6月1日夕方の報道
タクスィム・ゲズィ公園で月曜日にはじまり、5日間、徐々に大きくなっていった抗議行動に対し警官隊が使った暴力は、10月29日共和国祝典でそうであったように、ギュル大統領の介入により沈静化した。以下に、月曜日以来の出来事をまとめてみよう。
■5月27日月曜:公園の壁が壊され、抗議の座り込みが始まった
トプチュ兵舎再建建設で問題となっているタクスィム・ゲズィ公園のアスケル・オジャウ通りに面した壁の一部(3メートル)が、タクスィム歩道化工事を請け負っているカルヨン建設社によって、22時ごろに壊された。5本の樹木が引き抜かれた。この事態をみたタクスィム連帯プラットフォームのメンバーが重機の前にたち、阻止しようとした。このプラットフォームには、トルコ建築家技師商工会議所に属す諸会議所をはじめ、「反資本主義ムスリム組織」までの、多くの団体・組織が参加している。
タクスィム・ゲズィ公園が、タクスィム歩道化計画には含まれていないと主張する50人ほどの活動家グループは、公園のなかにテントをはり朝まで監視活動をはじめた。ソーシャルメディアを通じて、支援を呼び掛けた。
■5月28日火曜:警官隊が、催涙ガスの使用をはじめる
朝早くに、多数の市民団体の代表らが文化財保護第二地区委員会にいき、工事の中止の請願をする一方、公園の抗議運動への参加者は、周辺に住むボランティアの人々の参加をえて、増加しはじめた。
■赤い服の女性がシンボルに
昼頃に、工事の作業員の作業が続けようとすると、抗議運動の人々と警備の警官の間でもみ合いが起こった。そこに機動隊がやってきて、重機の前にたち工事をやめさせようとする抗議者に催涙ガスを放った。警察の催涙ガスと放水車の水の前に立ちはだかった赤い服の女性は、タクスィム・ゲズィ公園運動の、もっとも重要なシンボルとなった。
■トルコの、イェルツィン?
工事が続いている最中にゲズィ公園にきた平和民主党のスッル・スュレイヤ・オンデル議員は、警察のバリケードをのりこえ、重機の前に立った。「(この公園がなくなると)一息つける場所さえなくなってしまう。この工事は違法だ。私を倒さないと、先には進ませない」といったオンデル議員は、トルコのイェルツィンとして歴史に名を刻んだ。
オンデル議員に続いて公園に入ったのは、共和人民党のギュルセル・テキン副党首だった。ゲズィ公園の再開発に共和人民党も賛成票を投じたではないかとの問いに対し、「ここで行われていることに共和人民党が一票でも投じたことが証明してみろ、(証明されたら)政治を引退する」と述べた。
■ギュナイ元文化相、「征服者メフメト2世のことも、創造者のこともわかっていない」
ゲズィ公園では29日中にらみ合いが続いていたが、そのさなかに、元文化観光相で公正発展党の国会議員であるエルトゥールル・ギュナイは、トゥイッターのメッセージで、反対運動を支援した。「イスタンブルの征服記念日に、イスタンブルにショッピングモールを作るために樹齢75年の木を切ろうとする連中は、征服者メフメト2世のことも、創造者の言葉もわかっていない。心が痛み、非常に心配している」とし、その後もトゥイッターからの支援をつづけた。
■テントの抗議者、500人を超す
道路工事のために樹木を伐採することを抗議するタクスィム連合プラットフォームの約500人のメンバーは、公園内にテントをはった。朝まで見張り行為をつづけたグループに、スッル・スュレイヤ・オンデル議員も加わっていた。
■5月29日水曜
警官隊は、朝5時ごろにテントにいた人々を撤去しようとした。この時、再び重機での作業が始まり、アスケル・オジャウ通り側の公園一部が壊された。テントは燃やされた。
■首相、「好きにすればいいが、決定はもう下されている」
イスタンブルの征服記念日に、ギュル大統領、エルドアン首相をはじめ多くの閣僚が参加し、ボスフォラス第三橋の起工式が行われた。ヤヴズ・スルタン・セリム橋となづけられた橋の起工式で、エルドアン首相は、デモ参加者を批判した。「タクスィム・ゲズィ公園がどうのこうのといわれている。そこにきて、デモをするとか、なんだとか、かんだとか。好きにすればいい、しかし我々はもう決定を下した。決めたとおりにやる。もし歴史を尊重するというなら、広場の歴史を調べてみればいい。我々はあの場所に、歴史を再現しようとしているのだ。(木を切るなというが)公正発展党になってから25億本の木を植えた。環境保護主義の立場にたってこの工事をすすめているのだ」と述べた。
