CHPの「ゲズィ精神」選挙戦略
2013年07月22日付 Cumhuriyet 紙

9月からトルコ国内では、地方選挙に向けた動きが本格化する。この選挙が他の選挙と最も大きく異なる点は、トルコで例を見ない「反乱」のシンボルとなった「ゲズィ公園抗議運動」の発生後、初めて行なわれる選挙であるということである。ゲズィ運動の中で「自由」の要求に耳を傾け、国会議員や党幹部らとともに「ゲズィの若者」を理解しようと努めてきた共和人民党(CHP)は、次の地方選挙の戦略もこの「ゲズィの精神」の上に築こうとしている。
共和人民党の「選挙対策本部長」の立場にあり、党の地方運営に責任を持つギョクハン・ギュナイドゥンCHP副党首は、ジュムフリイェト紙に対し、CHPの選挙準備、戦略、立候補の舞台裏について語った。

‐地方選挙に向けてどのようなことをされていますか?
‐我々の党は、2012年5月23日に地方選挙の戦略に関する文書を発表した唯一の党です。この文書で我々は23カ月間に地方選挙に向けていつ何をするかということを、党と国民に向けて明らかにしました。我々は手探り状態のまま何かをするということはありません。2011年の秋からアンケートを取り、意見を聞きながら、CHPは自らの地方政策を舵取りしてきました。出馬を目指す幹部たちは7月15日までにその役職から辞任しました。7月31日までトルコ全国で立候補のための候補者の出願を受け付けています。これは他のいかなる政党もしていないことです。2013年8月1日に正式な立候補者候補の出願が出揃います。候補者の幾人かは、傾向分析やアンケートによって、党と国民が承認し支持する候補者を見つけ、選定します。CHPがAKP政権の行方を占う2014年3月30日の地方選挙で勝利するか否かは、今後の9か月にかかっています。

■音楽が変わればダンスも変わる
‐ゲズィ・プロセスは、選挙キャンペーンに反映されるのでしょうか?CHPはそこからどのような戦略を編み出す
のでしょうか?
‐「音楽が変わればダンスも変わる」と言うでしょう。トルコで昔ながらの振る舞いや言い回しによって続いてきたもの が、時間の中で溶解し洗練される、そんな新しき、そして素晴らしい時代に我々は突入しようとしています。ゲズィ運動の参加者たちは、この「音楽の変化」に大きく貢献しました。長年レジェプ・タイイプ・エルドアン首相を「独裁者」と批判してきたCHPは、このことの具体例 (訳注:首相がゲズィ問題などで見せた強硬な姿勢を指すと思われる)によって内外に広く理解されるようになりました。地方民主主義、平等、自由、兄弟愛、公正、助け合い、若さ、進歩主義、テクノロジー、愛、革命・・・。これら全ては、CHPとその構成員が繰り返し訴えてきたことです。我々は各地の「ゲズィ運動」の場で、これが若者と自由な同胞たちによって、とても巧みにそして政治の最も美しい手法である「ユーモア」の手段を用いて主張されるのを目撃しました。「音楽の変化」に貢献したCHPは、他のどの党よりも「新しい音楽」にふさわしいダンスを踊ることができます。我々は地方行政の刷新や、ふさわしい形で構成されたメンバーとともに、新しい音楽とダンスを発見しつづけます。

■時代の精神
‐CHPの正式な選挙キャンぺーンはいつ始まりますか、またキャンペーンのテーマは何になるのでしょうか?
‐9月の初めに発表します。笑顔にあふれ、市民の側に立った、人を包み込むような新しいキャンペーンです。2004年や2009年とは異なるがCHPの原則に沿い、そこに「時代の精神」を吹き込んだようなキャンペーンです。ヒントは先ほど申し上げた『音楽が変わればダンスも変わる』です。

