ファズル・サイに懲役10か月執行猶予5年判決―罪状は「信仰感情侵害」
2013年04月15日付 Hurriyet 紙


音楽家ファズル・サイ氏は、ツイッターへ投稿した内容により「国民の価値観を明らかに侮蔑した廉」で禁錮1年半を求刑されていたが、禁錮10ヶ月に減刑された。この刑は、5年間の執行猶予付きであり、この期間内に罪を犯さなければ、この件は終了となる。サイ氏は最初の会見で、「祖国 のためにとても悲しく思う」と述べた。オメル・チェリキ文化相は、「芸術家が有罪判決を受けることは、私も望まない。しかしいずれにせよ判決は判決だ」と述べた。 映画評論家アティツラ・ドルサイ氏は、禁錮刑について「恐ろしい知らせだ」と語った。欧州委員会もこの判決に反発を示している。

イスタンブル第19簡易刑事裁判所で開かれた公判に、1年半の禁錮刑を受けたファズル・サイ氏の姿はなかった。公判にはサイ氏を提訴したオルクン・シムシェキ氏とアリ・エムレ・ブカウル氏が出席していた。

■「侮蔑や軽視の意図はない」

サイ氏の弁護士メルテム・アクヨル氏は、以前発表した書面と口頭での弁護を繰り返すと述べ、「我々は、本件が技術的にも取り立てて裁判をおこなう必要ないと信じている。依頼人の発言には侮蔑や軽視する意図はない。彼の無罪を求める」と述べた。

■「犯罪における執拗さを考慮した」

もはや調査すべき事項は無いとし、裁判を第3回公判で結審したフルスィ・プル裁判官は、発言が揺らがない事実であること、発言の仕方、故意、犯罪行為の執拗さ、犯罪の時間と場所、被告人の目的と動機を考慮した上で、ピアニスト、ファズル・サイ氏を禁錮8ヶ月の有罪に処した。さらにプル裁判官は、この行為がメディアを通して行われたため、禁錮期間を1,5倍の12ヶ月とした。しかしプル裁判官は、公判におけるサイ氏の態度や裁判への協力的な姿勢に鑑み、最終 的に禁錮10ヶ月に減刑し、刑の執行を延期した。サイ氏が5年間罪を犯さなければ、本件は終了となる。

■サイ氏、初めての会見

10ヶ月の禁錮刑を受けたファズル・サイ氏は、最初の会見で次のように述べた。
「判決を受けて、祖国のためにとても悲しく思う。言論の自由の点で、失望した。罪はないのに有罪判決を受けたことに対し、私個人というよりも、トルコの言論と信仰の自由のために不信感を抱かざるをえない。」

■チェリキ大臣「判決は判決だ」

オメル・チェリキ文化・観光相は、ピアニストで作曲家のファズル・サイ氏が禁錮10ヶ月を求刑されたことについて、「私は疑いなく、誰一人として自身の発言のせいで裁判にかけられるようなことがないよう望んでいる。芸術家や文化人が裁判にかけられ、判決を受けることは、望まない。しかしいずれにせよ判決は判決だ」と述べた。

イギリスの首都ロンドンにて開催中で今年はトルコがテーマ国であるブックフェアに出席したチェリキ大臣は、記者の質問に答えた。大臣は、ピアニスト、ファズル・サイ氏が10ヶ月の禁錮刑を受けたことに関する質問に対し、近年トルコにおいて言論の自由は拡大していると述べ、次のように話した。

「直近の司法改革法案によって言論の自由に立ちはだかっていた障害は多かれ少なかれ排除された。私は疑いなく、誰一人として自身の発言のせいで裁判にかけられ るようなことがないよう望んでいる。芸術家や文化人が裁判にかけられ、判決を受けること、つまり今回のようなことは、望まない。しかし結局の所、司法の前で、芸術家や文化人、一般人、政治家、すなわち我々はみな平等である。判決は判決だ。したがって私に言えることはない。」

チェリキ大臣は、10ヶ月の禁錮刑についてどう思うかと尋ねられると、「司法官が評価すべきことだ。私はいかなる国民、芸術家、文化人、政治家についても、つまりいかなる差別もなく、すべての国民について、言論の自由に関する問題を抱えることがないよう望んでいる。彼らが裁判にかけられたり、有罪になることは望まない。しかしいずれにせよ判決は判決だ」と答えた。

■ツイッターでオマル・ハイヤームの四行詩をシェア

ファズル・サイ氏が、ツイッターで引用し問題となったオマル・ハイヤームの四行詩の一節は次の通り。
「川には葡萄酒が流れているという。極上の地は酒場なのだろうか?」

■アティッラ・ドルサイ氏「恐ろしい知らせだ」

先日、エメキ映画館を救うために行なった活動により職を失ったアティッラ・ドルサイ氏が、サイ氏のニュースを聞いて放った最初の言葉は「恐ろしい知らせだ!」であった。

ドルサイ氏は、サイ氏が受けた判決とトルコの文化・芸術界における負の展開を、次のように評した。

「いかなる理由があろうと、世界的に著名な芸術家にこのような刑罰を与えることは、理性的なことではない。トルコは国際的な名誉を得た芸術家に、国家の手もしくは世論キャンペーンによって罪を着せてきた。ユルマズ・ギュネイからオルハン・パムク、ヤシャル・ケマルからジャン・デュンダルに至る、多くの知識人を標的に、様々な方法で私刑キャンペーンを張ってきた。ファズル・サイ氏もこの連鎖の最新の一人だ。しかしこれがどこかで変わり、社会からあらゆる形で大きな批判を受けると信じている。」

■新聞評議会「言論の自由は好ましい思想のみに適応されるものではない」

新聞評議会は、著名なピアニストで作曲家のファズル・サイ氏が、「一部の国民の
宗教的価値観を明らかに侮蔑した」として開かれた裁判で禁錮10ヶ月を受けたことについて、コメントした。書面による新聞評議会の声明では、次のように書かれていた。

「今日、世界的に有名なピアニスト、ファズル・サイ氏が、ツイッター上の発言のために、『宗教的価値観を侮蔑』した廉で有罪判決を受けた。サイ氏が受けた判決は、トルコにおける言論の自由の問題が、なぜ『司法改革』のみでは解決されないかという問いに対し重要な例を示している。言論の自由に関する我が国の捉え方の問題がこうした裁判で一層明確になった。言論の自由とは好ましい思想のみに適応されるものでないと理解することは、トルコの民主主義が正常に機能するために不可欠である。問題の解決のため、言論の自由を制限している法律上の規定に直接メスを入れなくてはいけない。」

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:29684 )