■イラク:カルバラーで無料のワールドカップ観戦
【カルバラー:フルード・アーミリー】
街角の巨大スクリーンを設置し、ワールドカップの試合を無料で観戦できるように受信費用を負担するという決定を市長が行うことを、カルバラーの若者たちは予想していなかった。
若者は応援するチームのゲームを観戦するために街路に集まり歩道に座っているが、その光景はイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ・ISIS)と戦うための ボランティアセンターに集まる若者の光景に類似している。しかし、唯一の違いは、ボランティアセンターは日中彼らを迎えるのに対し、ワールドカップのスクリーンは昼も夜も同様に彼らを歓迎するということだ。
ハサン・ジャースィム・ムハンマドさんは、毎日退勤後に友人とワールドカップ観戦することが習慣になった。彼は次のように語る。「私と友人にちょうどいい場所を確保するために早めに仕事を終えて、試合が始まる30分前には歩道に陣取ります。遅れてしまうと、他の遅れてきた人と一緒に立ち見をすることになり、 絶対に座れないのです。」
ハサンさんは若者のグループと、受信費用を集めて友人のうちの1人の家に集まって毎日ワールドカップを観戦することを決めていた。しかし、この巨大ディスプレイが街の中に設置されたことで、彼や友人はその必要がなくなった。
この保守的な街の若者は、試合開始よりも早い時間に巨大スクリーンの前に集まる。特に、その場所に来るのにバイクや自転車を使って市外からやってくる人はそうである。その理由として、自動車を使うと移動がさらに難しくなるからだ。また、自転車を使うことで、燃料代を節約できる。このところの治安の危機により同市やイラクの他地域では、燃料価格が上昇しているのだ。
ワールドカップと巨大スクリーンがあっても、イラクの若者が「ダーイシュ」やそのニュースを忘れることはない。彼らは1日のほとんどを部族の長老たちとともにボランティアセンターで過ごし、衛星放送のニュースをチェックしている。しかし、試合の時間はダーイシュとそのニュースを忘れてニュースの画面を閉じ、ワールドカップのスクリーンへと向かう。
ハミード・サージド・アリーさんは、この町の若者は自身の関心を「ダーイシュ」とワールドカップに振り分けていて、彼らは「ダーイシュ」がワールドカップの試合を忘れさせることもなければ、ワールドカップがボランティアセンターに集まることに嫌気をおぼえさせる事もない、と述べる。
彼は続けて次のように述べる。「少なくとも、ダーイシュが支配している地域の若者よりは私たちは幸運です。モースル、ティクリート、アンバールで過激派組織は若者がワールドカップを観戦することを禁じ、カフェや自宅で試合を見ているところを見つかった若者の一部に対してむち打ち刑を行いました。」
(後略)
本記事は
Asahi 中東マガジンでも紹介されています。
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( 翻訳者:田村颯 )
( 記事ID:34476 )