社説:アラブ軍はシリアへ?
2012年02月14日付 al-Quds al-Arabi 紙

■社説:アラブ軍はシリアへ?

2012年02月14日『クドゥス・アラビー』

シリアへの平和維持のための他の国際的なものも含めたアラブ軍の派遣をアラブ連盟が決めたことは、様々なアラブや世界各国の大きな関心を巻き起こした。しかし、それを阻止しようとする、ロシア・中国の二重の拒否権のせいで、国連安保理の扉を通してこの計画を進めることは危険に満ちている。

最近のカイロでの会合でこの提案を採択したアラブの外相たちは、前回彼らが起こした悲劇的な誤りを正したいと考えた。彼らは前回、ロシアや中国の指導部との協議や調整をせずに、安保理に行ってしまった。そういうわけで、アラブ首長国連邦(UAE)のアブドッラー・ビン・ザーイド外相をロシアのセルゲイ・ラブロフ外相に面会するために派遣した。ザーイド外相はラブロフ外相に支援を求めた。

ラブロフ外相は、「ロシアはアラブの提案を検討するだろう。」と述べた。この回答は相当程度外交辞令を含んでおり、この検討にどれほど時間がかかるか誰にも分からない。しかし、ロシアの返答の性質について分かることは、ラブロフ外相が記者会見で宣言したことである。同外相の発言は、非常にはっきりとしたものだった。つまり、国際的アラブ平和維持軍の派遣の前に、まず最初に維持すべき平和を作り出さなくてはならない、という内容であった。

ラブロフ外相が求める平和とは、体制からシリアの自由軍や一部の武装集団側まで全ての当事者による暴力行使が完全に停止することである。その武装集団については、外国の特派員たちがそれについて最初に話した後、シリアの反体制派の報道官らはも今日その存在を否定することができない。シリアの体制に属する軍や治安部隊の人的損失の増加は、政権側の軍隊による銃撃で命を落とす市民の数と比べても、当然に異なっている。

西欧諸国の外務大臣、特にイギリス・フランス・ドイツの外相は、シリアへの平和維持軍の派遣というアラブの計画を歓迎した。しかし、イギリスのヘイグ外相は、「アラブ軍のこの任務に参加するいかなる外国の軍隊も、西欧以外の別の国籍の軍でなければならない。」と語った。これは言いかえると、イギリスやフランスドイツは(シリアでの平和維持軍に)参加しないだろうということである。

ヘイグ外相は、常にアメリカの思考を反映している。提案された平和維持軍に、いかなるイギリス軍が参加することも拒否したということは、アメリカもまたそれには参加しないだろうということを意味するかもしれない。このことは、根本からこの計画を弱体化させるということである。

アメリカやヨーロッパがシリアへの平和維持軍派遣を恐れているのはもっともなことである。この計画を成功させるためには、基本的な条件を満たさなければならない。その条件中で最も顕著なのは、平和維持軍に法的裏付けを十分与える国際的決議の発行、平和維持軍にに参加する兵士の生命を守るために必要な安全保障にかかわることを満たすために、全ての当事者の合意に基づく政治的合意に達するということである。そして、現時点では上述の2つの条件が1つも満たされていない。

「イスラーム過激派諸団体がシリア国内に侵入していて、彼らが政権側の軍隊や一部の軍事組織に対する軍事活動に参加している。その中には、「アル=カーイダ」に属する分子がいる。」というアメリカの諜報レポートは、おそらく欧米の安全保障に関する恐怖を倍増させただろう。

「アル=カーイダ」のアイマン・アッ=ザワーヒリー指導者はビデオを公表した。その中で、同氏は不信心な体制と戦う「アル=カーイダ」に属する分子がシリアに存在すると明言した。また、自身の支持者に対しこの体制の放逐を望んでいるシリアの同胞たちの支援に乗り出すよう促した。このビデオテープはアラブ連盟の提案と明らかに時期を同じくして公開された。このことは、アラブ提案の成功に数々の疑問符を投げかけている。

シリアは未知の方向にむかっている。アラブ連盟はその立場を救うことができないように思われる。そして、アラブ連盟は、政治的合意望んでいないし、シリアの消耗した流血を止めるために軍事的に単独で介入する能力もないように見える。ここにはシリアの人民と体制のジレンマと、それと同時に、その地域全体のジレンマがある。

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( 翻訳者:松尾愛 )
( 記事ID:25562 )