社説:シリアでの爆弾「テロ」
2012年03月18日付 al-Quds al-Arabi 紙


■社説:シリアでの爆弾「テロ」

2012年03月18日『クドゥス・アラビー』

シリアでの殺害報道は様々にあり、この数日その情報源も様々である。シリアのインティファーダの初期におけるニュースは、非武装の市民を標的にした治安部隊の銃に倒れた複数の犠牲者の数に限られていたが、現在は、ダマスカスとアレッポの中心部の治安機関の建物を標的にした自爆攻撃についての報道や、シリア自由軍の活動や、予測される治安部隊や政府側の軍隊の人的損失が伝えられる。

昨日[17日に]、爆発物を搭載した自動車による激しい爆発がアレッポの住宅地域でおこり、多くの死者と負傷者がでた。この事件の1日前には、自動車爆弾による2度の自爆攻撃が起こっていた。いずれも、首都ダマスカス近くの二つの治安機関を狙ったもので、27人の死者と数十名の負傷者を出した。

シリア当局は、これらの爆破事件について、国外から資金や武装の援助を受けている「テロ」集団による犯行だと述べている。シリアの新聞は、サウジアラビアとカタール両国が事件の背後にいることを疑い、複数の犠牲者が命を落としたことに対する責任が両国にあるとするとともに、報復をすると脅した。

シリアの反政府勢力は、これらの爆破事件の背後には政権が存在し、彼らのイメージを歪め、シリア国民の間に恐怖を広めようとしているという古い意見を主張している。国民のなかには、特に宗教的・民族的少数派でシリア社会に編みこまれた集団、例えば、アラウィー派に加えて、キリスト教徒やドルーズ教徒、クルド人や、イスマーイール派の人々がいるが、彼らにいかなる少数派も、体制が崩壊した場合にはこれらの「テロリストたち」の標的になるであろうというメッセージを送ったのである、というのだ。

アメリカ政府は、約1カ月前に起こった最初のダマスカスの爆破事件について、「アル=カーイダ」に属する集団によるものだと明らかにしたが、一方高官らは、シリアの反政府勢力の武装化、特にシリア自由軍の武装化を表明し、こういったグループの手にそれらの武器が渡ったことを恐れた。

シリア国内に、体制打倒のために活動する過激派集団が存在することは、ありえないことではない。むしろ、一部の者は、その存在は間違いないとみている。リビアの外務大臣は一部のリビア人の過激派集団が現在シリアの反徒側について戦っていると認めた。しかし、同大臣は、彼らが政府の認知なしに、もしくは政府との調整なしにシリアへと向かったと補足した。また、様々なニュースが、イラクのスンナ派トライアングルの戦闘員がバッシャール・アル=アサド政権打倒の武装革命に参加するためシリア領内への侵入を伝えている。しかしここから短絡的に、「アル=カーイダ」のアイマン・アッ=ザワーヒリー指導者の公開したビデオテープに飛躍することはできない。このテープの中で、同氏の言葉によれば「不信心な宗派主義」体制と戦うためにシリアへと向かうよう支持者に対し促した。

シリア政権は、統治し続けるためにはあらゆることをするのをためらわないだろう。その中には、過激組織をでっち上げ、あちこちで爆破を実行することやそれらの組織と爆破事件を結びつけることも含まれる。しかし、多くの安全保障の専門家らの見地からすると、シリア政権が平和な自国の場所を爆破し、同時にその威信を損なうようなことをアピールすることはありえない。なぜなら、この威信が、基本的にシリア政権に残された全てであり、体制の威信、つまり治安の威信を失うことは、体制の存続のために最も重要な基礎をシリア政権は失うことを意味するからである。

シリアは、拙速に武装化の中であおられる血みどろの内戦へと押し流されている。この背景にはシリア政権打倒を急加速させたがっている湾岸諸国の存在があり、この点について彼らの意図は隠されていない。少なくともリビアで起きたような外国の軍事介入は現時点ではありえそうもない。それゆえ、体制を弱体化させるゲリラ戦が厳しい経済制裁ともどもに起こる傾向がみられるが、経済制裁はシリア経済を疲弊させ、シリア政権と国民双方を窒息させる。

このような傾向がどれほど成功するかを予言することは難しい。予言しうるのは、シリアは爆破と血の海へと向かっていると言うことで、そこで引き起こされるのは、命を落とす罪もない犠牲者の数の倍増なのである。

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( 翻訳者:松尾愛 )
( 記事ID:25849 )