最高裁委員会、トルコ語を解する被告への「代理人」選任を必須と認めず
2012年05月17日付 Radikal 紙
バクルキョイ第5重罪裁判所は、外国籍の被告J.M.Aに麻薬密輸の罪で4年2ヶ月の禁固刑及び2000リラ(約86,000円)の罰金を課した。地裁の判決に対する控訴を受け、書類を精査した最高裁第10裁判所 は、地裁の判決を覆した。欧州人権条約及び刑事裁判法に基づき、被告人に法定代理人を付すことは必要とした判決で、地裁の決定には反し、法定代理人なしで裁判を行うことで、被告人は弁護する権利を制限されたと指摘した。第10裁判所の判決では、これが、判決を覆した理由とされた。
最高裁共和国検察局は、判決撤回の申請を行い、同裁判所による決定の撤回を要請した。検察局側は、欧州人権条約第6条には、代理人の任命につきいかなる状況がこれを要するかについて条件に関する規定がなく、代理人を付す条件の決定は、各国の判断に委ねているとした。異議申立書では、外国籍の被告人が、子供であるか、耳が不自由、言語障害がある、又は、自分を弁護することができないレベルで(トルコ語が)不自由ではなかったと指摘し、また予見される刑罰の下限が5年を超えなかったとした。こうした状況では、法定代理人の任命(の有無)は問題となるものではないとし、法定代理人なしの(審理をへた)判決が、容疑者の弁護する権利を制限したという形で受け入れることはできないとした。この異議を受け、書類は最高裁刑事訴訟委員会へ引き渡された。同委員会は、検察局の異議申立て書を受理し、最高裁は第10刑事裁判所の決定を撤 回した。
最高裁刑事訴訟委員会が多数決により下した決定では、以下のような理由を挙げている。
外国籍及びトルコ語が分からないとの主張により、裁判にかけられる段階で通訳が付された被告人に本人の要請に基づき付される代理人が、必須の法定代理人か否かが吟味された。憲兵が聴取した被告人の証言によると、「トルコ語が分かり、通訳なしでの証言を希望しており、代理人を付けることも望んでいない」と述べ、同日出廷した公判でも、裁判官の前で、「7年間トルコに住 み、トルコ語が分かること、代理人や通訳は付けてほしくないこと」を明らかにし、その旨を記載した申告書に署名したとされている。起訴状の報告のために刑 務所へ渡った書類に書かれたメモでは、被告人が、「クルド語が話せる通訳を望んでおり、更に、弁護士会に弁護人選定を要請した」と書かれている。また被告人に弁護人が付され、弁護人と通訳を付けた状態で弁護したと強調し、弁護士が参加しない公判では、被告人に対し判決が読み上げられ、通訳を介して被告人に説明され、調書が書かれたと記された。
■通訳が付けられる条件
刑事裁判法5271号において、法定代理人システムが拡張され、これによると、弁護人を手配できない被告人が、子供であるか、自分を弁護できないレベルで不自由、耳が聞こえない、言語障害がある、刑罰の下限が5年以上禁固刑を要するといった状況の場合に、被告人の要請なしに、たとえ被告人が代理人を望まなかったとしても付される義務があることを強調している。すべての被告人が、公判で使用されている言葉を理解できない乃至、話すことができない場合には、通訳を付ける権利があることが、欧州人権条約第6条に記載されているとし、刑事裁判法では、被告人が自分の意志を表現する程度のトルコ語が分からない場合には、通訳を付すという規定があった旨言及した。
欧州人権条約及び刑事裁判法におけるこの規定が、通訳を付すことについて、弁護権の枠組みの中で扱われていることに注目し、欧州人権条約が、通訳を付す条件として、被告人が裁判にかけられている国の国民乃至外国人であるかという点ではなく、公判で使用される言葉を理解できない、又 は、話すことができないかどうかを基準にしていると強調した。刑事裁判法でも同様に、通訳を付すには、個人の意志を説明することができるレベルでトルコ語を理解できないことが必要として、(最高裁刑事訴訟委員会の判断理由として)以下のような確認を行った。
「この結果として、トルコ共和国国民であることと共に、自分の意志を説明できるレベルでトルコ語が分からない容疑者や被告人に対し、通訳を付けることは、 弁護する権利を守るという観点から義務である一方で、本国では、国民でなくとも、弁護できるレベルで、十分にトルコ語が分かる容疑者乃至被告人に通訳を付ける義務はない。事情聴取及び訴追の過程で、司法当局の前で行われた諸々の手続きの中で、トルコ語を理解していることがまったく疑いの余地がないとわかる容疑者や被告人が、後になってトルコ語が分からないと主張し、通訳を付けることを要請してくる場合には、欧州人権条約及び刑事裁判法の拠ると、被告人は、 通訳の支援を受ける権利がないと同時に、この種の態度が、弁護権を悪用していると判断されて然るべきであるのは明らかである。最高裁各法廷での判断もこれに則っている。刑事裁判法においても、その他の法律においても、トルコ語が分からないという理由で通訳を付ける被告人に対し、さらに代理人も付ける義務に関する規定はどこにもない。」
■「弁護士が職務を果たさなかったとは言えない」
裁判で被告人が弁護を、被告人の要請に応じて付された弁護士の面前で行い、二度の公判に出席した弁護士が、すべての公判に参加する義務はないとし、弁護士が職務を果たさなかったとは言えないとした。「事情聴取や健康診断書作成段階でも、憲兵の前、また重要なこととして聴取のため判事の前で手続きを行った際にも、トルコ語を自分を弁護できるぐらいのレベルで流暢に話し、理解できていたことが明らかであった被告人に対し、公判の段階で、欧州人権条約 及び刑事裁判法の関係する条項にしたがって、通訳を任ずることは義務ではない」とした。
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る
( 翻訳者:田辺朋子 )
( 記事ID:26420 )