昨今の政治の背後にあるもの・・―ヴァタン紙分析より
2012年06月19日付 Milliyet 紙

ヴァタン紙のルシェン・チャクル記者は、「政権争い絵図」と題した記事において、この一週間のうちに続けざまに起きた5つの重要な出来事を分析している。エルドアン首相の招待、それに対するギュレンの返答、ギュル大統領の任期、レイラ・ザナ氏の発言、ムラト・カラユラン氏のインタ ビュー。立て続けに起きたこれらの出来事からどのような図が描けるだろうか。これに関するルシェン・チャクル氏の記事は次の通り・・・。

今日はこの数日間に起きた主要な5つの出来事に焦点を当て、トルコ政界の勢力図を明らかにしようと思う。

1)トルコ語オリンピックにて、エルドアン首相が名指しせず暗にフェトフッラー・ギュレン氏に帰国を呼びかけたこと。
2)ギュレン氏が、この招待に感謝しつつも今すぐ帰国するつもりはないと明言したこと。
3)憲法裁判所が、アブドゥッラー・ギュル大統領の任期は7年であるが、望むならばもう一度立候補できると決定したこと。
4)レイラ・ザナ氏がヒュッリイェト紙の取材に対し、クルド問題の解決に向けてエルドアン首相を頼りにしていると述べたこと。
5)ムラト・カラユラン氏がラディカル紙のアヴニ・オズギュレル氏の取材に答えた記事が、インターネットサイトwww.birlesikbasin.comに掲載されたこと。

この5つの出来事は、トルコに刻み込まれた、もしくはこれから刻み込まれるであろう4つの勢力図を浮かび上がらせている。

1)AKP政権とギュレン教団の対立
エルドアン首相がトルコ語オリンピックの閉会式に出席し注目されたこと、心からギュレン氏に帰国を呼びかけたこと、ギュレン氏がこの招待を丁重に断ったこと。これらは私のような、政権と教団の間に一時期存在していた同盟関係にはすでにヒビが入っており「新たな政権争い」が始まったと主張している人間を、即座に否定したようなものだ。しかしエルドアン首相とギュレン氏の言葉に注意を払ってみると、二人のあいだには距離がある(たとえば二人とも相手の名前を明言しなかった)ことが分かる。帰国には条件が整っていないというギュレン氏の考えも、政府に対する一種の批判もしくは現在実施が求められている特別権限法廷改革への抗議として読むことができる。

2)AKPとクルド政治運動の対立
トルコ国軍(TSK)をはじめとする反対勢力の多くを罷免もしくは無力化してきた与党にとっての唯一の障害は、PKK/オジャランが先導するクルド政治運動である。こうした状況下で、AKPの内外のライバル/敵は、直接的もしくは間接的にクルド政治運動を後援しようとしている。このため政府がクルド問題の解決を先延ばしにした後、これまで重視していた警備政策から徐々に遠ざかっていくのは当然だった。この数日間の多くの出来事がこのことを示している。しかし新たな解決策を実行するためにはクルド政治運動とAKPの関係をもう一度正常化する必要がある。レイラ・ザナ氏がエニス・ベルベルオール氏とメテハ ン・デミル氏に語ったことや、賛同しない人もいるかもしれないがムラト・カラユランもアヴニ・オズギュレル氏に対し政府に配慮し穏健な言葉を使いながら 語ったことは、この観点から非常に重要である。

3)クルド政治運動の内部対立
まずザナ氏とカラユラン氏のインタビューを照らし合わせて読むと多くのことが分かることを強調しておきたい。しかし同じグループの新聞(ヒュッリイェト) がザナ氏インタビューを大見出しで報じた一方で、もう一紙(ラディカル)はカラユラン氏インタビューを掲載しなかった。一見したところ二人が言っていることは全く違うように見えるが、ザナ氏とカラユラン氏は同じ点でよく似た解決策を提示している。少なくとも二人とも解決の主な手がかりとしてオジャラン氏を示している。「自宅軟禁」の提案がこれほど自然で妥当に思われるのは初めてかもしれない。プロセスがこの地点まで前進し、国がオジャラン氏を何カ月も人目に付かない場所に隠した後、これが実現されうると私は考えている。

ザナ氏を近く知っている者や、彼女が自分の立場を守りつつ、クルド政治運動における影響力をいかに保ちうるか多少なりとも分かっている者は、彼女がヒュッリイェト紙に語ったことに全く驚かなかった。しかし平和民主党(BDP)や政府関係者の反発は、クルド問題の解決のためのザナ氏の真の価値がさまざま立場から完全に理解されていないということを示した。一部のAKP党員がケマル・ブルカイ氏によっては成し遂げることができなかったPKKへの代替案の提示という責務をザナ氏に負わせること、一部のクルド政治家も同様の方向で慌ただしく動き回ることは、同じくらい無意味であった。ザナ氏のインタビューは我々に、クルド政治運動の内部にも異なる傾向があるという事実と、解決までこの違いを保留しておくことができることを示した。

4)AKPの内部対立
憲法裁判所の判決に対する反発は、AKPに取って代わる存在がAKPの内部から出てくるだろうという予測が未だに有効であることを示した。与党がギュル大統領の再出馬を法的手段を用いて妨げようとしたことや、憲法裁判所の決定に対する不快感を隠そうとしなかったことは、大統領選挙をめぐるエルドアン首相と ギュル大統領の対立が非常に深刻であることの証である。誤解しないでほしい、私はここで二人が選挙で争うようになると言っているのではない。しかし選挙に至る過程で二人の対立が表面化することは間違いない。

まさにこの点で、ギュレン教団とクルド政府運動がギュル大統領とエルドアン首相の対立に着目し、新たな戦略と方策を編み出すことが予想される。同様にギュ ル大統領やエルドアン首相も、互いの対立に着目してギュレン教団とクルド政治運動に対する新たな戦略と方策を編み出すこともありうる。

■刑務所の悲劇:第一の、そして最大の責任者は国家である

人生における一年半を刑務所で過ごした身として、私は刑務所と留置所の生活環境をできるかぎり把握しようと努めている。率直に言うと、私はシャンルウルファで起きた悲劇(訳注:刑務所の火事で受刑者13人が死亡した事件)に驚かなかった。この件については次の4つのことを言っておきたい。
・トルコだけでなく全世界で、何がいかにして起きたとしても、刑務所内の苦しみの第一の、そして最大の責任者は疑いなく国家である。
・ロボスキの経験(訳注:ウルデレ郡で民間人がトルコ空軍に爆撃された事件)の後では、シャンルウルファでの悲劇の原因解明が速やかにそして公正に行われるとは到底信じられない。
・世論の圧倒的大多数が、刑務所は彼らを犯罪と犯罪者から守っていると信じているかぎり、シャンルウルファで起きたような悲劇を無くすことはできない。
・一般的に考えられていることとは反対に、刑務所は社会でなく基本的にはシステムを守るために建てられる。

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:26755 )