■革命のアーティストたち：不正を拒んだ絵筆

2012年2月1日　『アル=アハラーム』

【ハナーン・アル=ナーディー、ラーニヤ・アル=ディマーシー、サルワ・ファウジー】

一瞬一瞬、一時間一時間が積み重なり、月日が流れ、一年が過ぎた。一年という歳月はまた、エジプトの歴史に書き加えられた新たな数行でもある。一歳の誕生日を迎えた今も、革命は正義を求め、若者も大人も、子供も女性も、命を投げ出す覚悟で自由を求め、アーティストたちの絵筆は不正を拒み続けている。芸術は民衆の心情を描き出し、芸術によって出来事は記録される。発生当初からアーティストたちは革命に参加し、エジプトの大地にその血が流れた全ての殉死者［シャヒード］たちへの芳しい挨拶を我々が忘れぬよう、祖国に命を捧げた者もいた。革命の最中に殉死を遂げたアフマド・バスィユーニーとズィヤード・バキールもそうした一人である。

32歳の［ヘルワン大学］芸術教育学部講師だったアフマド・バスィユーニーは、1月25日革命の殉死者の一人である。彼は2011年1月28日の「怒りの金曜日」に、狙撃者の銃弾により、妻と二人の息子を残して命を落とした。エジプトは、バスィユーニーが亡くなる前に準備していた彼のプロジェクト「同じ場所を走り続けて30日間」を携えてヴェネチア・ビエンナーレに参加した。エジプトのパビリオンは、最大の観客動員数とメディア取材を経験した。

37歳のグラフィックデザイナー兼造形アーティストであったズィヤード・バキールは、オペラハウスで働いていた。彼は「怒りの金曜日」に姿を消し、40日後にゼインホム遺体安置所で胸に弾丸を受けた姿で発見された。ズィヤードは妻と三人の幼い子供たち、両親を残して殉死した。母親は彼の作品を集め、オペラハウスの敷地内にあるハナーギル・ホールで先週、展覧会を開いた。

【アーティストと革命】
多くのアーティストが、革命の事跡を記録するために作品を発表した。「シャヒード（殉死者）」と題した絵画作品で、エジプトのために自分の命を捧げた人々を表現したアミーン・ライヤーンはその一人である。彼は表情や姿かたちのはっきりしない多くの人々に担ぎ上げられた殉死者を描き、背景には革命の火が燃え盛っていることを象徴する赤を使った。一方、ターハー・カルニーは「革命」と題した16枚のパネルから成る巨大な壁画作品を作り、革命における全ての事跡と、崇高なるエジプトのために自らを犠牲にした革命の英雄たちを描いた。サラーフ・アナーニーは、「私は国民だ」という題の油彩画を作成し、革命に関する叙事詩を形作るイコンのような場面を並べることで、革命中の出来事を視覚的に物語った。下の方に描かれたインターネットを操る若者たちから始まって、エジプト革命の際立った場面が描かれていき、エジプト庶民の家族や革命派の若者達からなる群衆やムスリムとキリスト教徒の国民の力の団結と共に、殉死者たちが描かれている。ファリード・ファーディルは「エジプトは革命を守る」と題した絵画作品で、エジプトを軍を見張っている女性になぞらえている。女性は生まれたばかりの革命を護っており、新しい時代の始まりを知らせる旗が彼女の周囲ではためいている。同様に、ターヒル・アブドゥルアズィームは、「自由」と題した油彩画で、古代エジプト美術に着想を得た抽象的な構図を用いつつ、女性が革命後の新しい未来を目指し、［革命の］犠牲者たちの名前で満たされた台座を滑り降りて脱出する姿に自由を象徴させた。イスマト・ダーウェスターシーは「革命前後」と題した展覧会を開き、15枚の油彩画を通じて事態に対する自身自身の見解を表現した。ムヒーッディーン・フセインも幾つかの作品を通じて、革命から受けた印象を表現した。その一つである「守護されたエジプト」と題された絵画作品にはエジプトの国旗の色で一群の花が描かれ、その上にエジプトを常に、そして永久に守護している神の名が掲げられており、最後に「エジプト万歳」という言葉が書き込まれている。これ以外にも数多くのアーティストたちが、それぞれの観点とスタイルで、革命の事跡を記録に残そうと作品を制作した。そのためこれらの作品は、いまだ歴史がその地点で止まっている[革命の]日々の証言者であり続けている。

[革命一周年を]祝うにせよ、革命の完遂を目指すにせよ、明日は必ずやってくる。恐怖の時代が過ぎ去ったことは確かであり、我々は皆、最愛のエジプトのためによりよい明日をあきらめない。誇りある生を求めた殉死者たちの願いを胸に抱きながら。「パン、自由、社会正義」の叫び声は未だ響いている。

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（ 翻訳者:岸本聖美 ）
（ 記事ID:25412 )