首相がこう話している間にも、市民は、どんどんタクスィム広場に集まりはじめた。警官隊の、催涙ガスと放水による阻止にもかかわらず、参加者の数は夕刻にはさらに増した。
■映画「征服1453」主演のエヴィン、「第三橋の起工式でなく公園に来た」
デモには、単に市民だけでなく、映画、舞台、音楽の世界での有名人も支援した。ソーシャルメディアを通じて支援したり、自ら公園にきてデモに参加し、警官隊の暴力と公園がなくなることに抗議した。映画「征服1453」で主役を演じた俳優のデヴリム・エヴィン氏も、征服記念日の祝典よりも、自分はイスタンブルを殺す殺人に目をつぶらない考え方に近いとのべ、ゲズィ公園にやってきた。
著名なコメディアン・ジェム・ユルマズも、息子にあてたトゥイッターメッセージで、「最後におきることは―(政府は)国民に「市民ナンバー」をわりふり、家々に配管する。次に、催涙ガスを大量に買い入れ・・・。そうすれば通りにでる必要もない。愛する息子ケマルよ!正しい人間になれ、正義は常に勝つ、常に!」という、人々の記憶に残る言葉を記した。
■クルチダルオール党首も公園へ
公園を訪れた突然の客の一人はCHPのケマル・クルチダルオール党首だった。抗議の人々を支持するとしたクルチダルオール党首は、CHPの議員も毎日、監視にあたると述べた。夜の見張りには、この夜は、俳優や音楽家など、多くの芸術家が参加した。
■5月30日木曜
公園での工事を阻止しようと見張りを続けていたデモ隊は、再び朝5時ごろに、警官隊の催涙ガスと放水車の水で起こされた。重機が、途中で撤去が止まっていた壁を完全に取り除く一方、テントは、私服で、手にトランシーバーを持った、青いシャツの人々によって壊された。
公園に朝、最初に来たうちの一人は、またもや民主平和党のスッル・スュレイヤ・オンデス議員だった。公園に入り、工事が行われる場所に座りこんだオンデス議員を、警察署長が説得しようと試みた。しかし、成功しなかった。警官と重機はいったん公園から去った。オンデル議員は、トゥイッターのメッセージで、「議員のだれか、ここに来れないのか?この先のことが不安で、ここを去ることができない。ペネルディスカッションに行かなくてはいけないのに、ここを出られない」と書いた。
■「大統領、仲介を!」
オンデル議員の監視活動を、CHPのウムト・オラン議員とギュルセル・テキン副党首が引きついだ。テキン氏は、大統領が介入すべきだとし大統領との面会を求めたと発表した。ウムト・オラン氏は、検察に訴え、「ここで行われていることは違法だ」とした。
警官による強行な対応が続いたが、夕方仕事がおわる時間になると、さらに多くの人々がタクスィムに集まった。イノニュ・スタジアムで行われたリハンナのコンサートを見た人たちや、舞台を終えた俳優のゲンジョ・エルカルも、ゲズィ公園に向かった。唯一変わった点は、ゲズィ公園の「見張り」の数が、非常に増えたことだ。
■ソーシャルメディアで情報共有
タクスィムでの抗議運動をテレビは大きく報じなかったが、デモ参加者同士も、またトルコや世界中の同胞もメールを使って情報共有をした。とくに、Facebook とTwitter を通じて、ヴィデオや写真、情報が共有され、警官の暴力に対する対応策、医師や弁護士との連絡手段、インターネットへの接続のためにデモ実施地域のカフェやレストランのインターネット・パスワードなどが、何千人もの人によって共有された。
■5月31日金曜:オンデル、シュクら、何百人が負傷
デモへの参加者が日がたつにつれて減少するどころか、増す一方だったことは、警官隊の力の行使を増加させた。催涙ガス、圧力水に加えて、プラスチック弾がつかわれ、何百人もの人がけがをし病院に運ばれた。10人以上の重傷者がいるとされ、暴徒化を防ぐため死者の数が隠されているとの情報が、一日中、メールをとびかった。病院に運ばれた人のなかには、BDPのオンデル議員、新聞記者のアフメト・シュクらも含まれた。
