PKK(クルディスタン労働者党、非合法組織)によって誘拐され48時間後に開放されたトゥンジェリ県選出のCHP(共和人民党)党員ヒュセイン・アイギュン議員を、コードネーム「アザド」を中心とした10人グループが誘拐したということが明らかになった。
アイギュン議員が誘拐された後、組織の首謀者の一人であるコードネーム「Dr.バホズ・エルダル」と名乗るフェイマン・ヒュセインが、いわばデルスィム県責任者ともいえるコードネーム「セイトハン」と名乗るセルダル・オズデミルと共に行った無線での会話内容が解読された。会話の中で今回の誘拐事件に関してヒュセインは怒りをあらわにし、「これは何ということだ、これはどんな活動か。デルスィム県の構造をしらないのか。探してやっと見つけたのがヒュセイン・アイギュンか。これは正しい活動ではない、決して認めることのできない種の活動である。君達に人をさらえといったが、しかし彼らがやったことは正しいことではない」と述べているのが、録音されていた。
トゥンジェリで先週日曜日に誘拐され、48時間後に開放されたCHPトゥンジェリ県選出ヒュセイン・アイギュン議員の事件に関して、DHA(ドアン通信)特派員がその詳細に迫った。情報・治安機関が入手した情報によると、PKKのカンディル山におり、無線コード「ロジュ」、コードネーム「Dr.バホズ・エル ダル」と名乗る「フェイマン・ヒュセインと組織の武装集団責任者であるコードネーム「ソヒィ・ヌレッティン」というハラス・エル・ムハッメドが、組織のいわばデルスィム県責任者である無線コード「ムンズル」、コードネーム「セイトハン」を名乗るセルダル・オズデミルに暗号メッセージを送ったという。
■活動命令を与えた
治安部隊が解読したメッセージによると、「とうとう新たな攻撃プロセスがはじまる。我々は勝利をつかみ、クルド人解放運動の最も重要な第一歩となる革命的市民戦争を始めようとしているのだ。その過程で、もはやどの支部も活動の実施、決定を独自の判断で行うことができる」といった命令が与えられていた。
その命令が地域における全PKK党員に伝えられ、特に組織がトゥンジェリ、オヴァジュク地方でさらに活発に活動することが望まれた。知らせを受けたオヴァジュクでは、最も多く CHP組織が標的とされる中、商工業者、事業家、政治家などを含む14人が、組織との関係を築かず、命令を実行しなかったことを理由に2年間トゥンジェリの外へ追放されるという決定が下された。これにより、その一部は郡に残ったが、何人かは脅しを受け、その地を離れざるをえなかった。
■アイギュン議員誘拐計画
CHP党員アイギュン議員を誘拐したコードネーム「アザド」と名乗るPKK党員を中心とする10人のグループが、以前にもその地域で4人を同じ方法で誘拐していたことが明らかになった。
コードネーム「アザド」と名乗るPKK党員を中心とするこのグループは、ヒュセイン・アイギュン氏を誘拐するための計画を立てた。アイギュン議員が町に来て、町内をまわっていることをソーシャル・メディアを通して知ったグループはアイギュン議員の追跡を始めた。
アイギュン議員がオヴァジュクにいることを知ったPKKのスパイが状況を「アザド」PKK党員に伝えた。
そこで4人組が身なりを整え、髭をそり、一般人のような格好をし、オヴァジュクへと向かった。仲間の一人が、一般市民のように歩きながらアイギュン議員を待ち、他のPKK党員は県の中心部から4~5㎞のところにある森に身を隠していた。アイギュン議員がその町から離れる直前に、町にいたPKK党員が状況を電話で伝え、自身も車で後をつけた。
■最初の警告では停止せず
待ち伏せをしていたPKK党員は、アイギュン議員と彼の顧問であるデニズ・トゥンチュ氏、カーディル・メルキット記者の乗った車を止めようとしたが、車を運転していたカーディル・メルキット記者は止まらずに車を走らせ続けた。車を止められなかったPKK党員は、さらに先にいるテロリストたちに状況を直ちに伝え、彼も郡から来たほかのPKK党員が運転する車に乗り込み、追跡した。
さらにその後、武装したPKK党員がアイギュン氏の乗っている車を止めさせ、抵抗するヒュセイン・アイギュン議員を自身が使っていた車に無理やり乗せ誘拐した。
ヒュセイン・アイギュン議員を誘拐した2人のPKK党員はそのまま移動し、他の2人のPKK党員は深夜遅くに食糧を手に彼らと落ち合った。
■アイギュン議員のそばでは無線で話さず
治安部隊によると、「アザド」は、ヒュセイン・アイギュン議員を安全だと思われる場所で2人のPKK党員と共に残し、20kmの距離を一晩中歩き続けた。
