イスタンブルの区境域変更提案の狙いは?―サルイェル区拡大
2012年10月18日付 Hurriyet 紙
公正発展党(AKP)はトルコのマンハッタンとして認識される「ショッピングセンター地区」であるマスラクとアヤズアーとフズル地区をシシュリ区からサルイェル区へ編入するため行動をおこした。それにしてもなぜ?概要は以下である。
トルコ大国民議会の内政委員会が行った昨晩の会合で承認された提案により、マスラク、アヤズアー、フズル地区がサルイェル区へ組み込まれた。この3つの地域には15000近くの住宅と、約8000のオフィスがある。2009年のデータによると、改変により、3万の票が、シシュリのためではな く、サルイェルのために使われるということになる。マスラクとアヤズアーはイスタンブルにおけるビジネスの中心地に位置する。大手銀行や国際的な会社本部の多くがこの地域にある。マスラクは昨今の新住宅プロジェクトで注目を浴びている。
■シシュリ区長がアンカラへ向かった。
シシュリ区長のムスタファ・サルギュルは、内政委員会でなされた提案により、区の境域の中にある地区がサルイェリ区に組み込まれることが要求されたことを受け、アンカラに赴く決定を した。13時の飛行機でアンカラに到着したサルギュル区長は、いくつかの会合を行い、議会本会議の審議の際に計画の是正を要求する予定だ。
サルギュル区長は、その後に行った説明で、決定が正しいものであるとは見受けられないこと、誤りが法律化する前に是正されることを望んでいると明らかにした。
該当する地区が当初よりシシュリ区に付属していたとし、「私たちは長い期間この地域に対し事業計画を実行してきた。ある議員の提案によって、地域に改変がなされることは正しいと思わない。この誤りが法律化する前に提案が是正されることを望んでいる」と述べた。
決定を批評したシシュリ副区長のカフラマン・エルオールは、「私たちだけではない。市民も戸惑っている。朝から電話が鳴り止まない。私たちや地区長に連絡してきて、『私たちは自分たちの自治体に非常に満足している。サルイェリへ 組み込まれることを全く望んでいない。よって異議を唱える。あらゆる行動をおこす』と電話で訴えたことを説明した。エルオール副区長は、アヤズアーが35,000の人口をもつ居住地区であること、自治体がこの地へ莫大な社会的資本投資を行っていることを明らかにし、児童養護施設や医療センター、障害者・高齢者・女性センターが開設されたと説明した。
同副区長は、この地域が立場として右派に近いことと共に、サルギュル区長の仕事に非常に満足しているため票を彼に投じていると述べた。また、どんな家庭にも、病人、高齢者、障害者、子供がいることを強調し、助けが必要な人々を少しも煩わせず、実直に支援してきたと述べた。サルイェリで全ての学校を再建し、生徒数70人のクラスが30人に減らし、外国語教育の学校の設備を整えたと説明し、「市民は、この試みに非常に満足しており、この自治体から離れたくないと思っている。区長はこの誤りを正すためアンカラへ赴いた。この誤りは中止される、と信じている」と述べた。
■サルイェル区長は喜んでいる
サルイェル区長のシュクル・ゲンチは、マスラク、アヤズアー、フズル地区がサルイェルへ組み込まれることを聞き、非常に驚き、決定が自身にとって思いがけないことであったと明らかにし、「諸般の問題があるにせよ、落ち着くべき所に落ち着いた」と述べた。ゲンチ区長は、自治体として、この改変要求のために内務省に赴いたが、委員会の決定によってこの要求が却下されたと説明した。また、その後この問題を法廷の場に移つし、ここからも思うような結果が得られなかったとし、「内務省から得た返答の後だったので、昨晩の展開は私にとっても驚くものであった。しかし、サルイェルにとっては経済的な意味で大きな収穫になった」と述べた。
ゲンチ区長は、サルイェル区の北側の区境で長い期間、問題があったとし、区境を改めるため、2回にも及んで内務省へ申請したが、望む返答を得られなかったと繰り返した。また、マスラクとアヤズアーがサルイェルに組み込まれることによって自治体の歳入が大幅に増加するとし、この歳入は都市開発のために使われるとした。区長は、サルイェルの現人口が約350,000であり、新たに加わる地区も入れると50,000増えて、計400,000人になると明らかにした。
「2009年の地方選挙では37.5%の得票率であった。最も身近なライバルであるAKPの得票率は、31.8%であった。差はわずか5.7%である。新しい地区を人口統計的に判断すると、AKPに近い多くの有権者が移るだろうことがわかる。この意味で、あなたがたにとって難しい状況に置かれるのではないだろうか」という問いに、ゲンチ区長は次のように答えた。
■落ち着くべき所に落ち着いた
「政治的評価をしたくはない。ただ、あなたがたが地元で政治的立場に基づいたいかなる行動をとり、今後いかなる行動をとっていくか、そして(有権者への)説得の仕方が重要だ。3年半、サルイェ ル区民は私をとてもよく知り、理解してくれた。私たちは、政治的に民族的ルーツや生活スタイルを基に誰かを差別するようなことは全くなかった。350,000 人の区民の幸福を目的としてきた。このため、選挙で深刻な問題が出て来るとは思わない。」
