CHP党首「アルメニア人」で名誉棄損告訴に、アンカラ法廷「表現の自由」
2012年09月29日付 Radikal 紙


共和人民党(CHP)クルチダルオール党首は、自身がアルメニア人であるという侮辱を受けた、と主張し、名誉棄損で告訴していたが、裁判所から政治家としての立場を傷つけるものではない、との回答が示された。

先年の総選挙前に発売された「デルスィム生まれのアルメニア人、イェムシュ夫人の息子、技師ケマル」というタイトルの書籍についての判決が下された。アンカラ第2第一審刑事裁判所は、書籍中の記述はケマル・クルチダルオール党首の政治家としての立場を傷つけないと判断し、表現と思想の自由の範囲内と評価づけた。

法廷は判決の理由として、書籍中の表現は「強烈で不躾」であるとしながらも、欧州人権条約第10章に照らし、「表現の自由は、無害で注意を払うほどではないとみなされる特定の情報・思想に対してだけでなく、不快にさせたり、混乱させたり、侮辱するようなものに対しても適用されるべきである」と述べた。

クルチダルオール党首は、名誉棄損の訴えのなかで、アルメニア人であるという侮辱を受けたと主張した。検察側に渡された告訴状はつぎのとおりである:「選挙前にクルチダルオール党首の過去や、民族・宗教的なルーツ、職歴について、まったく事実無根の中傷を含む書籍が広められた。それにより、いわれのない非難を受け、事実に拠らない前提のもと行われた選挙においては有権者の意志に影響を与え、さらに政党に損害を与えたことに議論の余地はない。出自がアルメニア系であるという話題の事実無根の誹謗中傷にみられる目的は、民族アイデンティティを利用して党の代表者に損害を与えるものである。」
訴状には、書籍の表現内容は社会の価値観や、慣習、社会通念上、耐え難いほど重く、扇動的かつ攻撃的、意図的な示威といった性質のものである、と記載されていた。

法廷は書籍中の表現に関し、「表現の中で示されている人物の政治キャリアや、職業柄の特別な生活に影響を与えるものはない」という決議を下した。

また法廷は、著者スレイマン・イェシルユルトゥ氏が書籍に記述した情報に関して、出版人メディア関係者が常に正確な事実に依拠しえないこと、また彼らの仕事にもつねに典拠があるわけではないことを明らかにし、著者が著者から見た真実を発表したにすぎないと判断した。

かつて、CHPイズミル選出のジャナン・アルトマン議員は、アブドゥッラー・ギュル大統領の母親がアルメニア系だと発言し、損害賠償を請求されている。アルトマン議員の発言後、ギュル大統領の弁護士らが訴訟を起こしたが、アンカラ第11第一審刑事裁判所は訴えを退けた。しかしその判決は最高裁判所により破棄された。最高裁第4民事小法廷は、「トルコ共和国政府の長である大統領について、彼の民族的出自に関する内容で、事実を証明できない発言は個人の権利を侵害する」という理由で、判決を裁判所に差し戻した。裁判所は改めて調査した裁判で、アルトマン議員に1リラの損害賠償を請求している。

「アルメニア人だ」という言葉が、政界でしばしば相手を侮辱するのにつかわれ、民族的出自をめぐる議論が脅迫の種につかわれている状況下で、この最新の判決が今回限りの判決となるか、あるいは今後の前例となるのかは興味深い。

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( 翻訳者:原田星来 )
( 記事ID:27730 )