■EUやアメリカから、批判
EUからは、事件に関し、全ての行為がヨーロッパ人権裁判所の基準に沿った形で行われれるようにとの要請が行われた。欧州議会のトルコ調査官でオランダ・キリスト教民主党のRia Oomen-Ruijtenは文書による発表を行い、事態を憂慮していると述べた。欧州議会は、依然から警官の過剰な暴力使用への憂慮を伝えているとするRia Oomen-Ruijten氏は、抗議活動も含めた集会の自由に配慮がなされるべきであるとした。
また、アメリカ国務省報道官とアメリカ在アンカラ大使も発表を行い、この種のデモ行動が民主主義の求めることであると強調し、無制限な介入は正しくないと考えると発表した。
■ようやく、記者会見
連日騒動が続いているのも関わらず、責任者が表にでて話さないことに批判があつまると、ようやく金曜日になってイスタンブル広域市カーディル・トプバシュ市長と、アヴニ・ムトゥル県知事が記者会見をした。二人とも、環境保護の立場はとるものの、この抗議活動は通常の環境保護運動の範囲を超えていると主張した。トプバシュ市長は、この工事は、ショッピングモールの工事ではなく、タクスィム歩道化計画の一部であると強調し、ムトゥル県知事は負傷者や逮捕者の人数を発表した。
■突然の、裁判所決定
イスタンブルの第6行政裁判所は、驚きをもった迎えられる決定をし、トプチュ兵舎再建に関する行政措置を停止する決定をした。しかし、この決定は、警官の介入とデモの拡大を止めることはできなかった。警官隊もデモ隊も一歩もひかなかった。
■イスタンブル以外に波及
むしろ反対に事態はタクスィム広場を超えて広がっていった。イスタンブルの各地だけでなく、アンカラ、イズミル、エスキシェヒル、コンヤ、アフヨンのような何十もの県、さらにアムステルダム、パリ、ニューヨークのような町でもゲズィ公園への支援のデモがはじまった。「トルコのタフリール広場」との比喩が行われ、外国メディアでは「『トルコの春』がきた」とのコメントがなされ、注意をひいた。
イスタンブル建築家会議所のエユプ・ムフチュ会頭は夜22時にトプバシュ市長に電話をし、憲法と法が市長に与えている権限を使って警察の暴力を止めるよう求めた。トプバシュ市長は、「すぐに県知事に連絡する」答えたが、時間がたっても警官隊の力の行使は一方に止まらなかった。時間の経過とともにけが人の数も増えた。デモの負傷者に対し、タクスィムのホテル、カフェ、国際アムネスティ事務所などが、場所を提供した。デモに参加した多くの医師が、けが人の治療にあたった。また必要な物資について、ソーシャルメディアを通じて情報が交換された。
■スルタン・スレイマンもそこにいた
デモに加わった有名人の重鎮は俳優のメフメト・アリ・ボラだったが、金曜日には、TVドラマ「華麗なる世紀」でスルタン・スレイマン1世を演じるハイト・エルゲンチが注目を集めた。
■6月1日土曜―そして、正義は勝った―サッカー応援団も、アッラーアクバルと叫んだ民族主義ユルクジュも、催涙ガスを浴び・・・
警官隊のデモ隊に対する暴力は朝まで続いた。サッカーのライバルチームの応援団が仲良く行動していたのが注目を集めた。共和国通りのデモ隊は、警官隊の暴力にハライの踊りを踊って抗議した。
一方、カドゥキョイ方面からきた何千もの人は、ボスフォラス大橋を歩いて渡り、ベシクタシュを通ってタクスィムにでようとした。しかし警官隊はこのグループにも厳しい態度にでた。イスティクラール通りからタクスィム広場にでる道は封鎖された。
10時半ごろに、フェネルバフチェ、ベシクタシュ、ガラタサライの3サッカーチームの応援団に警官隊が介入した。タクスィム教育研究病院の側から広場にでようとした人びとに対する催涙ガスの放射は、病院にいる病人にも被害を及ぼした。
警官に催涙ガスを投じられたグループの一つは、「神の名のもとに!神は偉大なり」と叫ぶ民族主義右派ユルクジュのグループだった。
■首都アンカラでも衝突
ゲズィ公園でのデモに対し、昨日、クウル公園で支援しようとしたアンカラの人々も催涙ガスの被害者となった。しかし催涙ガスにめげないアンカラの人々は、今日もクズライに集まり、首相府に向けてデモ行進をしようとした。これを阻止しようとした警官隊は、クズライへの進入を阻止し、地下鉄の出口を封鎖した。さらには、首相府へ進入するのを阻止するため軍にも援助を要請した。
