ボスフォラス第3大橋に応札なし―企業側「入札延期」要請
2012年01月10日付 Hurriyet 紙
イスタンブルの海峡にかかるボスフォラス第3大橋建設を含む全長414kmの北マルマラ高速道路建設の入札に対し、企業18社が条件文書を受領したが、全社が応札を見送った。一部の会社は交通省に「ヨーロッパの経済危機により資金調達が難しい、入札を半年延期させるべきだ」と呼び掛けた。(しかし交通省は)それに答えなかったため、企業側は応札を見送る選択肢を選んだ。
イスタンブルのボスフォラス第3大橋建設を含む北マルマラ高速道路建設の入札のため、国内・国外の企業18社が条件文書を受け取っていたにも関わらず、応札を表明する企業は現れなかった。道路総局の副局長で北マルマラ高速道路入札委員会代表のイフサン・アクビュユク氏は、北マルマラ高速道路の入札が、(企業が)名乗り出なかったために、見送られたと発表した。交通省の管轄下で行われているこの入札に大きな注目が集まっていたにもかかわらず、(企業の)応札がなかったのには、ヨーロッパの経済危機による不透明感とそれに伴う資金調達への懸念が影響したと見られている。
■半年間の入札先延ばしを要請
入札のための書類を受け取った企業18社のうち約半数が、交通省に対し「終わりの見えないヨーロッパの経済危機は、予想とは逆に2012年も市場の先行き不安の原因となっている。この不安の中で資金調達は困難になり、さらには(プロジェクトの予算も)あまりにも高額であるために、半年間の延期を要請する」と申し出ていた。しかし交通省はこの要請を聞き入れず、過去にも1度延期されたことのあるこの入札を、決められた日付通りに実施することを選んだ。
■経済危機を治す薬は投資
ビナリ・ユルドゥルム交通相は、昨日、応札期間が終了する数時間前に、次のように談話を発表した:
「経済危機を治す薬は、投資である。2008年の危機の時も私たちはこう言ったし、2009年にもこう言っていた。今、トルコに経済危機はない。ヨーロッパでは経済が停滞しており、経済危機と言われている。そのためEUの中心的な国々は、対策に追われている。(しかし)幸運なことに、トルコの金融システムは極めて強固なものである。経済危機のリスクとは無縁だ。せいぜい、「トルコにはどうして経済危機がないんだ」といってパニックになっている人々がいるくらいだ。そうした人々には気の毒というしかないが、トルコは、経済危機への対応を心得た国だ。それはこの9年の間に証明されたし、今後も示していくだろう。」
■過去にも入札先延ばし
北マルマラ高速道路プロジェクトは、2011年3月8日に発表され、建設・運営・返還方式の事業(注)として、同年8月23日に入札が行われることが発表された。しかしイスタンブル・ボスフォラス第3大橋建設を含む、北マルマラ高速道路プロジェクトの入札書類を受領した企業が延期を要請したことを受けて、入札日は2012年1月10日に延期されていた。
[訳者注:民間企業が建設した上で第3セクターが一定期間を運営し、経費の償還後に国家に返還する形式の公共事業を言う。]
■2番目に大きなプロジェクト
世論では通常、ボスフォラス第3大橋建設入札で知られるこのプロジェクトは、実際には第3大橋によりアダパザルとテキルダーを結ぶ全長414km、総工費50億ドルの「北マルマラ高速道路プロジェクト」であり、全長421kmの「イスタンブル―イズミル高速道路プロジェクト」に続き、トルコで2番目に大きな建設・運営・返還型プロジェクトである。
■くよくよしたりはせず、2つ目のプランを提案する
ユルドゥルム交通相は「応札が無くても何も変わらない。もう一度方針を固め直し、2つ目のプランを提案する。立ち止まってくよくよしたりしない。私たちは方針を決め、それを推し進めていく」と話した。
■橋には車道と鉄道が走る
ボスフォラス第3大橋は、双方4車線の自動車用道路の他に、鉄道複線も走ることが計画されている。全ての道が同じ面を走るのか、それとも2つの階に分かれて走るのかという質問に、ビナリ・ユルドゥルム交通相は次のように答えた:
「今のところ具体案は決まっておらず、単層構造になるか、2つの階に分かれて走るのかというところまでは至っていない。新しく建設される橋には車両と鉄道両方が走ってほしいと思っている。世界には2階建の橋もあるし、単層構造で同じことを実現しているプロジェクトもある。」
■入札委員会委員長「4時、応札なし」
道路局の副局長で北マルマラ高速道路入札委員会委員長のイフサン・アクビュユク氏は、応札がなかったことについて、次のように述べた:
「委員会として、入札に関する準備はすべて行い、入札を実現するために会場に入った。14時が入札の期限だったが、この時間までに入札者はなかった。参加者のいない入札会が終わった。今後は新しいプロセスで再開する。今後は委員会は決定を文書で上部機関に送信する。これからのプロセスの中で(入札委員会は)交通省、総局の指示のもと動いていく。」
■STFA投資ホールディング:「資金問題が企業を躊躇させた」
STFA投資ホールディングのイルケル・ケレムオール会長は、初めは第3大橋入札に関心があったが、その後関心を失ったと話した。ケレムオール氏は、このように語った:
「入札条件文書によるとその規模が50億、60億、あるいは70億ドルに上るこのようなプロジェクトにおいて、資金調達は最重要課題である。私たちはプロジェクトに興味を持ち、国内外の企業と協議した。特に資金調達の問題に関して企業が躊躇する場面を目撃した。資金調達のリスクや困難は、トルコだからというものではない。ヨーロッパの銀行は毎日格付けを落としている。(そのため)誰もが、眼前の問題の対応に追われている状況にある。資金調達の難しさはこのせいである。」
■ヴァルヤプ社:応札はしなかったが興味はある
ヴァルヤプ社のCEOエルディンチ・ヴァルルバシュ氏は、ボスフォラス第3大橋の入札条件書類を受け取ったが、その後の調査でこの条件での応札を諦めたと話した。またヴァルルバシュ氏は入札には今も関心があると話し、応札しなかった理由を次のように語った:
「私たちは、実施条件書類を調査したのち、3つの基本的な理由で応札を諦めた。1つ目の理由は、条件書類に書かれてある保証が私たちにとって機能的ではなかったこと。2つ目の理由は為替リスクで、3つ目は世界に広がる(経済危機の)事態である。交通省は近年、素晴らしい仕事をしている。延期要請にもかかわらず入札を実行したが、まもなく何か発表があるだろうと思う。ボスフォラス第3大橋はトルコにとって最も大切で、最も威信あるプロジェクトだ。絶対に私たちは参入したい。私たちにとって誇りとなるプロジェクトだ。交通省が2012年内にこのプロジェクトに新しい試みを取り入れることを信じている。もしそのようなことがあれば、私たちは必ず参加する。」
■ボスフォラス第3大橋の入札候補企業
マパ建設、ジェンギズ建設、パルクホールディング、コリン建設、STFA建設、ユクセキ建設、ヴァルヤプ、ヌロル建設、ギュルサン建設、三菱(日本)、IHI(日本)、モスコヴィスキー・メトロストゥロイ(ロシア)、ストゥラダグAG(オーストリア)、NPOモストヴィク(ロシア)、大林組(日本)、ECC建設(スペイン)、アスタルディ(イタリア)、伊藤忠商事(日本)
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( 翻訳者:池永大駿 )
( 記事ID:25140 )