文化観光省は盗まれた国宝の行方を追っている。海外から返還された多くはアンカラ・ワクフ博物館に展示されている。ウスキュダル・ヴァ― リデ・アティーク・モスクの陶器製タイル板やオスマン朝スルタン・アブデュルメジトの書道板といった貴重な美術品を無料で観覧することができる。
トルコでは数多くの歴史的価値のある美術品がモスクやワクフの倉庫から盗まれ、国外へ持ち出されていた。それらの国々から返還された多くはアンカラ・ワクフ博物館に保管されている。美術品の中には、ヴァーリデ・アティーク・モスクの陶器製タイル板、ディヴリー・ウル・モスク内のヒュンキャル・マフフィル(スルタン専用の礼拝場所)の精巧な木製の欄干5基、アマスィヤにあるメフメト・パシャ・モスクの大理石製のミンバル(説教壇)の扉がある。防犯と自然劣化防止のために古いモスクや礼拝所から、絨毯、キリム、燭台、ムハンマドの髭が納めた象嵌細工の箱やカーバ神殿を覆う布を交換する際の儀礼用のお金を入れる巾着袋が収集され、博物館に展示される。各地方からの貴重な美術品が所蔵されているのに無料で観覧できる。2004年に開館されたこの博物館は、月曜日以外は毎日開館している。
博物館内で一番貴重な一つがイスタンブルのウスキュダル・ヴァーリデ・アティーク・モスクの陶器製タイル板である。建築家スィナンが建てたこのモスクのタイルに書道家ハサン・ウスキュダリが書を記した。紺色の下地に白文字の装飾的なジャーリー・スルス体で、コーランの第39章アッ・ズマル(集団)53節「アッラーは,本当に凡ての罪を赦される」と書かれている。24枚からなるこの陶器製タイル板は、2004年4月29日に盗まれ、2005年に海外から返却された。また他の貴重な美術 品の一つに、イスタンブルのエユップにあるジェゼリ・カスム・パシャ・モスクの陶器製タイル板である。(ビザンツ期の)テクフル宮殿のものであったこのタイル板は、モスク修復の際に用いられたされている。18世紀のカーバ神殿を描いたタイル版は、2003年8月26日に盗まれて2008年にロンドンで発見された。ブルサ のイエニシェヒル・スィナン・パシャ・モスクのタイルも現在は博物館に保管されている。16世紀のイズニク・タイルで装飾されているスィナン・パシャ・ モスクにあるミナーレの呼びかけの朗唱場所の欄干下を飾るタイルの一つも1998年に国外へ流出した。コバルト・ブルーの下地に刀形の葉、蓮、ザクロの花の模様が描かれたタイルは、2003年5月29日に外務省によってロンドンから返還され、ワクフ総局へと渡った。
イスタンブルにあるキャーティプ・ムスルヒデディン・モスクから盗まれた飾り板には、ジャーリー・スルス体で「かれにこそ凡ての称讃あれー預言者ムハンマド」と書かれ、 四隅にロココ調で描かれた花のモチーフで飾られている。これを書いたのはオスマン朝スルタン・アブデュルメジトであった。この作品は2004年に盗まれ、 翌年に発見された。ミラス・パザル・モスクで盗まれた貴重な古い絨毯も博物館に保管されている。ネヴシェヒルにあるクルシュンル・モスク[ダマト・イブラヒム・パシャ・モスク]のカーバ神殿を覆う布も博物館に保管されている。1726年~27年にメフメト・アー普請頭と次席のセルキスが建てたこのモスクに、ダマト・イブラヒム・パシャ が巡礼帰りの土産として[カーバにかけられた]サテンの覆いを授けた。しかし違法ルートで国外へ流出し2004年に国内に返還された。アマスィヤにあるメフメト・パシャ・モスクのミンバルの扉も博物館に展示されている。ミンバルの大理石製で彫刻を施した扉は2008年4月9日にワクフ総局を通じて返還された。
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( 翻訳者:小幡あい )
( 記事ID:28982 )