ヨルダン:ザアタリ・キャンプのシリア人花嫁たち‥難民としての痛みの中で
2013年10月03日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ヨルダン:ザアタリ・キャンプのシリア人花嫁たち‥難民としての痛みの中に埋もれる喜び
【アンマン:ライス・ジュナイーディー、ザハラー・ヤーマーン】
ロウ人形の花嫁のように鏡の前に彼女は腰を下ろす…そしていくつもの痛みを負った自分のからだを包む白いウェディングドレスを見る。純白のドレスと白い経帷子の間の違いは消え失せていた。彼女には、かの地でなくした愛しい人の体を経帷子(きょうかたびら)で包む機会すらなかったのだ…。彼女は顔に紅や、シャドウをつけるために自身を美容師に委ねる。彼女の粉々になった喜びをメークアップで回復することを望んで。難民であることの痛みで殺された喜びを…。
彼女たちは、ヨルダン北東部に位置するシリア人難民のためのザアタリ・キャンプに暮らす花嫁たちだ。この場所で彼女たちは、ふつう若い女性が「人生の喜び」と呼ぶ日を難民の痛みと愛するものの喪失によって迎える。しかしながら、彼女たちにとって結婚とは自分自身をゴシップや辱めから防御するための「必要悪」であるのだ。
サーラ・ムハンマド(19歳)は、シリアのダルアー市出身で、ザアタリにあるシリア人の婚礼美容店で働いている。ここでは衣服から美容器具など、基本的な婚礼用品を売っている。
サーラはアナトリア通信の女性レポーターに次のように話した。「私は母や兄弟たちと一緒にシリアに帰るのを拒んだ後、だいたい一年くらいキャンプで父と一緒に暮らしています。この店では数カ月前から働いていて、いつも避難民の花嫁さんたちの悲しみを見てきました」
「花嫁さんたちは万事揃えるためにいらっしゃいます。ウェディングドレスの購入やレンタルに始まりますが、それは花婿の経済状況によりけりです。ドレス購入には240ディナール(342ドル)かかりますが、買わないでレンタルの場合は15ディナール(21ドル)だけで済みます」とサーラは説明した。
彼女は「一週間にだいたい13人の花嫁さんが来店します。彼女たちはみんな酷い精神状態にあります。兄弟や父親を亡くされた方もいます。だから彼女らがどのように感じているかわかるでしょう。また、故郷や家族から遠く離れたキャンプでの結婚が彼女たちに強い精神的苦痛を引き起こしているのです」と付け加えた。
サーラは以下のことにも言及した。「花嫁さんは花嫁衣装を着ますが、結婚の祝いはそれだけです。このような仮設住居や小さなテントではどんなお祝いもありません。ここのシリア人にとって喜びは不在で、精神状態は破滅的です。誰もが愛しい人を亡くしているので、結婚の祝いの省略はお互いの感情を思いやってのことなのです」
彼女は続けて「他のシリア人難民の同胞姉妹たちの例としての私でさえ、激しい悲哀と身に起こった事からくる苦痛のせいで19歳なのに精神的には60歳の女性と同じです。」と述べた。さらに「でもそれにしても、私はこのキャンプにいることができてとても幸せです。ここを出たら、私は避難民だという取り扱いを受ける事になりますが、ここでは皆おしなべて被災者なわけですから」と語った。
(後略)
本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。
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( 翻訳者:岸本聖美 )
( 記事ID:31603 )