社説:アフマディー・ネジャード大統領による核開発への挑戦
2012年02月15日付 al-Quds al-Arabi 紙
■社説:アフマディー・ネジャード大統領による核開発への挑戦
2012年02月15日『クドゥス・アラビー』
イランのアフマディー・ネジャード大統領は昨日[14日]、イラン国営テレビによって放映された祝宴において、新たな3つの核計画を開始し、医療研究炉で自国製の核燃料棒を最初に使用する過程を自ら監督すると発表した。これはイランの欧米諸国に対する挑戦を反映した措置である。というのも欧米諸国は、イランの核開発の野望を挫けないにせよ、阻止したいと考えており、原子炉や核計画に関わるあらゆる事柄を標的としているからだ。
この発表は、米国とイスラエルをはじめとする西側諸国の怒りを買った。とりわけ濃縮度20%のウラン濃縮活動を迅速化する新たな方法を用いた遠心分離器が、これまで知られていなかった新たな場所に存在することが明らかになったことから、なおさらであった。
アフマディー・ネジャード大統領が西側諸国、特にイスラエルに対して主張したいのは、イランがウラン濃縮計画を継続し、ロシア等からの支援を受けずとも核燃料棒を思い通りに製造できるということだ。また、イスラエルがこれらの原子炉に対する攻撃を望めば、倍返しの報復に直面することになろう、ということだ。
このイランの挑発的な行動は、湾岸諸国の緊張をいっそう煽ることになるのは間違いない。同諸国の海域には、あらゆる規模の艦隊や空母、戦艦が集結している。しかし、今のところ戦争の可能性が高まるのか、回避されうるのかは不明のままだ。
米国は、大統領選挙の年に、またイラクと同様にアフガニスタンからも米軍を撤退させる前に、戦争を望んではいない。というのもこのような軍隊は、破壊的な攻撃の対象にも人質にもなり得るからだ。それ故にバラク・オバマ大統領は、イスラエルに対して、米政権との事前の調整なしにいかなる軍事的な冒険へ踏み出すことを阻止すべく圧力を加え続けていると言われている。
イスラエルは、軍事的均衡が崩れた場合には、近隣諸国に対する優勢が奪われることになると感じている。また、イランの核計画を頓挫させるべく先制攻撃を仕掛ければ、高い代償を支払いかねないとも感じている。実際イスラエル情報機関の推定によれば、現在大小様々な約20万発のミサイルがイスラエルに対して向けられているのだ。
一部には、イラン人はかかる挑発的な行動をとることで、心理戦に乗り出しているのだという議論も存在するようだ。イラン人は自分達の発言が本気でないと分かっていながら、ホルムズ海峡に戻る米空母を攻撃するぞと脅したというわけだ。ご覧の通り、米空母エイブラハム・リンカーンは何の問題なく海峡を通過している。イランは戦争が及ぼす波紋の責任を負ったり世界全体を敵に回さないためにも、自ら戦争を始める気はない、というわけだ。
シリア情勢と同じく湾岸地域でも事態は混迷化している。戦争の可能性は日に日に増している。レオン・パネッタ米国防長官は、イスラエルが今年の5月か6月の間にイランに対する攻撃を仕掛けると予測した。それならばこの地域の人々は、もしその兆候をはっきりと見出した場合には、避難所に向かう準備をしなければならない。
イラン大統領が、今次計画の発表に際して、欧米諸国の反応を計算していなかったとは思えない。同大統領と彼を支えるイラン指導部は、いかなる措置に踏み切る前にもしっかりと計算していることは確かだ。その一方で、とりわけ国際原子力機関(IAEA)の報告発表が近づく中、イラン指導部は戦争が迫っており、もはやそれを食い止めるいかなる希望もなくなったという確信に達した可能性もある。多数の人々は、IAEAが、イランが軍事目的でのウラン濃縮を実施していると確証する報告を提出すると見込んでいるのだから。
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( 翻訳者:松尾愛 )
( 記事ID:25576 )