コラム:疲弊続くシリア、米国の中東政策と米露関係の動向
2014年05月07日付 al-Hayat 紙
■疲弊続くシリア…背後ではレバノン大統領選挙が影を落とす
【サーム・ムンサー】
中東地域の問題を見守るまたは追究する者の間では、これらの問題や中東における紛争に対する米国の外交政策の変化について、多くの疑問が飛び交っている。とりわけ、3年にわたって続くシリアの戦争に対する米国の政策の変化が注目されている。ここ数カ月の間に(地域・世界)情勢の変化がいくつか見られたが、中でも最も重要な出来事はヨーロッパのウクライナ政変と、これが米国政府とロシア政府の関係に及ぼす影響だろう。また、シリアのアサド大統領が大統領選挙実施の意思を表明したことも、同じく重要な出来事だ。この選挙により、アサド大統領は今後新たに7年間の任期を迎えることが可能になる。さらに、パレスチナ国民政府(自治政府)と「ハマース」の間で和解合意が突如成立したことにより、イスラエル・パレスチナ和平プロセスが停止したことも特筆すべき出来事の一つだ。無論、こうした事態の展開が、米国政府の政策の変化の予測または打診を促がしていることも否めない。
しかし、米国政府が公に行っていること、そして中東情勢・問題・紛争に対して現地で実施していることを綿密かつ正確に見てみると、われわれは米国の政策が何ら変わっていないという結論に行き着く。
この結論を得るに至るには多くの理由が存在するが、その筆頭としてイランとの核交渉が挙げられる。核交渉が終わる、または少なくとも交渉の見通しがつくまでは、米国政府が中東地域における自身の政策を見直すことはないだろう。すなわち、6月の終わりが来るまで米国の中東政策は変わらない。また、たとえ交渉が合意または関係正常化に到達できなかった場合でも、米国政府がこの交渉を中断するとは考えにくい。おそらくその場合、米国は交渉期間をさらに6カ月延長させるだろう。延長は一回か、それと二回、あるいはもっとか、それは分からない。
二つ目の理由は、シリア情勢に直接関わるものである。すなわち、米国政府は、シリアの戦争に対する自国の政策を見直さねばならなくなるような重大な変化は、これまで生じていないと見なしているというものだ。
シリアで行われようとしている大統領選挙について「茶番」とコメントしたにもかかわらず、これでもまだ米国の政府高官が新たな立場・政策をとるに至るには不十分だったと言える。いずれにせよ、米国政府はシリア危機に対して真剣に向き合ってはいないのだ。一方、米国政府はアサド政権が達成する勝利について、メディアが喧伝(けんでん)する内容は妄想の入り口に過ぎないと断じている。また米国政府は、シリアの現状について長期間続く戦争のポーズあるいは「休止」のようなものと認識しており、このことによって、これまでシリアで起きたそしてこれからも起こるであろう虐殺、流血、悲劇、破壊の後に、バッシャール・アサド大統領が再び大統領の座に就くことが許されることはないと理解している。
三つ目の理由はウクライナの政変だ。米露関係を見守るまたは懸念する人々の中には、米国政府とロシア政府の関係に及ぶ影響を判断するには、時期尚早と見る人もいる。その理由として、第一に、現在ウクライナで起きている出来事は明確な終わりを迎えておらず、またウクライナの危機、およびこれを受けたロシアの立場や行動、反応ともに依然不明確または未確定であることが指摘される。第二に、米国政府はウクライナの危機の結果を受けてロシア政府との関係をどうするかについて、まだ十分に判断し切れていないことが挙げられる。すなわち、ロシアが、個別にはシリア、一般的にはエジプトからイランおよびその他の諸国を含む中東地域において(主要な)役割を担っている中、米国はロシアとの関係を簡単には結論できないということだ。米露関係の専門家からは、米国政府は自国の政策をどう変えるにしても、現状を深く分析するための時間をさらに必要としていると指摘されている。
(後略)
本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。
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( 翻訳者:辰巳新 )
( 記事ID:33805 )