アブドゥッラー・ギュル大統領が、インターネット規制法を承認したと伝えられた。
ギュル大統領は、トルコ弁護士協会のメティン・フェイズィオール会長が大統領に手紙で議会に差し戻すよう求め、また諸政党も拒否を呼び掛けていたインターネットに検閲を設ける法律を、政府が(ギュル大統領)自身の警告を考慮して対策を講じた後、今晩(18日)承認した。ギュル大統領は、ハンガリー訪問からの帰国後アンカラに入りすぐにこの法案を承認したことで関心を集めている。夜間に法律を承認したことは、トルコ政府の歴史に特筆すべき珍しいケースである。
世論に大きな論争をもたらした法案は2月5日水曜日の夜、国会を通過した。規制法は、議会の専門家らにより技術的な観点から精査されたあと2月10日、議長府によって大統領官邸へ送られた。ギュル大統領は、15日間の法律審査期間中であった。ギュル大統領は、法案が国会で承認されたあとの今月6日木曜日、リュトフィ・エルヴァン交通海事通信相と臨時の面会を行っていた。トルコ弁護士協会のフェイズィオール会長や国会議員らは、ギュル大統領に対し法律を拒否するよう呼び掛けを続けていた。
ギュル大統領は13日、アフガニスタンのハーミド・カルザイ大統領、パキスタンのナワーズ・シャリーフ首相と大統領官邸で共同記者会見を行い、記者のインターネットに関する法規制の質問について、「質問された法律について取り組んでいます。一つか二つ問題があり、それに対処しています」と答えていた。
ギュル大統領は、今日の夕方ハンガリー訪問から戻った。しかし大統領帰国に先立ち政府は、ギュル大統領の警告を考慮して行動を起こした。政府は、大統領官邸で審査が続けられ今日の承認が待たれていたインターネット規制法の行方が明らかにならないうちに、法律に驚くべき変更を加えるための手を打った。リュトフィ・エルヴァン交通海事通信相もまた、このため今日国会で野党への「説明回り」に繰り出した。
承認を待つのみとなっていたインターネット規制法について、ギュル大統領が「問題」があると話して懸念を表明したあと、政府は今日、まだ施行前の法律の改正に向けて早くも行動を開始した。エルヴァン交通海事通信相は、トルコ大国民議会(TBMM)計画予算委員会のレジャイ・ベルベル委員長を引き連れ、国会で野党各党へ説明回りを行った。話し合いで野党が最も強く批判したのは、「テレコミュニケーション通信庁(TİB)長官に与えられる『アクセス制限権』に関する新しい改正」であった。法律によると、TİB長官は、緊急を要する場合4時間のうちにアクセス制限権を行使しホームページを閉鎖することが出来るようになる。また、TİBには直接制限権が与えられる。
■政府は大統領の意見を考慮
説明回りのあと記者の質問に答えたエルヴァン交通海事通信相は、法律についてギュル大統領が「一つ二つの問題に対して再調査が行われるかもしれない」と話していたことを明らかにし、「平和民主党(BDP)、民族主義者行動党(MHP)、共和人民党(CHP)の副党首らと面会し、私の考えを説明しました」と述べた。政府の提案を 「先進的取り組み」と評したエルヴァン大臣は、野党との面会で大まかには前向きな意見が得られたと語り、「明日(18日)提案を総会に提出する」と話した。提案として提出される内容が改正案に組み込まれる可能性もあるとし、「礼儀として説得回りに出ました。ひとつの議題について全ての考えを取り入れるかどうかは問題ではありません、私の意見は前向きに伝わりました」と話した。
新しく行われる法改正に関して、エルヴァン交通海事通信相は、「テレコミュニケーション通信庁(TİB)長官によりとられるアクセス制限の決定が裁判所に提出されないという批判がありました。我々の提案ののひとつはこれです。TİBは、制限を行ってすぐに裁判所に申請することになります。問題はこれで解決されますね。TİB長官は、制限を実施したら24時間以内に裁判所へ申請します」と話した。
またトラフィック情報に関する規則の変更についても言及したエルヴァン大臣は「トラフィック情報が裁判所の決定がなくてもTİB長官に提供される可能性があるとする批判もありました。しかしTİB長官は裁判所の決定がなければトラフィック情報にアクセスできません。トラフィック情報にも制限を取り入れます。今後は制限が議論の中心になるでしょう」と語った。
■ジェット並の高速承認
エルヴァン大臣の会見のあと、ブダペストから帰国したギュル大統領はジェットの速さで法律を承認した。大統領府が夕方行った会見では、次のことに触れられた。
「第6581号『家族社会政策省の組織と業務に関する法規定における附則、及びその他の法や法規定における附則の改正に関する法』は、大統領閣下により憲法第89条第1項及び第104条第2項a号に基づき公布のため首相府へ送られた。」
またギュル大統領は国民が敏感になっていることを受けて、法律の承認を、ツイッターを通じて共有し、以下のように投稿した。
■帰国するや否や承認したのは…
「ここ数日話題のインターネット法案についてたくさんのメッセージが届いています。メッセージには特に2つの問題について反対が起きています。この2点に関する不満は私もよくわかっています。だから私は政府と話し合いこの2点について考えを共有し、問題が解消されるよう求めてきました。みなさんの懸念は、明日の改正法案で消え去るでしょう。この改正の早期実現のため、ハンガリーから帰国するやいなやの承認に踏み切ったのです。政府や政党の方々には、理解を示してくれて感謝しています。みなさんがよい一日を過ごせますよう。」
■15日間の審査期間を待たずして
ギュル大統領は、憲法が規定する国会から送ってきた法律を承認するか拒否するかを審査するための15日間を過ごしていた。しかし、社会から違う視点で注目されていた話題のインターネット法をさらに委員会レベルで話し合わせるため、官邸の法律機関に調査を行わせた。またハンガリー訪問以前に、大統領府はインターネット法に関する基本的見解を大体において明らかにしていた。政府筋の情報によると、ギュル大統領は、新法で懸念される問題についてエルヴァン交通海事通信相、エルドアン首相に進言をしていたという。そしてハンガリーから帰国後、ギュル大統領は、政府が問題解消に向け対策を講じることを踏まえて新法を承認した。また、裁判官検察官高等委員会(HSYK)改革法が今日大統領官邸へ送られた。ギュル大統領は、新たに承認待ちとなったHSYKに関する改革法が提出された今日夕方にインターネット規制法を承認したことになる。
本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。
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( 翻訳者:池永大駿 )
( 記事ID:33011 )