキーヤ県で将校や大使複数が政権を離反したとの話があったが、後にこれらは全て正しくないことが判明した。
一方、当局側も拱手傍観しているわけではない。政権幹部は、イスラエルの将校やサラフィー主義者が沿岸部のバーニヤース市で共謀しているとか、ドイツの船が「テロリスト」に武器を引き渡したとか述べている。
また、彼らは、スンナ派の都市であるヒムス市の街区の一部を、(アフガニスタンの)カンダハール市になぞらえている。
シリア人権監視団のラーミー・アブドゥルラフマーン代表は、「これは報道戦争である」と述べた。
匿名の女性実業家は、「我々は、閉ざされた体制の中で生きてきた。この体制の中には、公式の報道機関しかなかった。現在は、情報が氾濫している。自分はテレビやアラビア語の衛星放送を見ると、これらが同じ国のことを報じてはいないのだという印象を持っている。」と述べた。
金曜日(2日)、シリア国営放送はヒムスやハマーで礼拝を終え静かに帰宅する礼拝者たちの模様を報じた。両市はシリア中央部にあり、抗議行動の牙城と化している。しかしながら、それと同時にあるアラビア語の放送局は、デモ参加者や、体制に敵対する軍人や集団の映像を放送した。
抗議行動の先鋭である現地の諸調整委員会は、連日治安部隊に射殺された者の数を数え上げる。一方、シリア・アラブ通信社(SANA)は、軍人の死者だけに言及する。
諸調整委員会にとっては「武装集団」がいるのではなく、「離反兵士」が存在するだけである。反対に、SANAは抗議行動を平和的抗議とは考えず、「テロリスト」と考える。
国連は、今般の弾圧で4000名が死亡したと述べているが、体制側は「テロリスト」が治安部隊要員940名を殺害したと強調している。
シリア情勢の専門家であるトーマス・ビヤーリー氏は、「公式見解は、状況に関し完全な嘘の上塗りである。一方、「アル=アラビーヤ」、「アル=ジャズィーラ」両放送局が報じていることは、“誇張された状況”と呼ぶべきものである。実際、両放送局が報じた事件の多くは事実であるが、数値や影響が大いに誇張されているのである。」と述べた。なお、同氏は英国のエジンバラ大学で教鞭をとっている。
一方、死者の映像については、これが報道上大きな地位を占めている。反体制派は、殴られ、拷問され、殺された人々の厳しい映像をしょっちゅう流している。
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( 翻訳者:高岡豊 )
( 記事ID:24760 )