ゲンチ区長は、自治体のために行った新しい中央管理ビルがサルイェルの最も遠い地点であるアヤズアーの村から1kmの距離にあることに言及した。ここが シシュリから13km離れていることを明らかにし、内務省に行った抗議の要点がこれであることにも言及した。「誰かが政治的にいかなる計算をおこなったのか知らないが、落ち着くべき所に落ち着いた。サル イェルは勝利した。おめでとう。サルイェルは、この決定の後に、本当の価値を目にするだろう」と述べた。
■甘い話はサルイェルへ移された。
テーマに関し、少し前にコラムを書いたヤルチュン・バイェル氏は最近の展開を次のように批評した。
「まず一例を取り上げよう。 昔、ベイオールに属する地区であったギョクカフェスも祖国党(ANAP) 時代に、ベイオールからシシュリへ組み込まれた。ギョクカフェスの「問題」を解決する必要があったためだ。同様に、左派票が優勢のバフチェシェヒルも(イスタンブル広域都市の付属会社である)キプタシュがつくったバシュアクシェヒルへ編入された。残念ながら、政治の世界は、誰の意向も聞かずに、選択を不労所得利益を重んじて一部の人物の利益をはかって行動している。
だが、ここで状況は少し異なる。アヤズアーは、以前サルイェルの地区だったが、シシュリへ移された。マスラクとアヤズアーとフズル地区は、実は以前から物理的にサルイェリへ編入することを望んでいた。サルイェルへより近いからだ。シシュリはというと遠く離れていた。 この編入は無辜のように見えるが、背後に票の計算が働いている。特にアヤズアーは、AKP票の割合が高い地域の一つである。私たちは、過去にシシュリ区長のサルギュルが、選挙でバランスを取るためいかに苦労したかを知っている。サルイェルへの編入は票の移行であると言うことができる。そもそも、共和人民党 (CHP)はサルイェルで僅差で勝利を手にした。実際、最近300,000の人口をもつチョルルが50,000~55,000の左派票が削がれて、4 km離れたところにあるマルマラジクに編入された。そして、チョルルの力は崩された。これはシシュリーサルイェルの出来事に類似している。
新たに第三の橋 が近くにかかることを考えると、サルイェルの不労所得エリアはさらに拡大する。さらにアーオールによるマスラク1453(オフィス・住宅集中)計画はシシュリからサルイェルへ移された。」
■不労所得の高い2つの地域を獲得し、サルイェルを手中に収めることを望んでいる
マスラクとアヤズアーをシシュリからサルイェルへ編入する提案は、CHP党員の怒りを買った。イスタンブル選出のジェラル・ディンチェルCHP議員はシシュリに 関する決定が完全に政治が絡んでいるとし、地方選挙でサルイェルを獲得するため、AKPが計算ずくで実行したと述べた。ディンチェル 議員はこの主張を2009年の選挙結果を用いて説明した。
2009年の地方選挙でCHPは、サルイェル区区長の座を6,000の票(の差)で勝ち取った。CHPの得票率は、37.5%であった一方、AKPの得票率は 31.8%だった。シシュリに属するアヤズアーではAKPの票が120,00であった一方、CHPの票は3,000であった。ディンチェル議員は、「AKPはシシュリ地区を獲得できないことをよく知っている。アヤズアーをサルイェルへ編入すると、同時に12,000のAKP票もサルイェルへ移る。したがってアヤズアーの選挙民が移るだけで、AKPはCHPとの間にある6,000票の差を埋めることができる。アヤズアーとともにフズル地区がサルイェルへ編入された際、AKPはサルイェル区を獲得することになるだろう。その上、不労所得の高いマスラクも加えるだろう」と述べた。ディンチェル議員は、2009年の選挙で、AKPがアヤズアーのほか、フズルとマスラクから得た票も他の政党に勝っていたことに注意を引いた。
内政委員会のメンバーである、ガジアンテップ選出のアリ・セリンダーCHP議員は、当初、AKPの計画は下部委員会の際にこの改変の実行を望んだことを、しかし反対を受け、これを諦めたと説明した。セリンダー議員は、「しかし、計画が委員会の審議の時に再び持ち出された。理由を尋ねた時、この2つの地域がシシュリとつながりがなく、サルイェルへより近いと説明した。しかし、これは私たちにとって説得力のある返答ではなかった。もはや、 AKPが行うすべてのことに疑いをもっている」と話した。
最も多くの住宅はアヤズアーに
マスラクはシシュリで三番目にオフィスが密集する地域に位置する。シシュリ中心部には4873のオフィスがある一方、メジディイェキョイには4599、マスラクには4440のオフィスがある。マスラクにおける住宅数はわずかに406である。シシュリからサルイェルへ編入されるアヤズアーの最も重要な特徴は、住宅の数が最も多い地域であるということだ。アヤズアーには 10231の住宅があり、次に9036の住宅があるギュルバハルと、8146の住宅があるフルヤが後を追う。アヤズアーにあるオフィスは2140である。フズル地区には1222のオフィスと3259の住宅地がある。
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( 翻訳者:細谷和代 )
( 記事ID:28027 )