フランスによるジュネーブ核協議での妨害行為について(下)
2013年11月11日付 Mardomsalari 紙

 アラーク重水炉の主な任務は、各種のガンをはじめとする特別な病気を治療するためのラジオ・アイソトープを製造することである。この原子炉は重水を使って生産活動を行う予定で、ウラン濃縮過程を必要としない。そのため、西洋諸国はこれまでつねに、イランがこの施設を使って原爆用のプルトニウムを製造する可能性があるとして、〔この施設を反イランの〕宣伝に使ってきた。

※訳注:重水炉は減速材(原子核に当てる中性子のスピードを抑える物質)に重水(中性子を1つ含んだ水素を成分とする水)を使うタイプの原子炉で、ウラン238が成分の99%以上を占める非濃縮ウランをそのまま燃料として用いることができる(一般的な発電用原子炉は減速材に軽水(普通の水)を使う軽水炉で、発電の際には核分裂性のウラン235が4%程度に存在するウラン(低濃縮ウラン)を燃料とする必要がある)。プルトニウムはウラン238に中性子を当てることで人工的に作られ、核爆弾に用いられるプルトニウム239は重水炉で効率的に製造することができる。

 アラーク原子炉がIAEAの監視下に置かれるのならば、何を心配しなければならないというのだろうか。特に、イランの新提案では、西洋がイラン国内でのウラン濃縮の権利を正式に認めるならば、IAEAの監視も極めて高いレベルへと引き上げられるということになっており、その場合、実質的に懸念すべきことなどどこにもないのである。ネタニヤフの要求に従って、イランが核エネルギー生産技術へのアクセスを全くもてないようにする、というのであれば、話は別だが。核弾頭を200発も有しているような国がこうした要求をすることは全く道理に合わないものであり、アメリカ国務長官もこれには絶句したほどだ。

 興味深いのは、あらゆる国際法に反して西暦1950年代に軍事的核技術の移植でイスラエルを支援したフランスの外相ファビウスが、今や核不拡散条約(NPT)を受け入れようともしない国の利益の擁護者となっていることだ。

 ファビウス氏が述べた第二の点、つまりイランは20%にまで濃縮度を上げたウランの現在の保有量に手を付けようとしていないという主張についても、興味深いことが指摘可能だ。すなわち、2013年8月27日に公表されたIAEA事務局長の天野氏による最新の報告書では、イランで製造された327キログラム〔※ママ。正確には372.5キログラム〕の濃縮度20%のウランのうち約半分が、燃料プレート化されていることが明言されているのである。これはすなわち、核爆弾を製造する意図などまったくないということ〔を証明する〕ための信頼醸成プロセスを、イランが正確に遵守しているということを意味している。

 というのも、濃縮されたウランが燃料プレート状態になると、イランの現在の技術では、もはや核爆弾製造へと後戻りすることは不可能だからである。それゆえ、ファビウス氏の主張は、協議の前向きなプロセスを破壊せんとするイスラエルの口実探しを糊塗するために、真実の半分を述べたものに過ぎないのである。

※訳注:ウランを濃縮する際、気化した六フッ化ウランが用いられる。六フッ化ウランを濃縮し、目的の濃縮度に達したところで、固形の八酸化三ウランに転換する。こうしてできたのが「燃料プレート」で、一度燃料プレートになったものを、再び気化して核爆弾用に濃縮を続けることは、現在の技術では不可能だ、というのが、ここの議論の意味だと思われる。なお報告書によると、気化状態の濃縮度20%の六フッ化ウランは、イラン国内に185.8キログラム残っているとの由。

 3段階に分けて実行されるイランの正確かつ包括的な提案に鑑みるならば、基本的に過去10年間のゲームを継続させるだけの口実は、もはや西洋の手には残っていない。

 イランのイニシアティブによって、5ヵ国の外相がジュネーブに集まった。もしイスラエル=フランスの動きがなかったならば、この協議はこの段階で、前向きな結論に達していただろう。とはいえ、すべてが包括的かつ完全な合意達成に向けて準備万端となっていることに、疑いを差し挟む余地はない。現在の状況は、イランとアメリカという主要なプレーヤーの見方が、イランの平和的核計画をめぐって互いに接近していることを示している。イスラエルとフランスによる妨害工作は、この流れを鈍化ないし遅延させる可能性があるが、しかしそれが何らかの成果を上げるようなことは間違いなくないだろう。

 三日間にわたる協議が示したのは、戦争を防ぐための外交努力の道は閉ざされておらず、問題克服のために集合知を頼りとすることはいまだ可能だということである。信頼醸成とは相対的で双方向的なものである。それは徐々に手に入れられるものである。重要なのは、どこの誰が破壊的な役割を担っていて、核兵器なき中東の構築を望んでいないのか、そしてウィン=ウィンのゲームを乱し、強欲と高圧のドラムを鳴らしているのかを、皆が理解することである。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:白糸台国際問題研究所 )
( 記事ID:31987 )