ジェム・ユルマズとの食にまつわるインタビュー
2012年05月06日付 Hurriyet 紙
ジェム・ユルマズ(左)
ジェム・ユルマズ(左)

彼のステージでは食事のネタが多くの場面を占めている。もちろん私もその場を共有したことがある。ステージでは私に説明しながら、観客に次のように問いかける。食事を遠慮するような美食家がいますか?と。今回私はジェム・ユルマズを前にし、こう尋ねた。サラダにトリュフはかけますか?お金持ちになったらキャビアばかり食べるの?ダイエットしてる?うちで台所に立つのは誰?などなど。

・自宅で料理はする?
-まさか。25年前に学校で習ったときにおもしろいスープを作ったのを覚えているよ。でも振り返ると、料理は学校で勉強している一時期に宿題みたいになっていたんだけど、及第点を取ってからはもちろんキッチンのことは忘れてしまった。実践はぜんぜんだめだけど、知識の方はまだましだった。

・奥さんの料理の腕はどうですか?
-最高だよ。どんな料理も美味しく作ってくれる。たとえばラムチョップもすごく上手だし。最近では僕はヘルシーな食事を心がけているんだ。もう一区切りついた年齢だから、15,16歳の頃から夜遅くまで働いていて、それで不健康な食生活だったけど、今はもう妻が食事のバランスを管理していて、うちではかなりヘルシーなメニューを作ってくれるよ。

・男の人はなぜ台所に立ちたがらないの?
-その問いは僕にとっては本当に古い考えに聞こえるし、そう考えるのはおそらくもう間違っている。僕の世代は大半の男性は炊事にすごく興味があると思う。女性だけがする仕事じゃないのは言うまでもないけど、料理を作るのはちょっと辛抱強さのいる仕事なんだ。男というのは少しせっかちだから。ヤプラック・サルマ(葉に包んだ前菜)を包んで作るのと食べるのとでかなりの時間差がある。つまり1時間かけて葉っぱを巻いたものを3分で平らげてしまうわけだから。たぶん男性はこういうのがめんどくさいんだよ。僕の周りには食べるのにも作るのにも興味を持っている人がたくさんいる。たとえば漁師には魚との関係があって、僕はそれにとても敬意を感じている。この前、ボートで釣りをしたんだけど、釣り竿を引くときにときに船長が、「お兄さん、絶対それを触らないでください。それは魚じゃないから」と言ったんだ。ぼくたちは料理はともかく魚自体をよくわかってないんだ。だから僕はプロに敬意を感じる。非常に若くしてプロになる人たちもいる。たとえば肉や魚や野菜について理解することは、僕にはかなり特別なことに思える。残念ながら僕たちにとっては、野菜を買って帰るとき、そいつらが話し出さなかったり、それか環境ホルモンが少なければ十分だからね。

・うちでは何を食べてますか?
-うちでよく言うジョークがあるんだけど、「今日何を食べようか?」、答えも同じで、「コンチネンタル・ブレックファースト」。朝食はメネメン(ひき肉の卵とじ)と、チーズ入りオムレツがあるといいね。それから昼食は肉料理とたっぷりのサラダとか。夜も特に招待がなければ肉入りの野菜料理で済ませる。

・間食しないの?
-メフメト(インタビュアー)さん!意地悪な質問だなぁ。僕は本当にすぐ太るんだ。3日に1キロと「代謝を上げましょう」と言って、1週間3キロ落とされてますが。

・ダイエットすることある?
たまにはね。すぐに太る人の長所はすぐに痩せることだ。たくさん食べないようにするだけで40~45日で10キロ近く減らせるよ。

・満腹でも、勧められたら断らない食べ物はある?
-僕たちのようにすぐに太りがちな人間の言い訳があって、「代謝を上げるために、たまにはなにかを摂取しないと」。これがどこまで本当か知らないけど、少ない量で満腹になってしまうのをどうにもできなかった。その一方で、満腹でもバクラバを一切れ食べていた。

・サンドイッチの具は何が好き?
かなりはまっているのがいくつかある。まずはオニオンスライスをパンにのせて食事にする。匂いがきついかもしれないけど、ものすごく使える、という言い訳をしておこう。あとひとつふたつ最高の組み合わせがある。まずレバーのアメリカ風。どんなのかというと、揚げたレバーとポテトサラダを一緒に挟んだもので「レバーのアメリカ風」というわけだ。ちょっと食べるのが難しいけど、それも含めて全盛期によく食べていたメニューだ。あとサッカー観戦にはキョフテ・バーガー。ココレッチ(子羊の腸のグリル)も同じくらいパンに挟むと美味しい。

■オスライオンのようにソファにごろり

・底が見えるまで皿をきれいにする?サラダにトリュフをかける?
-自分の舞台でも演じているとおり、テーブルセットについてはいつもこんなネタを言っている。「何種類ものフォークとナイフがあって、ある人がその席に座ったんだけど、どれから使ったらいいかわからない……」。僕が一番気に入っているものだ。実際みんな心の中で、このサラダはいつを食べればいいのか、と疑問に思っている。でもそれについて文明度の問題ではないんだと映画「インディ・ジョーンズ」を見て安心したよ。映画では、全く異なる文化の料理やテーブル事情を紹介して、次のように言っている。「誰がどうやって食べようと、そのようにすればいい、別に手で食べたっていい」。そうするとみんな安心する。もちろん、白いんげんのトマト煮のようなメニューは、皿の底が見えるまで平らげることができる。ときにはみんなで集まって、全部の料理を平らげてから横になるのにソファが必要だ。男性はドキュメンタリー映画のオスライオンみたいに食後に横になる習性があるからね。相当の肉やバターを使ったものを食べるとみんな眠くなるんだ。