「アザド」は立ち寄った地域においていわばデルスィム県責任者、コードネーム「セイトハン」のセルダル・オズデミルに無線で状況報告をし、「ヒュセイン・ アイギュンはもはや我々の手にあります。夕刻、郡から出た後仲間とともに彼を誘拐しました。今の状況はとても良好、安全な場所で待たせています。この後、どうしたらよいでしょうか」とたずねていた。
PKK党員セルダル・オズデミルも「安全な場所で待たせろ。私はこの状況をロジュに伝える。君達に連絡が来たら私達にも伝えるように。」と伝えた。その後、無線を切った「アザド」はアイギュン議員のところへ行った。
(治安部隊の)関係者らは、「アザド」がアイギュン議員のそばで無線を使い、話をした場合10分以内にその場所は特定されると説明し、「彼らの居場所が判読されてしまう。これを知っているPKK党員のグループは更に遠いところまで行き、そこで無線で話をした後再びいたところへ戻る。この技は居場所を判読されないように、最近頻繁に使われている」と述べた。
■バホズ・エルダル 「本当に我々の勢力が誘拐したのか」
ヒュセイン・アイギュン議員が誘拐された後、カンディルにいる「Dr.バホズ・エルダル」は8月13日10時半から11時の間にトゥンジェリ県のグルー プと無線をつなぎ、誘拐事件に対し厳しい反応を見せた。無線コード「ロジュ」をもつバホズ・エルダルはデルスィム県責任者であり無線コード「ムンズル」と名乗るセルダル・オズデミルと次のような会話を交わした。
ロジュ:ヒュセイン・アイギュンは本当に我々の組織によって誘拐されたのか。これは事実か、それとも他の勢力が誘拐したのか。
ムンズル:本当のようだ。アザドのグループが誘拐したみたいだ。今アザドのそばにいて、状況については深夜、私に報告が来た。
ロジュ:これはどういうことか、これはどんな活動か。デルスィムの組織構造を知らないのか。やっとの思いで見つけたのがヒュセイン・アイギュンか。これは正しい活動ではない、決して認めてはならない種の活動だ。君達に人をさらえといったが、しかし彼らがやったことは正しいことではない。このような活動が行われるようなら、前もって司令部の許可を得るべきであり、司令部の決定である必要がある。この状況では管理欠如である。
ムンズル:その通りだ、我々もこのような命令はしていない。アザドのグループが独自の計画により国会議員を誘拐したようだ。デルスィム県組織が下した決断ではない。
ロジュ:我々は君達に自分たちが主導してあらゆる活動を行うようにいったが、そのためにはPKKの本質を理解し、知る必要がある。なぜ自分勝手に振舞うのか。なぜ権威が確立されていないのか。これはどんな活動であるか、執行部からも誰からも何の知らせもない、決定もない。デルスィムのような慎重にならなければならない土地でヒュセイン・アイギュンが誘拐された今、この状況をどんな手を使ってでも改善しろ。
ムンズル:了解。命令が何であれ、実行しよう。
ロジュ:セイトハン、君自身もこの件に関われ。グループの責任者であるアザドを明日の朝君のところに呼び出せ。私は彼とコンタクトをとる。このような無責任なことはあってはならない。
ムンズル:了解、明日アザドをここに来させよう。
ロジュ:明日アザドと話をする、私のところに連れてきてくれ。ヒュセイン・アイギュンの安全を確保するように。髪の毛一本でも被害を受けたら、その責任は君にある。このような自分勝手な活動は今後ないように。ヒュセイン・アイギュンは一刻も早く、つまり明日開放してやるように。最も安全な方法で一刻も早く送り届けるように。
■「アザド」への叱責
治安部隊が得た情報によると、8月14日朝フェイマン・ヒュセインとアイギュン議員を誘拐した「アザド」との間に短い会話があった。会話ではフェイマン・ ヒュセインが、「アザド」を叱り、組織からの連絡なしに自分勝手な行動は避けること、このような状況では必ず中央に知らせることを望んだ。また、フェイマン・ヒュセインは「アザド」から中央にただちに反省文と状況報告レポートを送るように要求した。
関係者は、入手した情報や調査結果においてヒュセイン・アイギュン議員誘拐事件は完全にオヴァジュクのグループによる単独行動であり、カンディルによって下された決定ではないと述べた。また同関係者らは、毎日カンディルから組織幹部へたくさんの暗号メッセージが送られ、これらが解読されていることを明らかにし、 ヒュセイン・アイギュン議員誘拐事件に関する情報は入手できなかったと述べている。
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る
( 翻訳者:入口 愛 )
( 記事ID:27382 )