■アルンチ副首相、「ショッピングモールを望まない、と言っている人たちには、何ができるのかの説明を」
ビュレント・アルンチ副首相は、昨日、「ゲズィ公園に、彼の息子がショッピングモールを建設する」という噂に対し、トゥイッターを通じて、きつく反論し、否定した。今日は、エルドアン首相の発言とは逆に、第6行政裁判所がタクスィム・ゲズィ公園についての行政を停止する判決を下したことを「正しいと思う」と述べた。アルンチ副首相は、「ショッピングモールは望まない、と言っている人たちには、催涙ガスを浴びせかけるのではなく、何ができるのかの説明しなくてはいけない。各自が好きなことをいうのは正しいことではない。ここに、ショッピングモールができるのか、あるいはトプバシュ市長がいっているように、これは単なる歩行者専用化のプロジェクトなのか、はっきりしていない」と述べた。
■チェリキ副党首、「ショッピングモールができるなら、まっ先にいって反対する」
アルンチ副首長につづき、公正発展党ヒュセイン・チェリキ副党首も、トゥイッターを通じて行った発表で注目を集めた。チェリキ副党首は、「タクスィムで緑が切られ、ショッピングモールがつくられるというなら、まず私がいって、そこに横たわって反対する。それに、警官の皆さんにもいいたいことがある。タクスィムにいるイデオロギーに染まった連中は、警官が厳しい対応をすればするほど、勢いづくのだ」と述べた。
■エルドアン首相、「トプチュ兵舎計画は、天から稲妻にのって降りてきたわけではない」
4月29日に、「心は決まっている。決めたとおりに実行する」と述べたエルドアン首相だったが、今日、トルコ輸出業者会議で行った演説では、ソフトな発言が注意をひいた。トプチュ兵舎再建の計画が天から稲妻のように降りてきたわけではないとし、必ず作るが、(再建された兵舎は)ショッピングモールとなるかもしれないし、市史博物館になるかもしれないと述べた。デモ参加者に対しては、「頼むから、やめてもらいたい」と呼びかけた。
カドゥキョイで集会を計画しているCHPに対しては、あなたたちが10万人集めるというなら、自分たちは100万人をあつめてみせる、という言葉を残したエルドアン首相は、CHPがカドゥキョイ集会を中止し、そのかわりにタクスィムに向かうという情報を発表した。
■司法決定を、批判
エルドアン首相は、科学普及協会İlim Yayma Cemiyetiの総会で行った演説で、テクスィムの工事に中止命令をだした裁判所決定を批判した。エルドアン首相は、「建設が始まったというのか?入札が行われたというのか?何を中止するというのだ。ここには、山のように疑問符がつく」と述べた。
■ギュル大統領、仲介!
ギュル大統領は、昨日来、憂慮される規模に達した事件を沈静化させるためために、皆にそれぞれ、重要な責任があるとの発表を行った。民主主義、多元主義、法の優位を信じ、この道にそってさらに進もうとしているトルコにおいて、多くの異なる意見や、重要案件で対立する意見が生まれることはごく自然なことでありとするギュル大統領は、「これは、民主的社会の最も大きな豊かさである」と述べた。
警官隊が任務を遂行するにあたって、いつにもまして慎重であることが求められるとしたギュル大統領は、今朝、首相をはじめ、関係する政府や国の関係者と会見し、この件で意見の一致をみたと発表した。「平和の確保のために、皆がそれぞれの任務を果たすものと信じる」と述べた。
■15時40分に撤退の報
ギュル大統領の発表の直後に警察隊がタクスィム広場を後にし始めたとの報道が入った。撤退に際しては、デモ隊と警察隊の間で小規模な衝突がおきた。警官隊が広場をあとにすると、かわりに何千人もの人がタクスィム広場に入ってきた。公園は、まるで祭の様相となり、そこには多くの芸術家の姿も見られた。
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( 翻訳者:和泉由美子 )
( 記事ID:30176 )