法医学庁「今年はじめの4ヶ月間でコメ用農薬錠剤で116人が犠牲」
【社会部:マストゥーレ・バラーダラーン=ナスィーリー】我が国の自殺者数の統計は通常、毎年三カ月間を単位として発表されるが、そうしたなか、コメ貯蔵用の錠剤型の農薬〔以下「コメ農薬」〕を用いた自殺については、毎年のように警告が発せられている。特にここ2年間、この農薬で自殺した人の数は目に見えて増加するようになっているのだ。
今年も、国家法医学庁は年はじめの4ヶ月間〔※3月20日〜7月21日〕を対象とした統計を発表したが、それによると、この間コメ農薬の犠牲となった人の数は、テヘラン州、マーザンダラーン州、ギーラーン州、ロレスターン州の4州だけで116人に上るという。
テヘラン、マーザンダラーン、ロレスターン、ギーラーンの4州の中でも、マーザンダラーン州とロレスターン州は昨年と比べて、死者数の増加が最も高かった。昨年最初の4ヶ月間、コメ農薬による死者はマーザンダラーン州で5人、ロレスターン州で6人だったが、今年の同じ時期にはマーザンダラーン州で17人、ロレスターン州で19人がこの農薬を飲んで自ら命を絶っている。
昨年最初の4ヶ月間だけで21人の死亡が記録されていたギーラーン州でも、今年は33人が亡くなっている。唯一テヘラン州では自殺者数の減少が見られ、この農薬で命を絶った人の数は昨年最初の4ヶ月間で66人だったが、今年の同じ時期には47人となっている。
以上のことから完全に明らかなのは、この毒物による死者数は増加傾向にあるということだ。にもかかわらず、コメ農薬は薬剤店や農薬販売店で簡単に入手可能なのである。
1パッケージで3000トマーン
テヘランパールス地区にある薬剤店を訪れてみた。1粒で人一人を殺すのに十分なコメ農薬の1パッケージ(10粒入り)の値段は、3000トマーン〔※公定レートで約200円〕だった。
販売してくれた人は、見たところ善良な男性であった。コメ農薬を売る前に、最低でもいくつかの質問をしてきたからだ。
この人物の質問からは、彼が問題の重要性をちゃんと知っているということが窺い知れた。「あなたは独身か、それとも既婚者か?無職か、それとも職はあるのか?何のためにコメ農薬が欲しいのか?」
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この薬剤店の人物は、一人の若者が自殺する危険の割には、3000トマーンという価格は安すぎると指摘する。しかしこの人物によると、これまでにこの製品の売買に関して当局からこれといった取り締まりは行われておらず、またコメ農薬を回収しようと薬剤店を訪れた者もいないという。
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「コメ農薬」とは?
「コメ農薬」は、貯蔵しているコメの害虫被害を防ぐために使われる、危険なリン化合物である。人間がこの錠剤を使用すると、激しい致命的な症状をもたらす可能性がある。
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毒物学の専門家であるゴラームアリー・ジャアファリー博士は、この件について「他の薬物を飲んでも、99%の患者は一命を取り留めるが、コメ農薬の場合は、99%の患者が命を落としている」と指摘する。
この専門家はコメ農薬による死を防ぐ方法について、「最も有効な手段はコメ農薬で自殺を図った人物を、一番近い病院に素早く搬送することだ。コメ農薬を飲んだ人にいかなる水分も与えてはならない。この錠剤は胃の中でガスを発生させ、このガスは肺に入りこみ、各細胞へと拡散するからだ。水を飲むと、この反応を促進させてしまうのだ」と述べている。
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87年から90年〔西暦2008年度から11年度〕にコメ農薬を使用した自殺者数のリスト
1390年〔2011/12年〕:女性204名、男性259名、計463名
1389年〔2010/11年〕:女性202名、男性204名、計406名
1388年〔2009/10年〕:女性104名、男性124名、計228名
1387年〔2008/09年〕:女性105名、男性109名、計214名
(本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介
されています。)
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( 翻訳者:8409148 )
( 記事ID:27305 )