「偽り」産業…ネット上での世論の誤誘導
2013年08月30日付 Al-Ahram 紙
南アフリカ市民の写真がエジプト人の写真として使われた
南アフリカ市民の写真がエジプト人の写真として使われた

■「偽り」産業…ネット上での世論の誤誘導

【ハーリド・ガマリー】

世界中で何十億人もがソーシャルネットワークサイトを利用するなか、メディアの影響力をめぐる大規模で影響力のある再分配の動きが始まった。これは、一般市民と、かつて世論の醸成を独占してきた政府や諸機関、諸企業といった従来的なメディアの守護者の間での再分配である。代替メディアや大衆メディア、市民ジャーナリズムとして知られているものが出現して以来、近年こういった種類のメディアの役割が増大しているが、それは従来型のメディアが紛争の報道を受け持つなかで、受信者に対して客観性や信頼性にマイナスの影響を与えていることが背景にある。

世論を形成する動きはより相互作用的なものになった。もはや受信者は読んだり見たりしたものを事実かどうか受動的に捉えようとしない。むしろ世論形成の一翼を担い、完全に自由に、ブログやソーシャルネットワークサイトでの写真やショートメッセージの投稿を通して彼らの見解を示すことにより、それに影響を与えている。そこでは、情報をほかの人々と共有することによって影響を与えたり、受けたりする。またニュースサイトから発信されたニュースや記事へのコメントにも、サイトの管理者が定めたルールのもとで自由に参加している。

インターネット上の世論の出現と形成の速さは、両刃の剣である。事実だけでなくうその情報もあっというまに世界中のネット利用者に広まる。そこでは、今までにないほど劇的かつ明白に、報道合戦や、素早い(ニュースの)伝達や影響、既に意図された計画に対する補助の優先が、信頼性と客観性を犠牲にして行なわれ始めているのだ。

一方で「デジタルの成熟」とでも名付けるべき大衆メディアの役割の増加が顕著になり、インターネット利用者層の意識レベルが上昇した。また同時に、他者に情報を伝達する前に、その情報源の信頼性や、あれやこれやで伝達されたものの正否を確かめることなく、読んだり見たりしたものを再び伝達したり、再び受け入れたりすることを拒絶する者が現れて来ている。

この成熟度にはリビア紛争と、シリア・エジプトにおける事件をめぐる世論の形成に関しては違いが見られた。例えば、情報源の調査に特化したページが若者たちによってフェイスブック上に作成されるなどの個々の取り組みが現れた。これは、写真やビデオ、ニュースなどは改ざんされたものか、事実か、うそかを区別するためのものである。これらの取り組みが与える影響は、読んだり見たりしたものが正しいか間違っているかに関わらず事件に対して既に立場が固まっている一部の受信者に関しては限定されたものになるかもしれない。また出来事の真実を理解しようとしている受信者の立場にとってこの影響力は大きく、彼らの混乱の程度を減らすことができる。この層こそが政府や企業、政党、報道機関、ジャーナリストたちすべてがさまざまな方法で影響を与えようとしているものなのである。

(後略)



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:袖山結生 )
( 記事ID:31308 )