■自由シリア軍がヒムスへの道を遮断したことを受け、ダマスカス中心部で化学兵器使用
2013年6月1日『アル=ハヤート』
【ダマスカス:バースィル・ムハンマド】
ここ数週間の間にシリアで起きている事件の流れに、大きな変化が生じている。アル=クサイルでの戦闘やそれへのヒズブッラーの公然とした基幹的な戦力としての正式な介入に関してではなく、首都ダマスカスの中心部で起きたことに関してそれが伺える。ハラスタの反体制活動家らの発言によると、政権側が使用した有害ガスの影響が首都中心部の各地区まで及んだという。それは国家安全当局の支局、アル=ハティーブの構成員やアル=アッバースィーン地区、アッ=ティジャーラ地区、アル=アダウィー地区、アル=クスール地区の住民までが負傷する程に及び、その影響を受け彼らは、赤新月社の診療施設、フランス病院、アル=ハヤート病院に輸送された。
この事件は、先週ヒムスとダマスカス間を結ぶ国道のハラスタ付近で起きたことを受けて始まった。この事件は、シリア自由軍に属する部隊が政府軍の検問所に到達し大きな打撃を与え、反体制側の部隊がダマスカス郊外の国道沿いにある水管理公社の支配権を握ったというものである。
また目撃者の証言によると、政府軍の兵士の遺体は道の両側に放置され、通行車はそれらを避け通行していた。また証言は、焼けこげたタンクと車が戦闘の激しさを明らかに示していたとしている。
サラミーヤ市のアフマド氏は、以下のように述べた。「2013年5月25日土曜日、われわれがサラミーヤからダマスカスに向かっている間に、ヒムスとダマスカス間の道は、まるで戦場と化したようだ。われわれがハラスタ地区に到着する頃、バスは狙撃や交戦を恐れ、走行速度を上げた。そしてこの地区に来るとバスは回り込むように走り始めたが、これは、あとでわかったことであるが、道路両脇に放置されている遺体を避けるためで、これらの遺体は腐り始めていた。またその他、燃えた戦車や車や軍の車両なども認められた。
政権は、ダマスカスとヒムス間の道を遮断する考えを捨ててはいないようだ。それは高速道路のその道の部分は政権側部隊にとって戦略上重要だからだ。自由シリア軍の戦闘員への対抗するために、政権側は強力な部隊をハラスタに向かう国道につぎ込んでおり、2013年5月26日の早朝の毒ガスを含む爆弾の使用なしには事態は終止しなかったのである。
この爆弾は、活動家のYouTube上の投稿によれば、ハラスタやジャウバル、アル=カーブーン地区に投下された。ビデオには、救急隊が子供も含む怪我人の救助する様子が写され、その怪我人らには毒ガスにやられたと思われる症状が見られた。しかし、毒ガスの影響は、もうハラスタに限られておらず、アッ=ティジャーラ、アル=アダウィー、アル=クスール、アル=アッバースィーンなどの、ダマスカスの各地区に達している。これらの地区の住民は、息苦しさやけん怠感、おう吐などの症状を訴えた。
(中略)
翌日、いかなるシリアの幹部も起きたことに関しての弁明も説明も行なわず、事件は不透明なままだ。ダマスカスはそれまでの数カ月間と同様で、見る限り普通の生活が続いている、この普通の生活のくたびれた薄い膜の裏で、ダマスカスの住民の頭には数多くの疑問が渦巻いていた。住民らは、いまのこのバランスが不安を伴う、偽りだと分かっているのだ。
(中略)
町では、通りや市場に通行人や車や商売人が溢れ、通常通りの生活が行なわれているように見える。しかし、この風景は、いつ火がついても不思議ではない不安で崩れやすいバランスの中でのダマスカスの生活の実態を表しているわけではない。
(本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。)
原文をPDFファイルで見る
( 翻訳者:尾崎仁美 )
( 記事ID:30159 )