コラム:米国の「対テロ戦争」における立場の根底にあるもの(中)
2014年11月07日付 al-Hayat 紙

■米国の「対テロ戦争」における立場の根底にあるもの

【ワリード・マフムード・アブドゥンナースィル】

ところで、米政権はここ数年、自身がテロ組織とみなした組織のリストを作成し、米国務省が公表しているが、毎年その見直し・更新が行われている。このリストは国際組織に関する他のリストの作成に、特に欧州連合(EU)加盟国やそれ以外の欧州諸国によるテロ組織リストの作成に影響を与えている。

本論文において既に述べたように、私の世代は、合衆国が欧州、極東、その他世界諸地域の左翼・民族主義組織をテロ組織とするのを見てきた。日本の「連合赤軍」、イタリアの「赤い旅団」、ドイツの「バーダー・マインホフ」、フィリピンの「モロ民族解放運動」などである。一方ラテンアメリカに目を向ければ、そこは米国の国家安全保障上の「裏庭」とみなされており、われわれは米国がラテンアメリカに独自の基準を持ち込んでいるのを指摘することができる。つまり、歴代の米政権は、各国における現状を変えるために武力闘争に訴えているとの理由で左翼組織をテロ組織リストに登録し、それらを不正なものとみなしてきた。一方で米国は、同じく武力行為に訴え、市民の殺りくを行ってきた極右組織をテロ組織リストに加えなかった。この矛盾する事態は、1970-80年代のエルサルバドルを典型にラテンアメリカでしばしば起こっており、枚挙に暇がない。この矛盾した事態に対する唯一の合理的な説明は、合衆国は自国の国益を重視し、米国の国益に適うかどうかを基準にして諸組織がテロ組織か否かを決めており、いかなるイデオロギーや政治的思想もその位置づけには無関係だということだ。しかし、一般的に言えることは、過去においても現在においても、たいていの左翼組織、民族主義組織、宗教組織は米国のテロ組織リストに登録されるというのが大勢であり、右翼組織がそこから除外されているのとは対照的である。しかしこのことは、合衆国がラテンアメリカにおいて米企業・団体を含む自国の経済的・戦略的利害に照らして決定的に重要な役割を果たしているのを考えれば当然のことである。

中東、特にアラブ地域についていえば、1960-70年代に多数のパレスチナのレジスタンス組織・武装闘争組織が合衆国により「テロ組織」に分類された。この措置に関する米政府の公式説明では、これらの組織はイスラエルの占領へのレジスタンスの一形態であるとした上で、民間機のハイジャックで民間人を標的とする作戦を行った組織であるとした。しかも合衆国は、パレスチナ民族解放機構(PLO)――世界の大半の国と国連までもがパレスチナ人民の唯一正当な代表機関であると承認した――を敢えてテロ組織リストに加えた。その状態は、1988年にジュネーヴの国連本部においてパレスチナ問題に関する国連特別総会が開催された際に、PLOの名をテロ組織リストから削除するとのパレスチナ・米国合意にいたるまで続いた。

これとは対照的に、1950-70年代に合衆国はアラブ地域とイスラーム世界全体において、いわゆる「政治的イスラーム」とされる諸組織と共通の目的を実現するための政治同盟に与(くみ)した。「政治的イスラーム」組織の中には、確実に暴力を振るい、民間人を標的とした武力作戦を実行するものも含まれていたが、米国はそれらの組織をテロ組織リストに登録しなかった。

(下に続く)



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:前田悠作 )
( 記事ID:35817 )