■シリア政権、国際舞台の十字路
【アブドゥッラー・イスカンダル】
シリア政権は、自身が最悪の事態を乗りこえたとみなしている。そして同政権は、政治的にも軍事的にも、以前の状態を取り戻すべく動き始めた。同政権が乗りこえた最悪の事態とは、つまるところ内戦のある段階において、西側、特に米国と対立する中で、ロシア・中国を軸とする布陣に完全に連なるよう強いられそうになったことである。そしてそれは、政権が「ヒズブッラー」の軍事力とイランの多方面の専門技能に助力を求めることを強いられ、少なくとも前者が政権側について戦闘に直接介入していた時期でもあった。
その段階での事実関係は、故ハーフィズ・アサド前大統領の打ち立てた戦略からの大きな脱却を示していた。その戦略とは、自身の政権を国際的・地域的に不可欠な存在とすることを狙ったものだった。ハーフィズ前大統領は、自身の政権を、冷戦期そして冷戦後における、東西間の十字路であり収束の場にしたのだ。そして同様に自身の政権を地域的な十字路に仕立て上げた。その地域とは、特に、一方にサウジアラビアとエジプト、他方にホメイニ師のイランを控えるものだった。
バッシャール・アサド大統領の政権がイランへと完全に傾き、シリアの国際外交をロシア政府に委ねたことでこの均衡が機能不全に陥ったとき、同政権はシリアを均衡点にもう一度置き直すために動かねばならない急迫性に脅かされた。また同政権は、西側からの軍事介入の可能性に直面することとなった。同政権の一般市民に対する化学兵器の使用により、その可能性が強められたのだ。
シリア政権が乗りこえたもう一つの最悪の事態とは、つまり、あらゆる国際法および人道的・倫理的配慮に明らかにかつ堂々と背いて行われた、民間人に対する大量破壊兵器使用についての清算をもはや求められなくなったということだ。
また、露・米間で、シリアの化学兵器の破棄に関する合意がなされたことにより、これら両陣営も各々の目的と利益を実現したことになり、またシリア政権が再び両陣営間の戦略的十字路として返り咲くことに一役を買う事になった。そしてシリア政権は、(露・米間の)合意の実施に協力したことから称賛と賛辞の対象となった。同政権は、いかなる政治的解決においても主要アクターとなったのだ。そして同様に「ジュネーヴ2」会議への行程表もそのことを示している。
(後略)
本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る
( 翻訳者:辰巳新 )
( 記事ID:31695 )