■「民衆のパワーを見せつけよう」
‐そのメンバーに「新しく」加わるのは誰ですか?女性や若者の立候補に対し「ポジティブ・ディスクリミネーション(積極的差別)」を行いますか?
‐女性や若者が候補者として立候補する際、準備金は徴収しません。このことはCHPがたえず財政難を抱えていることを考えると、重要な決意の表れであると見なされるべきです。我々は時代の原動力である若者と女性を母艦へ招いています。知識人や、芸術家、他者化されているもしくは差別されていると感じている全ての同胞たちを一つにし、「他者」がもつ力 、「民衆」がもつ力を、示すべき人々に示せるように、彼らをCHPへ招いています。
‐アラボラ氏はCHPから立候補するのでしょうか?
‐メフメト・アリ・アラボラ氏は、首相が若い芸術家を直接標的としたことの象徴になりました。我々はアラボラ氏を含め、自由な芸術家的精神と知的な態度を決して失うことのない、全ての仲間に対し、我々は、政治の場でもっと積極的に行動するよう求めています。また、このアルボラ氏の事件を機に、全ての人々に対し、自由と民主主義のために、直接的であれ間接的であれ、ともに戦おうと呼びかけています。
‐選挙では「イスタンブルを制す者が政権を獲得する」という見方がされています。(CHPの立候補者として)様々な人の名前が囁かれています。ムスタファ・サルギュル氏、ムハッレム・インジェ氏、シャファク・パヴェイ氏、ジャン・アタクル氏…。最も近いのは誰でしょうか?
‐今はまだ立候補の候補者を募る段階です。私が特定の名前を口にしたり、候補者を決めつけたりすれば、公正とは言えないでしょう。イスタンブルでは広域市としても各区のレベルにおいても、有権者の心をつかんでいる者もいれば、つかんでいない立候補候補者も多数存在します。これはCHPの人材の豊かさや可能性の表れです。しかしイスタンブルでは9月以降、広域市と各区の両方のレベルにおいて選挙に向けた体制が形成されます。我々はトルコ全土で1,396地点で選挙を戦います。9月から始まり1月まで、CHPは候補者を鍛え上げます。

■公正発展党(AKP)へ投票した人の半数がCHPに乗り換える可能性
‐公正発展党支持者の「半数」はどこへ向かうのでしょうか?アンケート結果から、CHPが地方選挙に勝利すると確信されていますか?
‐我々は「今、総選挙もしくは地方選挙が実施されるならば…」といった質問が並んだアンケート調査を継続的に実施しています。地方選挙においても総選挙においても、我々は重要な躍進の時期にあります。そもそもCHPは、総選挙よりも地方選挙で獲得する票が4,5ポイント高い傾向があります。CHPは今日、総選挙 において獲得票数を伸ばしつづけており、地方選挙においても、細心の気配りを行ないながら活動すれば、CHPが勝利するはずだと私は確信しています。
AKPの「ミッリー・ギョリュシュ(国民の視座)」の伝統を支持する中核票以外に、様々な理由によりAKPに投票した有権者が、ゲズィ問題や対シリア政策や経済の動向といった点で何かしらを感じるものがあったと考えるのは正しいでしょう。より良いトルコで生活していくためにかつてAKPへ投票した人々も、もはや今日のAKPではその実現が不可能であると考えているはずです。AKPへ投票したのは、トルコの有権者全体の50%ではありません、43%です。そのうちの半分が、AKPが掲げる世界観を支持したからではなく、他の理由によってAKPへ投票したとする調査結果があります。そしてこの「半分」が、もはやAKPを理想的な政治ができると見なしていないことを、我々は知っています。したがって我々はAKP支持者の20%が他政党へ乗り換えるのではないかと考えています。こうした人々が投票を行なう動機が「国を良く治めること」であるなら、その大部分がCHPに乗り換えるのではないかと思います。

■「我々が連携するのは国民だけ」
‐CHPは、地方選挙で民族主義者行動党(MHP)と手を組むのですか?
‐それはタラフ紙の「空想の産物」ですね。あの記事は報道ではなく、単なる空想の産物に過ぎませんでした。政治工作では選挙を勝てません。連携が結果を生むわけではありません。CHPが連携するのは国民だけです。
我々は正しい計画を立て、国民たちと連携することに力を注いでいます。
有権者には「最善の選択肢」と「最悪の選択肢」があります。最善の選択肢である政党が選挙で「勝てそう」であれば、その党へ投票します。しかしその党が勝てる見込みがなければ、最悪の選択肢である政党に勝つことのできそうな「二番目に良い選択肢」へ乗り換えます。我々が目指すのは、「最も理想的な」党として選挙に臨むこと、そしてCHPが最善の選択肢の党と二番目に良い選択肢の党の両方になることです。
‐CHPの外から、それも中道右派から立候補者を出すのではないかと噂されていますが。
‐CHPの党内には多様で豊かな人材がいます。我々は、国民の優先事項に関して繊細な感覚を持ったあらゆる層の人々と働いています。しかし「私はこの地区から票を獲得したい。だからここの代表者をそこへ移して、私がここの票を取ろう」というようなやり方がとられるとは決して考えないで下さい。このような考え方は誤っています。現実を見れば、そのようなわけにいかないことが分かります。無理やり立候補者を移しても成功に結び付くとは考えていません。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:30916 )