・晩御飯を食べるのはショー前?それとも後?
-2~3時間前に食べる。ステージの前に食事をするとエネルギーが消費される。重たいものは絶対に食べない。食べてすぐにソファに横になれるようなチャンスはないからね。でも食事から間をあける十分な時間とれないときには水をたくさん飲むようにしている。それか甘いものかお菓子を食べるよ。2時間半もの長い時間中、1、2回緊張感の下がる状態に襲われる。20代頃にはこんなトラブルはなかったよ。なにしろ1日2公演できたからね。

■全部キャビア!

・セレブになって食生活にどんな変化があった?
-「全部キャビア!全部キャビアで!」っていうネタもあるよ。実際には僕の社会生活でそんなに変ったことはないから、高級な料理を走り求めたりしなかった。食生活に大きな変化はなかったよ。一方で加齢に伴う変化はあった。より注意深くなりはじめたんだ。

・公演後に立ち寄るフードスタンドはある?
-もちろん。昔は全盛期の頃、特に数年間は帰宅が遅くて、うちでも「こんな時間からは食べないほうがいいだろう」と言っていた。ステージから降りて帰宅が深夜1時、2時にはあなたの番組の再放送があって、その番組をつけて腹を満たす。つまり夜食の代わりにあなたの番組を食事代わりにしているんだ。

・私の知っている限り漫画家は不摂生だと思いますが、レマン誌時代の食生活はどうでしたか?
-あのときの食事は大概とんでもなかった。僕が知り合った時期に出版社がベイオウルに移転して、ベイオウルではアッラーの助けが欲しいくらいたくさんの食事の場所があった。でも僕たちが食事をとる時間はふつうの食事に適した時間じゃなかった。医者は「体に悪いので21時以降は何も食べないでください」と言うけど、逆に僕たちは21時以降に食事をしてなければ確実に死んでいたよ。いつもデリバリーを注文していた。時には48時間も何も食べないで、そのあとに一人で15~20枚ものラフマージュンを平らげたことも覚えている。朝には粉砂糖をかけたクルド風のパイを食べて、深夜には腸詰の肉料理も食べた。僕らにとっては高級だったけど、たまにはハッジ・アブドゥッラー・レストランに行ける日もあった。給料が入った時だよ、月に5~6回ぐらいハッジ・アブドゥッラーで食事ができた。お金が底をついたら、スタンドのラフマージュンに直行だった。

・臓物料理は好き?
-ココレッチ以外はあまり好きじゃない。子供のころにシビレや脾臓をすこし食べたことがある。腸料理に慣れたのはだいぶたってからだ。脳みそについては少し怖いと思う。栄養についてもわからないし。

・一番好きな店はどこ?
-シーフードを食べるときは、バルクチュ・サバハッティン&ギリトゥリ。ブルガズ・アダのカルパザンカヤにある素敵なレストランで美味しいタンドール料理も食べた。店の名前は忘れてしまったけど。そのほかには予算が許せばコンヤルに行くよ。あとギュナウドゥンラルも気に入っている。

■周囲にグルメな人はいなかった。母にポテトハンバーグをつくってもらった

・食事について最初に覚えていることは?
-ほんとに僕は乳離れが遅い子だったことをよく覚えている。それからかなり小さい頃にトルココーヒーの作り方を習ったよ。「子どもはコーヒーを飲まないの。アラブ人になるよ」という差別的なジョークを怖がっていた。その後、卵の割り方や、化学者みたいにスパイスを混ぜることを習った。僕の母は(ギリシャの)テッサロキニからの移民だから、一度の食事で一品以上量の料理をつくる習慣があった。でも僕たちは母にポテトハンバーグを作ってもらっていたよ。高校で調理の授業を受けるまで、周囲にグルメな人間はいなかった。

・お父さんは料理をしていた?
父は今67歳で、55歳くらいのときに料理に挑戦しはじめた。僕たちにいつも「お母さんがいないとき、お父さんを家に一人にしておいたら1週間で死んでしまうよ」と言っていたよ。チャイすら淹れられないんだ。定年退職してからは調理への興味を知った。本当に切実な問題だったから。

■新しいメニューで冒険できない

-大震災の前に僕らは東京にいた。東京である友人が僕らに200キロもあるマグロの頬かどこかの肉を勧めてきて、美味しかったけど、食べるのに勇気がいった。日本食では温かいメニューの方が好きだね。イタリアンも好物だ。ローマでは、本当に腕がよくて回転がものすごく速いピザ屋を見つけて気に入っている。考えてみて。列に並んで名前を書いたその1時間半後に、注文したピザを食べ終えて、すぐに席を立たなきゃいけない。その席に次の客が座るからね。でもピザは本当にすごく美味しかった。タイ料理やインド料理も好きだよ。インド料理ではマトンカレーとチキンカレー2つが好きだ。というか実際はその2つ以外には食べたことがないんだ。きっといろいろと試す習慣がなくて、冒険できないんだ。

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( 翻訳者:原田星来 )
( 記事ID:26312 )